スバルが欧州でEV専業に!? 「エンジン車販売撤退」の背景を探る
2026.11.09 デイリーコラムギブアップするしかない状況
スバルが欧州でエンジン車を売るのをやめるってよ!
……ドイツの自動車専門誌『Auto Motor und Sport(アウト・モーター・ウント・シュポルト)』が報じたニュースによると、スバルは“欧州において”エンジン車の販売終了を決めたのだとか。ここでいう「エンジン車」とはピュアエンジン車のみならずハイブリッド車も含む。つまり「EV以外の販売を終了する」と言い換えてもいいだろう。2027年末にエンジンが載った車両の販売を終え、以降はEVだけの展開になるという。同誌の取材に対してスバルの現地法人がそれを認めたのだとか。
これはスバルファンのみならず、日本のクルマ好きにとっても極めてショッキングなニュースだ。かつて欧州でボクサーディーゼルエンジンに6段MTを組み合わせた「フォレスター」でフランス~モナコ~イタリア~スイスと周遊しながら1500km以上をドライブした筆者としても、こみ上げてくるものがある。今回の報道が事実であれば……だが。
というわけで、いても立ってもいられなくなった筆者は日本のスバル広報部に事実関係を確認したのだが、「それは広報部として正式に発信した内容ではございません」とのこと。肯定はしないものの、残念ながら否定もしないという返答だった。
どうしてスバルはエンジン車撤退を決めた(とされる)のか。それはズバリ、規制対応への難しさだと筆者は考えている。欧州は脱二酸化炭素にはじまり排ガス関係や走行音など、車両を取り巻く規制がますます強化され、それをクリアするには手間もコストもかかる。その対策は販売価格に反映されて競争力をそがれるいっぽうで、政策としてはEV優遇が進み、いつまでエンジン車(ハイブリッド車を含む)を今と同じ状況で売り続けられるのかが未知数だ。
そのうえスバルの欧州販売はシュリンクしている。1999年には5万8000台ほどあった同社の販売台数は今や約2万3000台(2025年実績)で、それはスバルのグローバル販売の3%程度にとどまっている。そのボリュームだと規制対応のためにコストをかけてクルマを改良しても、ソロバンが合わないということになるのだ。だから「EVだけでやっていく」という結論になったと考えると腑(ふ)に落ちる。完全撤退でないのは、販売網やサービス網を維持する意味もあるのだろう。
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EVシフトも“いばらの道”
スバルは欧州にて「ソルテラ」に加えて「Eアウトバック(日本名:トレイルシーカー)」、そしてコンパクトな「アンチャーテッド」と3車種のEVを展開中(いずれもトヨタとの協業)。それらはいま売っているエンジン搭載車の「インプレッサ」や「クロストレック」「フォレスター」に比べて車両価格が高く、スバル車を購入する対象となる層が今まで以上に狭まるのは避けられないだろう。そして、その隙間に中国勢の安価なEVが食い込んでくるのは火を見るより明らかだ。
2020年に差し掛かるころから政治主導で加熱したヒステリックなまでの「EV推し」というか「エンジン車下げ」と「規制強化」は、自動車メーカーを大混乱に陥れた。政治に振り回された結果として欧州メーカーはEV戦略の失敗(と中国市場での地盤沈下)を受け、多くが瀕死(ひんし)の重傷を負っているのが現状だ。
地球環境は大事である。だから環境を守るという政治家の信念は決して悪いことではない。だがしかし、政治主導による強引なEV化は確信犯的な人気取り策ではなかっただろうか。
あまりにも現状を無視したがゆえに市場は急激なEV化を実現できず、多くの自動車メーカーは投資の失敗とコストアップに苦しみ、庶民は車両価格上昇に悩まされているのが現状だ。欧州ではそこへ安い価格設定で中国の自動車が入り込み、シェアを奪われているという流れになっている。
果たして、欧州のEV推しと規制強化で誰が得をして、誰が幸せになったのか。スバルによるエンジン車欧州撤退スクープ報道に筆者はそんなことを思った。
スバルといえばかつてWRC(世界ラリー選手権)を席巻し、多くのファンを生み出した。リーマンショックを背景に2008年をもって撤退したのだが、筆者はいつの日かブルーに塗られたスバルのマシンが再び大活躍することをひそかに楽しみにしていた一人だ。しかし、欧州でエンジン車を扱わないとなると、その夢が再びかなうことはないのかもしれない、というのが残念でならない。……いや、WRCがEVで競うモータースポーツになるのならワンチャンあるか?
(文=工藤貴宏/写真=スバル/編集=関 顕也)
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工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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