ベントレー・コンチネンタルGT S(4WD/8AT)
通好みの「S」 2026.10.31 試乗記 ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」にハイパフォーマンスバージョンの「S」が登場。すでにトップパフォーマンスモデルの「スピード」が存在するなかで、果たしてSはどんなポジションを担うのだろうか。試乗を通じて検証した。2つのパフォーマンスハイブリッド
2024年6月にデビューした最高性能版の「スピード」(国内デリバリー開始は2025年第1四半期)が皮切りとなった現行コンチネンタルGTだが、2026年1月に「S」が登場したことで、先代のラインナップから予想されていた“あってしかるべき”バリエーションがひとまず出そろったことになる。具体的にいえば、スピードとSに加えて、「マリナー」と「アズール」、そして素の「コンチネンタルGT」という布陣である。
先代はスピードが6リッターW12、マリナーがW12と4リッターV8、それ以外がV8というエンジン(すべてツインターボ付き)を積んでいたが、W12エンジンは先代をもって生産終了した。で、現行コンチネンタルGTは、全車が4リッターV8ツインターボ+8段DCTベースのプラグインハイブリッドとなる。
そのパワートレインの電動部分はすべて共通で、最高出力190PS、最大トルク450N・mのモーターと総電力量25.9kWhのリチウムイオン電池で構成される。いっぽう、カナメとなるV8ツインターボエンジンには2種類のチューンがある。519PS、770N・mのエンジンでシステム最高出力680PS、最大トルク930N・mとしたタイプを「ハイパフォーマンスハイブリッド」、600PS、800N・mのエンジンで、782PS、1000N・mを豪語する高出力型を「ウルトラパフォーマンスハイブリッド」と呼ぶ。
単純にいうと、前者が先代のV8、後者がW12に相当する位置づけである。実際、先代でW12を積んでいたスピードとマリナーは、現行ではウルトラ~、先代でV8を積んでいたそれ以外のモデルにはハイ~の各ハイブリッドが積まれる。最初に「先代にあったバリエーションはすべて出そろった」とは書いたが、正確には先代の「マリナーV8」に相当するモデルだけは、今のところ用意がない。
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2つのアクティブシャシー
今回試乗したのは、そんな現行コンチネンタルGTのラインナップで、ひとまず最新のピースとなるコンチネンタルGT Sだ。先代のSはベースとなるGTに、大径ホイールとスポーツエキゾースト、そしてスポーツテイストを強めた内外装をあしらったモデルだった。
ところで、パワートレインと同様に、現行コンチネンタルGTにはシャシーにも2種類のチューンがある。
2チャンバーエアスプリング、縮み側と伸び側の減衰を独立制御するデュアルバルブダンパー、48Vアクティブスタビライザー、リアステアリング、四輪駆動、リア電子制御LSD……といったシャシー基本構成は、やはり全車共通なのだが、標準仕様が「アクティブシャシー」で、そこにブレーキ制御トルクベクタリングを加えたのが「アクティブパフォーマンスシャシー」である。後者のシャシーはこれまで、スピードとマリナーという高出力モデルにのみ与えられていた。
新しいSは、パワートレインは素のGTやアズールと同じパワー控えめのハイパフォーマンスハイブリッドでありながら、上級のアクティブパフォーマンスシャシーを組み合わせている。これは今あるコンチネンタルGTでは唯一のコンビネーションで、大昔の某トヨタ車のキャッチコピーを借りれば、いわゆる“アシのいいヤツ”的なキャラクターである。
あるいは、コンチネンタルGTと主要ハードウエアの多くを共有する「パナメーラ」を手がけるポルシェでいうなら、「GTS」によく似たコンセプトと表現することもできる。ポルシェのGTSとコンチネンタルGT S……偶然とはいえ、名前もちょっと似ている。
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振動なしの雄たけび
先代のコンチネンタルGT Sがどちらかというとコスメチューン的な要素が強かったのに対して、新しいGT Sは「標準のパワートレインに上級シャシー」という、いかにも“モノがわかった”風を装うことができる、好事家向きの仕立てとなったのが特徴だ。
撮影後に試乗をスタートした時点では、メーター上の電池残量はゼロだったが、実際はある程度の“隠し電力”を維持する仕組みのようで、発進は基本的にEV走行である。翌日にしっかりと電気を貯めて試したところ、基本的にエンジンが常時稼働状態となる「スポーツ」モード以外では、電池残量に余裕があれば基本的にEVとして走る。資料によれば、140km/hまでのEV走行が可能という。
とはいえ、その時点では電池残量が最低限だったので、走りだすと間もなく4リッターV8ツインターボが始動した……のだが、その瞬間に“ガオンッ!”と高らかに吠えたのには、面食らうとともに思わず笑ってしまった。それはまさに“眠れる獅子のお目覚め”といった風情であるいっぽう、物理的なショックはほとんどないから、意図的な演出なのは明白だ。しかも、どのドライブモードを選んでいても、キャビン内に響きわたる雄たけびだけは変わらない。それでいて、ジェントルな運転に戻ると、キャビンはEVの静寂さに戻る。まさにジキルとハイドだ。
動力性能はコンチネンタルGTとしては控えめといっても、0-100km/h加速で3.5秒、最高速は306km/hと、掛け値なしにスーパーカー級である。同じハイパフォーマンスハイブリッドのGTやGTアズールよりも速く、絶対的には凄まじいとしかいいようがないパワーだ。しかも、その最大930N・mの剛腕力が、右足指のホンのささいな力加減にもピタリと追従するところが、前記の二面性とともに、最新ベントレーハイブリッドの真骨頂だと思う。
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ベントレーならではの美意識
素のGTやアズールの経験があれば、GT Sの身のこなしが少し引き締まっているとわかる。しかし、このクルマに単独で乗るかぎり、その乗り心地は快適至極としかいいようがない。
柔らかい「コンフォート」モードだと路面の凹凸に応じて上下するが、その後はしっとりと収束して、オツリめいた挙動をまるで出さないのはデュアルバルブダンパーの効能と思われる。逆にスポーツでは動きが明らかにタイトで俊敏になるのに、路面のタッチはあくまでまろやか。その走りはまさに“2.5tのピュアスポーツカー”といったところで、絶対的に重いのは否定できないが、49:51という前後重量配分もあって曲がりは自由自在。それにしても、どう走っても明確なシャシーファスター感が前面に出るのは、上級シャシーに控えめパワーのGT Sだからか。
ただ、新しいコンチネンタルGTでもっとも感銘を受けるのは、ノーマルにあたる「ベントレー」モードだ。同モードは、低速ではやんごとないソフトな肌ざわりを感じさせつつ、あらゆる路面の凹凸やうねりとフワピタと一発で収束させて、高速ではピタリとフラットに吸いつく。ベントレーモードの守備範囲が飛躍的に広がったことが、最新のコンチネンタルGTのフィジカル能力の高さを物語る。
……と、そのスペックから予想するとおり、新しいコンチネンタルGT Sはじつに通好みの乗り味を披露した。それとともに、内外装ともブルー系で統一するコーディネートのセンスの良さには舌を巻くしかないし、調度類の仕上げもいまだ最高峰である。
それにしても、センターディスプレイ内の膨大な機能を、これまた膨大な数が残されたハードスイッチで操作するインターフェイス(タッチ操作も可能だけれど)は、2024年デビューの新型車とは思えない。しかし、いつなんどきも豪快なV8といい、時代にキャッチアップしながら、クラシカルな肌ざわりを頑固に残すのがベントレーの美意識なのだろう。
(文=佐野弘宗/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=ベントレーモーターズジャパン)
テスト車のデータ
ベントレー・コンチネンタルGT S
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4895×1966×1397mm
ホイールベース:2851mm
車重:2460kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:519PS(382kW)/6250rpm
エンジン最大トルク:770N・m(78.5kgf・m)/2300-4500rpm
モーター最高出力:190PS(140kW)
モーター最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)
システム最高出力:680PS(500kW)
システム最大トルク:930N・m(94.8kgf・m)
タイヤ:(前)275/35ZR22 104Y XL/(後)315/30ZR22 107Y XL(ピレリPゼロ)
燃費:10.3リッター/100km(約9.7km/リッター、WLTPモード)
価格:3538万円/テスト車=4538万8901円
オプション装備:アニメーテッドウエルカムランプ(18万7880円)/フロントシートコンフォートスペシフィケーション(63万3570円)/ジュエルフューエル&オイルフィラーキャップ(5万0730円)/チタニウムスポーツエキゾースト(184万1950円)/スポーツペダル(9万3700円)/ディープパイルオーバーマット<フロント>(9万0600円)/Bang & Olufsenフォーベントレー(102万1870円)/ベントレーローテーションディスプレイ(96万0540円)/エクステンデッドレンジ<ソリッド&メタリック>(123万1570円)/コントラストステッチ(38万8650円)/コントラストバインディングカーペットオーバーマット<マッチトゥコントラストステッチ>(3万6470円)/カラースペシフィケーション(40万4730円)/22インチ10スウェプトスポークホイール<ブラックペインテッド&ブライトマシンド>(43万3400円)/マリナーカラースペシフィケーション(46万0490円)/ダーククロムインテリアスペシフィケーション(36万8820円)/レザースペシフィケーション<ウィズフルーテッドシート>(40万4640円)/ムードライティングスペシフィケーション(30万4510円)/シングルフィニッシュ<ダークティントエンジンターンドアルミニウム>(59万8070円)/ベントレーセルフレベリングホイールバッジ(9万8530円)/マリナーオプション<ビスポークインテリアカラースプリット[ライトブルーメインハイド&インペリアルブルーセカンダリーハイド]、IPウイングス[インクルーディングニーロール]&センターコンソールアームレストロワ&バックカバーアクセントinライトブルー、コントラストステッチトゥスタンダードエリアinライトブルー、コントラストステッチトゥSキルテッドエリアinライトブルー、コントラストエンブロイダードSエンブレムinライトブルー>(39万8181円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:3561km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:1166.1km
使用燃料:124.9リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.4km/リッター(満タン法)/7.3km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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