スバル・レガシィツーリングワゴン2.5GT tS(4WD/5AT)/B4 2.5GT tS(4WD/5AT)【試乗記】
これぞレガシィ 2010.07.05 試乗記 スバル・レガシィツーリングワゴン2.5GT tS(4WD/5AT)/B4 2.5GT tS(4WD/5AT)……460万7400円/444万9900円
新型「レガシィ」シリーズに、スバルのスポーツ部門STIが初めてチューニングを施した。その名も新たに誕生した「tS」の走りや、いかに?
大人なコンプリートカー
クルマが速いからか、速いクルマが好きな人が乗っているからなのか。高速道路を走っていて、明らかに「トバしているなぁ」と感じさせるのが営業用のバン、実質的に流れをリードしていることが多いように見うけられるのが「スバル・レガシィ」である。ちょっと大げさに述べれば、いまから20年ほど前、「ロングツーリング」「ワゴンのある生活」といったものを、実体をもって初めて日本人に提示したのがレガシィシリーズといえる。
そんな国民的車種の5代目に、より走りを洗練させたスペシャルモデルが登場した。スバルの「スポーツ」を担当するスバルテクニカインターナショナル社(STI)が手がける、「レガシィツーリングワゴン 2.5GT tS」と「レガシィB4 2.5GT tS」がそれ。いわばBMWの“M”に相当する、“tuned by STI”の特別なコンプリートカーである。2010年6月25日から販売が開始された。
ターボモデルをベースに、フロントアンダースポイラーと小ぶりなスポイラーが付加されたtSバージョン。新たな空力パーツは控えめながらダウンフォース増と、特にセダンのトランクスポイラーはCD値を改善する効果も見込まれるという。
「ハンドリング主体に磨き上げた」とうたわれることもあり、ボディ前後に「tS」、リアには「STI」のオーナメントと、外観の演出は最小限だ。ゆえに、専用カラーのWRブルーマイカが一番人気かと思いきや、事前の受注ではサテンホワイトが4割を占めるという。“わかっている”大人なオーナーが多いのだろう。足元は、18インチの専用ホイールに225/45の薄いポテンザを巻く。リアエンド下部には直径65mmのスポーツマフラーが2本、これまた控えめに顔をのぞかせる。
注目の新機軸
STIのクルマにつくサブネーム「tS」は、いうまでもなく「tuned by STI」の略だが、同社エンジニアによると「そうと決まっているわけではなく、匠のSTIという意味もあるんです」とのこと。同社では、今後、ハンドリングの洗練に焦点を合わせたtSと、より過激なSグループ(S、Rシリーズ)にコンプリートカーの名称を整理していくという。
まず試乗したのが、「レガシィB4 2.5GT tS」。ドアを開け、「tS」のロゴが刻まれたサイドシルプレートをまたいで運転席へ。赤いステッチがアクセントになった革とアルカンターラのコンビシートには、STIの刺しゅうロゴが入る。チタンカーボン調のパネルと合わせ、全体に黒基調の男らしい室内だ。
「匠のSTI」は、ことに足まわりにいかされ、STIがチューンしたビルシュタインダンパーとSTIのスプリングが組み合わされる。フロントのダンパーは取り付け剛性に優れる倒立式だ。
新しいSTI車で注目なのが、といってもクルマの下腹部をのぞかないと見えないが、フレキシブルドロースティフナーと呼ばれるパーツ。フロント下部を横切るクロスメンバーと車体のサイドフレームを結んだスプリング入りのバーで、モノコックボディが生来持っているひずみを、テンションをかけたバーでひっぱることで減らすのだという。「いわば、ヨーイドン!の前に姿勢を整えるようなものです」とエンジニアの人が説明してくれた。
その形状から、サスペンション取り付け部に渡されたパフォーマンスダンパーを連想させるが、微振動を吸収して乗り心地を上質にしようとするパフォーマンスダンパーとは、そもそもの意図が異なる。フレキシブルドロースティフナーは、エンジンルーム内で左右ダンパー取り付け部をつないだフレキシブルタワーバーと合わせ、ステアリング操舵(そうだ)に対するボディの応答遅れを極力なくすのを目的とする。「すっきりしたハンドリングを実現できました」と開発陣は胸を張る。スティフナーの有る無しによるハンドリングへの影響は「ハッキリわかります」と、効果を尋ねられたテストドライバー氏は即座に答えた。
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日常のスポーティ
ハンドルを握って走り始めると、乗り心地のよさに感銘を受ける。足まわりはノーマル比1割ほど強化したということだが、「tuned」という言葉から連想される硬さはない。低速では「排気音でスポーティを感じていただける」tSだが、それほどボリュームが増しているわけではない。tSと知らずに乗ったら、聞きすごして(?)しまうかもしれない。
一方、高速道路にのるとSTIモデルのよさが明確になる。なんというか不思議な乗り心地のよさで、路面の凹凸や轍(わだち)を越える際に路面の変化を感じさせながら、けれども予想よりはるかに少ない突き上げでしなやかにやりすごす。巡航時のスムーズさは特筆モノだ。
tSのリアサスペンションにはラテラルリンクにピロボールを用い、フレキシブルサポートリアがおごられた。横からの入力に強く、しかし路面への追従性は向上した。カーブでは、ステアリングを切った際の、じんわりしたボディ外側の沈み方が心地いい。
STIでは、「Sport, Always!」を新しい標語に掲げ、“運転がうまくなる”クルマを目指し、そのための大事なポイントとして「ステアリング操作への遅れのない反応」と「4輪をしっかり使ったロール」を挙げたが、その通りだと思う。試乗会の復路、ツーリングワゴン2.5GT tSを運転しながら、「ロングツーリング」「ワゴンのある生活」といったフレーズが憧れをもってよみがえってきた。tSの角のないスポーティさなら、長旅も疲れが少なさそうだ。
ツーリングワゴン、B4とも、2.5リッターターボ(285ps/6000rpm、35.7kgm/2000-5600rpm)に6MTと5ATが用意される。トランスミッションによる価格の違いはなく、ツーリングワゴンが418万7400円、B4は402万9900円。全車あわせて600台までの受注生産モデルである。
(文=細川 進(Office Henschel)/写真=D.A)
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細川 進
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