レクサスLS460L バージョンUZ(5人乗り)(FR/8AT)【ブリーフテスト】
レクサスLS460L バージョンUZ(5人乗り)(FR/8AT) 2010.01.26 試乗記 ……1323万9550円総合評価……★★★★
レクサスの旗艦「LS」の、快適装備充実モデルをテスト。最新のレクサス流“おもてなし”はいかに?
さらなる進化に期待
デビューから3年あまりが経過し、いまや日本を代表するラクシャリーセダンとして確固たる地位を築いた「レクサスLS」。都内で観察するかぎり、ラクシャリーセダン人気は「メルセデス・ベンツSクラス」とこのレクサスLSが二分している。
その2モデルが2009年秋に揃ってマイナーチェンジを実施し、ますます魅力を高めた。LSでは、日本車らしいきめ細やかな配慮により、ドライバー、パッセンジャーの両者に“至れり尽くせり”の移動空間を提供。この“おもてなし”にコロっといくVIPは多いのではないか? さらに、走りに関しても、より洗練された印象を受けた。走りの上質さという意味では、いまだSクラスに一日の長があるものの、改良の手を緩めないLSに、これからもたゆまぬ進化を期待したい。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1989年のデビュー以来、日本では「トヨタ・セルシオ」としてトヨタブランドの頂点に君臨してたきたモデル。2006年デトロイトショーで初公開された新型「レクサスLS」(セルシオの4代目)から、日本でもレクサスブランドのフラッグシップモデルへと立ち位置を変えた。
2006年9月に発売された当初のラインナップは、新開発のV8 4.6リッターエンジンを搭載した「LS460」(FR/8AT)のみ。2007年5月に、5リッターV8+ハイブリッドシステム搭載の「LS600h」と、そのストレッチ版「LS600hL」が発売され、駆動方式はフルタイム4WDが採用された。
さらに2008年9月、LS460にもロングボディ版と4WDモデルが追加。2009年10月にはマイナーチェンジが実施され、内外装のリファインと新グレード「バージョンSZ」「バージョンUZ」が追加設定された。
(グレード概要)
今回の試乗車「LS460L」は、標準車と比べてホイールベースを120mm長くとったロングボディが特徴。なかでも「バージョンUZ」は、後席の快適性をとくに高めた仕様で、リアパワーシートにオットマン&リアシートリラクゼーションシステム、大型センターコンソールなどを標準装備。さらに、マークレビンソンリファレンスサラウンドシステムや、リアシートエンターテインメントシステム、後席専用のDVDプレイヤーも備わる。
安全装備としては、後席にもカーテンエアバッグ、サイドエアバッグが備わり、さらに後席左席にはシートクッションエアバッグも装備される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
本木目パネルとレザーシート/トリムが標準の「LS460L」は、豪華なインテリアデザインが実に魅力的だ。試乗車は“メローホワイト”というまぶしいばかりのレザーとマットフィニッシュのウッドパネルが華やかな雰囲気をかもしだしていた。あまりにきれいなため、白手袋をはめないと申し訳なく思えるほどである。これで、「LS600h」のように、インパネまで本革張りだと、もういうことはない。
メーターパネルは、オプション装備の「ファイングラフィックメーター」と、同じくオプションの「ナイトビュー」が装着されていた。バーチャルメーターとはいえ、見やすさに不満はなく、回転計が小さいことを除けば、提供される情報も十分。ただ、ナイトビュー使用時には、メーター中央にその映像が映し出されるからいいが、それ以外のときは真ん中がスカスカで、見た目に寂しいのが気になった。
(前席)……★★★★★
後席重視のロングホイールベースモデルでありながら、前席の快適性もきわめて高い。特筆すべきは、「LS460L」に標準装備のセミアニリン本革シートで、適度に張りのある表皮で優しく身体全体を包んでくれる感触はまさに絶品! 温風/冷風がシート表面から吹き出す「コンフォータブルエアシート」やステアリングヒーターも、快適なドライブにはうれしい機能だ。
(後席)……★★★★★
「LS460L」のなかでも、とくに後席の快適性に力を入れたのがこの「バージョンUZ」だ。スライドやリクライニングが可能なことに加えて、左側にはオットマンやマッサージ機能が付くし、また、助手席がワンタッチで前に出せるなど、リラックスするにはもってこい。そのうえ、セミアニリン本革シートは、前席よりもさらに座り心地がよろしく、リアシートエンターテインメントシステムを楽しむ前に寝入ってしまいそうだ。
(荷室)……★★★
後席に立派なシートをおごったしわよせが、荷室に現れている。ハイブリッドモデルよりは広いが、荷室の奥行きが約80cmと、あまりに短い。ただ、横幅や高さには余裕があるし、そもそもショーファードリブンカーだから、1、2人ぶんの荷物が入ればいいという意味では、ゴルフバッグやトランクを収めるのに不都合はないのかもしれない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
「LS460L」に搭載の4.6リッターV8と8段オートマチックは、マイナーチェンジの前後でとくに仕様に変更はないものの、低回転からスムーズかつ力強いエンジンと、シフトショックとは無縁の8段ATが、ラクシャリーセダンにふさわしいゆとりと洗練された感触をドライバーに伝えてくる。それでいて、アクセルペダルに力をこめると、重厚なV8サウンドを控えめに響かせながら、スポーティな吹け上がりを見せるから、後席に座っているばかりでは惜しい気がする。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
「LS460L」には、標準サスペンション仕様とコンフォートライド仕様が用意され、購入時に自由に選ぶことができる。今回試乗したのはコンフォートライド仕様で、乗り心地を重視した専用サスペンションと専用タイヤが装着されている。なお、タイヤサイズは標準サスペンション仕様と同じ235/50R18である(ただし、スピードレンジはWからVに変わる)。
レクサスのサスペンションというと、全般的にはフラットライド重視のやや硬めの味付けが多いが、このLS460Lコンフォートライド仕様は、エアサスペンションのモードが「ノーマル」なら硬さは感じられず、それでいてソフトすぎない、日本の路上にあった味付けになっている。
高速道路でも、フラット感はまずまずで、道路の継ぎ目を通過する場面でも、軽く“トン”とショックを伝える程度と快適さは失われない。ただ、スピードを上げると、ときどきフワッと浮くようなボディの動きがあった。多少路面の荒れを拾うとしても「スポーツ」モードに切り替えたほうが快適かもしれない。……というのは、あくまで運転席での印象であり、後席に陣取ると、コンフォートライド仕様であってもリアタイヤが細かいショックを拾ってしまう。決して不快なレベルではないが、乗り心地だけを考えると、後席よりも前席の方が快適である。
高速走行時の直進安定性は、FF車や4WD車に比べると多少頼りなく思えるものの、法定速度レベルなら不満はない。電動パワーステアリングのフィーリングにも不自然さは見られなかった。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2009年12月4日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2009年型
テスト車の走行距離:4071km
タイヤ:(前)235/50R18(後)同じ
オプション装備:プリクラッシュセーフティシステム+レーンキーピングアシスト+レーダークルーズコントロール(79万8000円)/ファイングラフィックメーター+ナイトビュー(42万円)/ムーンルーフレスオプション(-9万4500円)/セキュリティカメラ(8万4000円)/DSRCユニット(2万2050円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:644.8km
使用燃料:82.74リッター
参考燃費:7.79km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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