ホンダCR-Z α(FF/CVT)【試乗記】
二兎を追う“夢” 2010.04.12 試乗記 ホンダCR-Z α(FF/CVT)……278万4000円
ハイブリッドカーでありながらスポーツカーを称する「ホンダCR-Z」。掲げられた“二枚看板”の、真偽のほどは!? 売れ筋グレードで試した。
時代を先取り
ハイブリッドのスポーツカーたる「ホンダCR-Z」は今、注目の的だ。エコは現代の最優先課題ではあるが、クルマを操る面白さという観点から見ると、ハイブリッドカーは、必ずしも高い得点がイメージされるものではない。面白く走らせるならスポーツカー、スポーツカーはスピードを楽しむもの、それはエコドライブとは相反するもの……と受け取られがちだ。しかし、どちらも効率を尊ぶ点など、共通項もないわけではない。だからハイブリッドとMTを組み合わせたホンダの狙いは、まさに時代背景を先取りしたコンセプトともいえる。
ハイブリッドカーのひとつの目的は燃費効率であるが、ATよりもMTの方が、変速作業を機械にまかせず自分の手で行うことで、さらに高効率を期待できるのではないか――という疑問をもつ人は少なからずいる。
MTは時間(=速度)と経済(=燃費)、両方の効率を実現できる二面性を合わせもつ。そこにハイブリッド・スポーツカーの存在する意味がある。しかし、変速操作を個人の技量にゆだねないで済むATは、今ではときにMT以上の燃費効率を発揮できるのも事実だ。とくにファイナルを小さくして低回転で回すAT(総減速比:2.22)は、高速道路でMT(同:2.83)より好燃費を記録する例がほとんど。そこで今回は、AT(CVT)の「CR-Z」で、燃費に注目しつつ、さらに操縦安定性や乗り心地もどのようなものなのかチェックしてみた。
「18km/リッター」が壁
まず、純粋に高速燃費を計測してみた。東名高速は速度変化が大きなことから敬遠し、すいていて自分のペースで走れる深夜の常磐道をセレクト。守谷SAを起点に北茨城まで往復した。
その結果、往路は15.7km/リッター、復路は16.9km/リッターを記録した。速度は95〜105km/hを保った結果であったが、正直なところ、失望した。車載のドライビングコンピューター(ドラコン)によれば、都内主体の一般道での渋滞走行では7.0〜9.0km/リッター程度でなかなか2けたには届かない。一部高速道路も含む守谷SAまでの平均も、実測で7.8km/リッターに過ぎない。赤信号では律義にアイドルストップするし、燃料ゲージの針はほとんど動かない。だから、かなり期待したのだが……。
そのドラコンの数字は、高速道路でも「18」の数字には届かない。ちなみに今回の全走行距離605kmの総平均燃費は13.3km/リッターだった。MTは楽しんでエンジンを回せば燃費は悪化する、しかしATでは、積極的に燃費を悪化させうる要因はほとんどない。むしろ好記録を狙った運転を意識したほどだ。
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ハードにソフトを合わせるべし
ハイブリッドカーは、ただ単に一定速度で流しただけでは燃費を稼げない。バッテリーの残量モニターを見ていると、フル充電時より1目盛り消えたところで限度に達し、余分は捨てられてしまう。微妙な下りやエンジンブレーキの時に充電する電気を有効に使わない手はない。そこで、モニターを見ながら、微妙にアクセルペダルを踏み込んで、電動アシストを使ってやる。するとバッテリーのモニターは半分そこそこまで消費する。
要領としては、この電気の受け入れ枠を空けてやり、決して捨てないようにするのがコツだ。そんな試行錯誤のうちに、瞬時ながら18km/リッターに達したこともあった。余談だが、「トヨタ・プリウス」でこの方法を使うと、30km/リッターを連続して記録できる。
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行きと帰りで少し燃費が違ったのは、北茨城まで全体に上りこう配で、帰りは逆。また夜間は給油所が閉まっていたため国道6号に下りて探したこと。給油機そのものの精度違いなどが原因だろう。
期待値を下まわったのは、100km/h時にトップギアで2000rpm まで回ってしまうことも要因だろう。これは今や“回し過ぎ”である。低回転域のトルクが細いからなのだろうか。「CR-Z」に関しては、私見ではやはりMTの方が実用燃費は稼げそうに思う。
素性のいいヤツ
さて、そんな「CR-Z」の基本的な走行性能についてはどうか?
操縦安定性は優秀。低燃費タイヤ特有の低グリップな印象はなく、コーナーでなかなかよく踏ん張る。ショートホイールベースゆえの軽快な旋回感も良好。ただしエコアシストのスポーツモードは、パワーステアリングの操舵(そうだ)力が重くなるのがウリではあるが、単にアシストを断つだけだから、シャフトのねじれ感が顕著になり、切り始めのレスポンスが鈍り、動きが鈍化するだけだ。
また乗り心地は端的に言ってNGだ。上下動の変化代は少なく、まぁ姿勢はフラットな領域に保たれるが、硬めのバネ系に対してダンピングは不足気味。それらは我慢の範囲内にはあるものの、ビリビリ、ブルブルした振動が絶えないのは興ざめだ。この振動はバネ系の精度が緩いのが原因だろうが、いささか“安いクルマ”に乗っているようで耐えられない。しかし、ホンダ・チューンのうまいところは、ブッシュ系の設定が適切なところ。突起や段差などを乗り越える際のハーシュネスは、上手に処理されている。
シートは低く座るポジションがスポーツカーを思わせるに十分。ただし見た目の座面傾斜はあるものの、クッションの固さ配分や、沈ませるポイントが不適だといえる。概して、凹面で腰が前にズレやすいから長時間のドライブは疲れるし、ブレーキング時のホールド性も低い。
総括すると、まず外観のカッコ良さはマル。走行感覚はスポーツカーのそれ。乗り心地はバツ。ハイブリッドのエコ性能は、期待値を下まわるものの、絶対値としてはまずまず。といったところで、素地はよく出来ているから今後のチューニングに期待がかかる。広報車はいわば、プレスの取材を意識した試作段階の“間に合わせ”であるから、実際の量販車はもっと完成度が高いだろう。
(文=笹目二朗/写真=荒川正幸)

笹目 二朗
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