ポルシェ・カイエン(4WD/8AT)/カイエンディーゼル(4WD/8AT)【海外試乗記】
主力、間違いなし 2010.07.06 試乗記 ポルシェ・カイエン(4WD/8AT)/カイエンディーゼル(4WD/8AT)2代目に生まれ変わった「ポルシェ・カイエン」に、ディーゼルモデルとV6モデルが加わった。本国ドイツでのテストドライブで、その性能をチェックした。
北米でも売れ筋
ドイツ・ケルンで行われた国際試乗会におけるプレゼンテーションの場で明らかにされたところによれば、「ポルシェ・カイエン」の2009/2010年期の販売状況を見ると、V型6気筒ガソリンモデルが北米では58%、アジア地区では68%にも達するという。つまりV型6気筒エンジンを積む“素”のカイエンは、紛れもなく販売の主力なのだ。V型8気筒信仰が強いと思われた北米ですら半数以上を占めているのも、今という時代を考えれば納得。もちろん日本でも、これが一番の売れ筋である。
ドル箱カイエンの、そのまた主力という重要な存在のこのV6モデル。結論から言えば進化の幅は著しい。
そのエンジンは、従来通りフォルクスワーゲンの「VR6」を起源とする、狭角ブロックの3.6リッター。しかしながらエンジン内部のフリクション低減やマネージメントシステムの設定見直しなどの改良を受けて、最高出力は10ps増の300ps、最大トルクは15kgm増の40.8kgmに達している。
従来の6段ATに代えて、新たに8段ATが採用されたのもトピックだ。デュアルクラッチギアボックスのPDKではなく、ティプトロニックSと呼ばれるトルコンATを使っているのは、けん引や悪路走行などの高負荷にはATの方が適しているからだという。オートスタート/ストップ、いわゆるアイドリングストップシステムが組み合わされているのも注目だ。これらの効果もあって、欧州NEDCモードで9.9リッター/100km(=10.0km/リッター)と、燃費は先代より実に20%も向上している。ちなみに6段MTも、これまでどおり選択可能だが、こちらにはオートスタート/ストップは備わらない。
軽量化+8段AT採用の効果は?
先代と同じくカイエンのボディシェルの形をしたキーユニットをシリンダーに差し込みひねると、想像したよりずっと野太いサウンドとともにエンジンが目覚める。車外で聞くと、とりわけ迫力があるこのサウンドは、これまでとは違った走りの世界へ誘ってくれそうな期待をあおる。
実際、その動力性能は目を見張るものだ。エンジンの10psアップは正直体感できるほどのものではないが、加速感は明らかに先代を上回る。これはひとつには、小刻みにギアをつないでいける8段ATを採用した効果だろう。しかし何より大きいのは軽量化だ。ローレンジを持つ従来の複雑な4WDシステムに代えて、電子制御式アクティブ4WDシステムのPTM(ポルシェ・トラクション・マネージメント)を搭載したことや、ボディシェル自体の刷新などにより、車重は先代に比して約165kgも軽くなっている。大人2人分以上も減量されているのだから、加速感が違って当然。実際に0-100km/h加速は、先代の8.5秒に対して7.8秒となっている。
車重の軽さは当然、フットワークの良さにもつながっている。サイズは全方位に拡大されているにも関わらず、ステアリング操作に対する反応は俊敏で、ワインディングロードでもキレの良い走りを楽しめる。特にオプションのエアサスペンション装着車は、姿勢変化は少ないのに乗り心地は良く、走らせていて実に気持ちいい。新型の場合、やや硬さが強調される標準のコイル式サスペンションより、断然こちらをお勧めとしたい。
納得の価格
続いては、ヨーロッパでは販売の実に72%を占めるディーゼルにも試乗したが、こちらは率直に言ってさらに印象が良かった。アイドリングより少し上の回転域からすぐに発生する太いトルクは、V型6気筒ガソリンのピーク値を上回り、2000-2250rpmで最大56.1kgmにも到達。おかげでガソリンより車重が100kg以上も重いとは思えないほどの鋭いダッシュを可能にしている。低音が強調されたサウンドともども、とにかくスポーティなのだ。「ポルシェがディーゼル?」なんて疑念は、乗れば一発で吹き飛ぶだろう。7.4リッター/100km(=13.5km/リッター)という好燃費も含めて、ハイブリッドもいいが、こちらも日本に入れてほしいと思わずにはいられない。
V型6気筒エンジンを積むカイエンの新型は、想像を上回る性能、そして魅力の向上を果たしていた。今後も間違いなく、販売の主力となるはずだ。日本での価格が、このユーロ安にも関わらず先代より上がっているのは、ちょっと納得し難いところではあるが、先代との比較ではなく出費に対する満足度という観点で見れば、十分納得させられてしまいそうなのも事実である。
(文=島下泰久/写真=ポルシェ・ジャパン)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。






























