ルノー・ルーテシア ルノースポール(FF/6MT)【試乗記】
2009年の大トリ 2010.01.07 試乗記 ルノー・ルーテシア ルノースポール(FF/6MT)……299.0万円
最新の「ルーテシア」のホットモデル「ルノースポール」に下野康史が試乗した。
「ルノー・ルーテシア」のルノースポールが帰ってきた。ルノーの高性能モデル開発、及びモータースポーツ活動をとりしきるルノー・スポール・テクノロジー社の特製ルーテシアだ。現行の3代目ルーテシア(欧州名クリオ)にも、以前からルノースポール版はあったが、日本市場へは正式導入されていなかった。今回やってきたのは、2009年春のジュネーブショーでデビューしたブラックマスクの最新バージョンである。
アドレナリンが湧き出る
ルノースポールにハズレなし。これまでの経験でぼくはそう思っている。イギリス海峡に面した港町、ディエップにあるルノー・スポール・テクノロジー社の敷地は、かつてアルピーヌの工場があったところである。そのころから裏切ることのなかったハイパフォーマンス・ルノーの看板を背負うのが、ルノー・スポール(以下RS)である。
新型「ルーテシアRS」のパワーユニットは、202psの2リッター4気筒DOHC。「メガーヌ」や「ラグナ」にも使われている2リッターエンジンをチューンして、1リッターあたり100psを超すスポーツユニットに仕立てたものだ。
サスペンションの強化もぬかりないが、日本仕様の「トゥインゴRS」が採用したハードな“カップ仕様”の足まわりは、ルーテシアにはチョイスされなかった。ルノー・ジャポンの謳い文句は「クール・シック・ロケット」。コンフォートも忘れないプレミアム・ホットハッチを自認するのが今度のルーテシアRSである。
そのエンジンは、期待を裏切らない出来である。以前乗ったフェイスリフト前のモデル(並行輸入車)は、下のトルクが不足気味で、妙にスカスカした印象だったが、新型は低回転のトルクを20%増強し、6段マニュアルの1速、2速を低ギアリング化したという。その効果は明らかで、下から上までみっちり中身の詰まったルノースポールらしいエンジンに仕上がっている。いまにして思えば、マイナーチェンジ後まで正式輸入を我慢したのは正解だったかもしれない。
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とはいえ、回せば回すほどアドレナリンが出るエンジンには違いない。黄色い盤面をもつタコメーターの、なるべく右半分で針を泳がせるような使い方が正しいし、楽しい。7000rpmに近いトップエンドになると、メーター内に警告ランプがつき、電子音も鳴ってシフトアップを促す。この日はこれで「シビック タイプR ユーロ」の試乗会に駆けつけたのだが、英国製のホンダ・スーパーハッチと比べると、RSのエンジンはひとくちに“豪快”だ。吸排気の息づかいにキャブレターユニットのようなワイルドさがある。
キャラを立ててナンボ
ルーテシアRSは静止から100km/hまでを6.9秒で駆け抜け、車重1240kgの3ドアボディを225km/hまで引っ張る。FFながら、前輪のトラクションは強力で、フル加速中でも202psが器からこぼれるような印象はない。足まわりは当然、締め上げられているが、突っ張り感のない筋肉質の硬さである。カップ仕様のサスペンションを付けたトゥインゴRSのようなラフさとは無縁だ。タウンスピードでも乗り心地は十分快適で、ヨンゴー(タイヤ)を履くにしては、ゴツゴツした荒さもよく抑えられている。
後席に収まって走ってもらうと、リアシートでの乗り心地も悪くなかった。フロントフェンダーのエア抜きや、ダウンフォースを発生するリア・ディフューザー、フロントの17インチホイールからのぞくブレンボのブレーキ・キャリパーや、ステアリングホイールのセンターステッチなど、サーキットでの即戦力装備に目を奪われるとフト忘れがちだが、ファミリーハッチとしても問題なく合格点のつくクルマである。これで5ドアがあると文句なしだが、残念ながらRSは本国でも3ドアのみだ。
ルーテシアRSは、イタフラ系ホットハッチの当たり年だった2009年のトリをとるクルマである。はっきり言って、ノーマルでは商品力があるとは思えないルーテシアやトゥインゴも、ルノースポールが手がければここまでキャラが立つ。日本では販売店を見つけるのだってタイヘンなイタフラ車の、ましてやコンパクトハッチは、これくらいやらないと振り返ってもらえないだろう。
価格は299万円。値段的にいちばん近いライバルは「アバルト500」である。ファミリーユースにはそろそろ乗り心地が限界のアバルト500に対して、前述のとおり、ルーテシアRSは言い訳いらずだ。ひとクラス上のボディサイズがもたらす実用性の高さも魅力といえる。こちらはマニュアルのみだが、諸経費込みだといまや400万円コースの「フォルクスワーゲン・ゴルフGTI」を考えると、かなりお買い得だと思う。
(文=下野康史/写真=荒川正幸)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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