プジョーRCZ 1.6THP“200”(FF/6MT)/2.0HDi FAP“163”(FF/6MT)【海外試乗記】
理屈抜きにアガる 2010.05.12 試乗記 プジョーRCZ 1.6THP“200”(FF/6MT)/2.0HDi FAP“163”(FF/6MT)日本上陸が間近に迫るプジョーのスポーツクーペ「RCZ」。その走りを試すべく、スペインでの国際試乗会に参加した。
コンセプトカーそのまま
初公開された2007年9月のフランクフルトモーターショーでの好反響から、すぐに市販化が決定となった「プジョーRCZ」が、いよいよ登場する。見ての通り、コンセプトカーほぼそのままの姿での市場投入だ。
実際、顔つきこそ「308」との親和性を感じさせるものの、その他はすべてが別物と言っていい。力強い4輪のフェンダーと対照的なスリークなキャビンは、古典的なクーペの文法とは反対にできる限り前に寄せられており、サイドウィンドウに沿って配されたアルミニウム製のアーチと相まって、プロポーションの斬新さを強くアピールしている。ルーフからリアウィンドウに連なるダブルバブルは、過去にモチーフを求めたものではなく、2009年のルマン24時間を制した「プジョー908HDi FAP」にならった造形だという。
専用のダッシュボードが与えられた前席は着座位置が下げられているため、この低いルーフでも窮屈さは無い。一方、やはり後席は完全なる“プラス2”。ムリヤリ乗り込むと、ガニ股にした足がなおもつっかえるし、頭も上に向けられない。普段は荷物置き場かチャイルドシート固定用と思っていた方がいいだろう。しかしながら荷室は広く、後席を生かした状態でも容量は321リッター(VDA法)、後席を倒せば最大639リッター(同)を確保できる。
シャシーは基本的に308と同じ形式ではあるが、重心高はハッチバックより30mm低く、トレッドも前44mm、後63mm拡大されている。パワートレインは今回、最高出力200psを発生する1.6リッター直噴ターボユニットと、163psの2リッター直噴ディーゼルターボ、いずれも6段MTとの組み合わせを試すことができた。
走らせやすく、速い
まずステアリングを握ったのは2リッターのディーゼルモデル。意外だったのはその快適性の高さだ。235/45R18サイズの大径タイヤゆえに目地段差などを通過する際にはゴツッと来ることもあるが、それ以外は想像以上にしなやかな乗り味なのだ。ただしそのせいもあってか、ドライバーに伝わる情報が不足気味な感はある。特にステアリングは、もう少し手応えが欲しい。
2リッター“HDi”ユニットは、2000rpmから34.7kgmもの大トルクを発生するが、回転上昇もなかなか素早く、引っ張って楽しめるエンジンでもある。CO2排出量は139g/km。動力性能とエコ性能の両立ぶりは見事だ。
見た目よりマイルドな、“スポーツ”というよりは“スポーティ”なクーペなのかなというのが、RCZの第一印象。しかし、続いて200psガソリン仕様に乗ったところ、認識は完全に改められることとなった。
こちらは小径ステアリングホイールやショートシフターなどをセットにした「スポーツパック」が標準となり、乗り込んだ瞬間から気分をアゲてくれる。気分だけではなく実際に操舵(そうだ)感が向上しているのは、慣性マスの小ささのおかげだろう。
しかもアクセルペダルを踏み込むと、“コォーン”とヌケのいい音が耳に届く。スポーツパックに標準装備のサウンドシステムのおかげだ。生音の良さではなく、あくまでつくられた音ではあるが、プジョーがガソリンエンジンにここまでのコダワリを注入してくれたことは、素直にうれしい。
パワーフィールは徹底的なフラット型。実に1700rpm-4500rpmの間で28.0kgmの最大トルクを発生し続け、最高出力の200psも発生回転域は5500rpm-6800rpmというワイドレンジとなっている。どこか特定の回転域でグッと盛り上がったりはしないが、どこから踏んでもすぐに速度を乗せていけるため、とても走らせやすく、そして速い。
地面に貼り付くよう
それよりなにより、目を見張るのは運動性能だ。ステアリング操作の通りにスッと切れ込むフロントは、タイトコーナーでもまさに限界知らず。一方、中高速コーナーでは前後バランスの良さと重心の低さを感じさせる、地面に貼り付くような旋回感を味わえる。サスペンションは締め上げられている印象だが、決してガチガチではなく、4輪の荷重変化を意識しながら攻めていく知的な面白さを味わえる。
235/40R19サイズのタイヤは乗り心地を硬質なものにしているが、余計な動きが抑えられているため、決して悪くはない。S字などの切り返しでの反応もスッキリしていて個人的には、より好ましく思った。
個性的でスタイリッシュ、走らせても夢中になれる実力をもつRCZの日本導入は、実はもう間近に迫っている。日本仕様は200ps+6段MTの左ハンドル、19インチタイヤ装着と、156ps+6段ATの右ハンドル、18インチタイヤ装着となる。価格は未定。装備にもよるが、後者には400万円は切ってほしい。
昨秋の「207」シリーズのリポジショニング以来、ここ日本でもふたたび上昇気流をつかんだらしいプジョーは、今年は主力のこのセグメントでも色々とテコ入れを行ってくる模様である。初めて新しいCIに基づくライオンマークを背負うモデルとなるRCZは、その先鋒として新しいプジョーのイメージをリードする存在となるだろう。理屈抜きに、見て、そして乗って、気持ちわき立つ1台の登場である。
(文=島下泰久/写真=プジョー・シトロエン・ジャポン)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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