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【スペック】全長×全幅×全高=4815×1945×1390mm/ホイールベース=2745mm/車重=2240kg/駆動方式=4WD/6リッターW12DOHC48バルブターボ(630ps/6000rpm、81.6kgm/1700-5600rpm)/価格=3150.0万円(テスト車=同じ ※一部日本仕様と異なる装備あり)

ベントレー・コンチネンタル スーパースポーツ(4WD/6AT)【試乗記】

振り回せるベントレー 2010.04.07 試乗記 下野 康史 ベントレー・コンチネンタル スーパースポーツ(4WD/6AT)
……3150.0万円

“史上最速のベントレー”を声高に主張する「コンチネンタル スーパースポーツ」が日本デビュー! その実力をサーキットで試した。

エコも気づかう12気筒

史上最強・最速のベントレーが登場した。こんな時代に打ち立てた開発ターゲットがスゴイ。加速性能で0-100km/h=4秒をきる。そのために、ベースの「コンチネンタルGTスピード」(0-100km/h=4.5秒)を110kg軽量化する。さらには“こんな時代”にも配慮して、環境性能にも新機軸を盛り込んだ。それが「コンチネンタル スーパースポーツ」である。

610psにまでチューンされていた6リッターW12ツインターボのブースト圧をさらに上げ、ECUのプログラムを変更し、吸排気系も見直して、630psを得ている。その一方(日本では恩恵に浴せないが)このエンジンは、CO2削減に貢献するエタノール含有のバイオ燃料「E85」でも走ることができる。

マイナス110kgを達成したダイエットの内訳は、カーボン・セラミック・ブレーキの標準装備、専用のシートやアルミホイールの採用などが主だが、見た目に最もドラスティックな減量策はリアシートの撤廃である。世界一ぜいたくな4座クーペというコンチネンタルの看板をかなぐり捨て、ベントレー史上初の2シーターとした。ただ、これは一部ベントレー・ボーイズの不評を買ったとみえ、望めば"後席付き"も選ぶことができる。オプションで69万1500円。3150万円のプライスタグからすると、安い。というか、それだけなら買える! と思った。

630psを発生する心臓部。ベントレーは、2012年までにCO2排出量を15%削減するという目標のもと、新しいパワートレインを開発中だという。
630psを発生する心臓部。ベントレーは、2012年までにCO2排出量を15%削減するという目標のもと、新しいパワートレインを開発中だという。 拡大
シートには豪華な装飾が施されてはいるが、形状はスパルタン。通常のシートより1脚あたり21kg(!)も軽い。
シートには豪華な装飾が施されてはいるが、形状はスパルタン。通常のシートより1脚あたり21kg(!)も軽い。 拡大
ベントレー史上初の“リアシートレス”キャビン。左右を結ぶカーボンのポールは、剛性強化のためではなく、荷物の落下を防ぐためのもの。オプションで4座とすることもできる。
ベントレー史上初の“リアシートレス”キャビン。左右を結ぶカーボンのポールは、剛性強化のためではなく、荷物の落下を防ぐためのもの。オプションで4座とすることもできる。 拡大
ベントレー コンチネンタルスーパースポーツ の中古車

気分高まるコクピット

0-100km/h=3.9秒、最高速329km/h、しかもかるく3千万円オーバーのモンスターをテストするにあたって、試乗ステージとして選ばれたのは、袖ヶ浦フォレストレースウェイ。千葉県内に新しく出来たミニサーキットである。コース幅は思いのほか広いが、1周=2.4kmと短い。しかも、日本にまだ1台しかないテストカーを使ったプレス試乗会は1日限定で、『webCG』の枠は朝一番の45分間だった。タイヤを減らすような走りかたは慎むよう、ベントレー・ジャパンからもお達しが出る。それを聞いて、内心、胸をなでおろしたのが正直なところだが、とにかく今回はそうした限られた状況での体験記であることをお断りしておく。

パドックにはもう1台、比較用として「コンチネンタルGTCスピード」が用意されていた。白いレザーにオリーブアッシュのウッドパネル。ビバリーヒルズチックな内装を白日の下にさらした“4座オープンコンチネンタル”である。といっても、これだってパワーは610psある。

まばゆいインテリアの豪奢(ごうしゃ)なベントレーで初めてのサーキットを慎重に走ったあと、いよいよスーパースポーツと対峙(たいじ)する。流麗な2ドアクーペのフォルムに変わりはないが、フロントグリルの面積は広がり、エグゾーストパイプの意匠も変わった。なによりもフロントフェンダーに“SUPERSPORTS”のロゴが入ったのがハイエンド コンチネンタルの証だ。ベントレーがグレード名をボディに刻むのは、なんとこれが初めてだという。

リアシートのないコクピットに収まると、ますます“スーパースポーツ度”は高まる。シート表皮はレザーだが、アンコが薄い。アウターシェルはカーボン製。リクライニングはするが、電動調整機構はない。GTスピードのフロントシートと比べて、1席あたり21kgも軽いスペシャルシートである。エンジンをスタートすると、そのネイキッドなレザーシートにW12の細かな震えが伝わった。エンジンの存在感の大きさは、ミドシップのスーパーカーに近い。ベントレーに乗って"バイブレーション"なんてものを感じたのは初めてである。

写真のモデルは「コンチネンタルGTCスピード」。610psの高出力ユニットを搭載する豪華4座オープンだ。20ps差とはいえ、「スーパースポーツ」との走りの違いは明らか。
写真のモデルは「コンチネンタルGTCスピード」。610psの高出力ユニットを搭載する豪華4座オープンだ。20ps差とはいえ、「スーパースポーツ」との走りの違いは明らか。 拡大
「コンチネンタルGTCスピード」のインテリア。
「コンチネンタルGTCスピード」のインテリア。 拡大
コンチネンタルシリーズのオープンモデルは、現在「コンチネンタルGTC(560ps)」と「コンチネンタルGTCスピード(610ps)」の2モデル。将来的に630psエンジンを積んだ「コンチネンタル スーパースポーツ コンバーチブル」が登場する可能性もある。
コンチネンタルシリーズのオープンモデルは、現在「コンチネンタルGTC(560ps)」と「コンチネンタルGTCスピード(610ps)」の2モデル。将来的に630psエンジンを積んだ「コンチネンタル スーパースポーツ コンバーチブル」が登場する可能性もある。 拡大

ただ速いだけじゃなく

貸し切りのコースを走り出すと、スーパースポーツのキャラクターをつかむのに時間はかからなかった。ひとことで言うと、これは最もファン・トゥ・ドライブなベントレーである。GTCスピードとの馬力差は20psだが、2240kgの車重は280kgも軽い。比較用にクーペより重い、“コンバーチブルのGTスピード”を用意した演出に一本取られた感じだが、そのせいもあって、スーパースポーツは走っても歴然とライトウェイトである。

軽いだけでなく、ホイールベースも全長も短い、ひとまわり小さなクルマに感じられる。専用アルミホイールのおかげでリアのトレッドは5cm広がり、サスペンションブッシュも3割強化された。ZFの6段ATは、変速スピードを従来の半分に詰め、"クイックシフト・トランスミッション"の名を与えられた。そうした特別仕立てのすべてが、身のこなしを軽くソリッドに感じさせている。ベントレーに乗って、運転が楽しいと思ったのはこれが初めてである。以前乗ったGTスピードでは、カーボン・セラミック・ブレーキの効きが過敏すぎて具合が悪かったが、このクルマは不満なしだった。

試乗後、プレゼンルームに戻って、デレク・ベルがニュルブルクリンクの旧コースを攻めているビデオを見た。「ベントレーでニュルブルクリンクを走るなんて、気乗りしないが……」という語りで始まるオンボード映像だ。PRだから、走るにつれて往年のF1ドライバーが相好を崩すという筋立てなのだが、驚いたのは、1周約23kmの難コースでスーパースポーツを駆るデレク・ベルがしゃべりっぱなしであることだった。速いだけでなく、リラックスさせることも忘れない。史上最強・最速ベントレーの真骨頂はそのへんにあるのだろう。

(文=下野康史/写真=ベントレーモーターズジャパン)

駆動方式は4WD。従来50:50だった前後トルク配分は、「スーパースポーツ」では40:60に設定された。
駆動方式は4WD。従来50:50だった前後トルク配分は、「スーパースポーツ」では40:60に設定された。 拡大
トランスミッションは、ZF製6AT。シフト時間が50%短縮化されたほか、シフトダウン時にブリッピングを行う機構も盛り込まれた。
トランスミッションは、ZF製6AT。シフト時間が50%短縮化されたほか、シフトダウン時にブリッピングを行う機構も盛り込まれた。 拡大
50mmワイド化されたリアトレッドや専用のサスペンションチューンによりシャシー性能も向上が図られた。ESPの設定も異なる。
50mmワイド化されたリアトレッドや専用のサスペンションチューンによりシャシー性能も向上が図られた。ESPの設定も異なる。 拡大
下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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