第401回:ついに東京モーターショーを超えた!?
コージの東京オートサロン2010勝手に総括!
2010.01.27
小沢コージの勢いまかせ!
第401回:ついに東京モーターショーを越えた!? コージの東京オートサロン2010勝手に総括!
やっぱりクルマで遊びたい人はいる!
新春恒例のギョーカイ風物詩「東京オートサロン」が無事終了いたしました。たった3日間のイベントだし、本来「東京モーターショー」と比べる規模じゃないんだけど、それでも今年は状況が状況だけに、いろいろわかって有意義な取材でありました。
特に俺は今回ほぼ3日間通しで、『アンダーステアDVD』(今度コッチも紹介します)生売りイベントやってたんで、ギョーカイの勢いを直に感じることができた。
それはまず「その気になれば自動車イベントはまだイケる」ってこと。驚いたのは来場者数で、公式発表によると3日間合計は23万7954名で、去年より9000人弱も多い! 特にすごいのは日曜日で、10万4832人と、2000人近くも増えてる。比べると去年の東京モーターショーは最大でも11月1日(日)の7万3400人!! 平日になると3万人台で、これまたオートサロンでは金曜4万人台、土曜8万人台であることを考えるとマジな話、部分的にだが東京オートサロンは東京モーターショーを超えたのだ。
以前から「記録のモーターショー、記憶のオートサロン」って話はあったけど、いよいよ記録でもオートサロンはモーターショーを超えつつある。
感覚的に驚いたのは、初日の駐車場のいっぱいさ加減。午前10時過ぎ(報道関係者は9時開場)に行ったら、駐車場の隅っこの一番遠いところに追いやられた。モーターショーの場合、完璧にがら空きで、同じ駐車場でも真ん中より近くに停められたもんね。肌で感じる温度差だけでもかなりのもんよ。
ただし、だからといってオートサロン完勝! と言えるほど簡単な話でもない。今年の福岡オートサロンは「お客様にご満足いただける展示内容を維持できない」と中止になったし、東京オートサロンでさえ以前使ってたイベントホールは使わず、出展ブースのひとつひとつが確実に小さくなった。メーカー系も前回のダイハツに続き、スズキ、スバルが出展を取りやめるなど、確実に今の不況を反映してる。
でも、面積が小さくなった分、おそらく出展フィーも安くなってて、出展社数は402社と去年に比べ2割増しだし、展示台数も625台と約12%増しと、数を減らさないようにしようという努力が見て取れる。
言っちゃ悪いけど、お役所仕事の匂いプンプンの東京モーターショーに比べ、さすがは“民間”のオートサロン。見事にお客さんのほうを向いていたと言えるだろう。
裏地に凝る時代
でもね。だからといって安心とは言いきれないのが今の時代。ひとつはさっきも触れた“質”の問題で、俺が見た範囲では確実に驚きが減った。オートサロンといえば、パワフルなチューニングカーや驚きのエアロモディファイが売りだったのに、予想外のものはなかったし、俺的にはそういったカスタムカーを見る以上に新たな自動車ビジネス、ぶっちゃけ“新しい儲けネタ”の息吹を感じるのが楽しみだったけど、それも少なかった。去年は「後付けアイドリングストップ」とか、「インターネットによる並行車直輸入」とかあったのにね。
多く目にとまったのはカラーリングやインテリア系の勢い。キラキラペイントがウリの「HOUSE of KOLOR」は、相変わらずエロティックなコンパニオンで目立ってた。内装屋の「ディオーム」は、「前年に比べて、売り上げは倍増してますよ」とのこと。早い話、こちらは新時代のシートカバーがメインで商品の出来がわりと良く、合成皮革を使っていながらリアルな本革テイストを醸し出してるのと、ズバリお値段。「売れ筋はミニバン用で約3〜4万円」というから1列あたり1万円ほど。マジな話“デフレ時代の地味カスタム”って感じだ。
さらに面白かったのは2009年11月に立ち上がった「REAL」で、こちらはオリジナルステアリングホイール専門店。しかも興味深いのが、最初に出した商品が「プリウス」用なこと。素材にやたらこだわり、握り部分には本革や本木目はもちろん、カーボンなども使い、一部クリアを35層も吹くなど、非常に凝ってるのだ。
まあインテリア系が元気なのは、まさに庶民が裏地に凝った江戸時代のように、クルマ界でも贅沢の質が、非常に内向的かつスケールが小さくなってるってことかもしれない。
法規やコストの問題で逆風が吹きすさぶカスタマイズ業界。だけどそれでも、スキマ中のスキマを狙ったという感じで、つくづく商魂たくましいと思った次第。まさに「冬来たりなば春遠からじ」あるいは「明けない夜はない」といった感じで、みんながんばってるというわけ。
そのほかさんざん報道済みだろうけど、あのトヨタが新社長の豊田章男さん直々にプレゼンしたのも時代だろう。「FT-86」のGAZOOレーシング仕様や、フルタイム4WDハイブリッド仕様の「MR-S」、FRに改造した「アイゴ」などが出てきたのにも驚いた。
つまり、一部勢いのあるところはそれなりに頑張ってるけど、基本、“耐え”の時代。今後の景気回復を夢見て、体力を温存しつつ、踏みとどまってるという感じ。見事、時代を反映していたショーだったのだ。
俺自身も会場に入り、現場の空気を吸い、予想以上に変わらぬクルマ好き達に触れて、パワーを貰った。あえて繰り返すと、新しい動きらしきモノが見えたのはインテリア業界と、俺と河口まなぶが作った『アンダーステアDVD』ぐらい。そんな感じですか(笑)。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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