第122回:【Movie】オーストリアで懐かし日本車に心温まる−大矢アキオ、捨て身の路上調査員
2009.12.19 マッキナ あらモーダ!第122回:【Movie】オーストリアで懐かし日本車に心温まる大矢アキオ、捨て身の路上調査員 「オーストリア編」
クルマとの縁はさまざま
いま各国で走っているクルマを現地から実況する「捨て身の路上調査員」シリーズ、「イタリア・シエナ編」、「フランス・ソショー編」に続く第3弾は、「オーストリア編」である。
自動車史における「オーストリアとクルマ」といえば、話題が尽きない。アバルトの創始者であるカルロ(カール)・アバルトや、今年60歳を迎えた元F1ドライバーのニキ・ラウダの故郷であり、ポルシェ家の歴史ともオーストリアは深いつながりをもっている。
だが、過去のものと思ったら大間違いだ。今日でも、この国はクルマと深い縁がある。
ポルシェ家によるオーストリア国内のフォルクスワーゲン系各ブランドの販売店網は、同家にとって、ドイツ・シュトゥットガルトのスポーツカー製造と双璧を成すファミリービジネスである。また、ポルシェデザインはザルツブルクの南約70kmにあるツェル・アム・ゼーを本拠としている。
19世紀末に起源を遡り、今日オーベルヴァルタースドルフを本拠とするマグナ・シュタイアー社もしかり。近年は「メルセデスGクラス」や「ジープ・グランドチェロキー」「BMW X3」「サーブ9-3コンバーチブル」などを受託生産している。
実際の調査を前に、オーストリア市場における2009年上半期の新車販売トップ5を記しておこう。
1位 フォルクスワーゲン・ゴルフ 1万807台
2位 セアト・イビーザ 4563台
3位 シュコダ・オクタヴィア 4326台
4位 フォルクスワーゲン・ポロ 3863台
5位 アウディA4 3746台
(参考:ALLES AUTO誌)
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フォルクスワーゲングループが圧勝!
さて今回、ボク大矢アキオは、チロル地方のウィンターリゾート、エッツタールで、街道を走るクルマを数えてみた。気温はマイナス3度。あまりの寒さに出た涙も凍りかけ、ブランドのみの仕分けとなったが、15分間に往来したクルマの結果は以下のとおりである。
1位 フォルクスワーゲン 18台
2位 メルセデス・ベンツ 8台
3位 アウディ 5台
3位 フォード 5台
5位 スズキ 4台
5位 BMW 4台
5位 オペル 4台
8位 セアト 3台
8位 ルノー 3台
10位 シュコダ 2台
新車販売の台数同様、街を走っているクルマも圧倒的にフォルクスワーゲン多し、であった。
さらにフォルクスワーゲングループの、フォルクスワーゲン、アウディ、セアト、シュコダを合計すると28台。これは前述のポルシェ家系ディーラーが地域に根ざしていることが、やはり大きいだろう。
古い日本車も人気
ところで、この国で心温まるのは、ちょっと古い日本車が元気なことだ。1980年代、輸入規制が厳しかった影響で日本車ディーラーの整備が遅れた隣国イタリアとは違い、早くからさまざまなブランドが輸入されたためである。この国のオーナーたちのメインテナンスの良さも背景にある。
また、調査中にはたった1台しか通過しなかったが、実はスバルの数が多い。やはり降雪地帯で4WDが評価されているためだろう。以前、同様にスバル人気が高い隣国スイスの事情を、ある雑誌のために取材したとき、富士重工のスタッフが語っていたのは、「フルタイム4駆+ATという、当時欧州になかった組み合わせが評価された」ということ。
「雪の中でクルマが止まってしまうということは、生死に関わる問題なのです」と真面目に話してくれたのを思いだした。
日頃温暖なイタリアに住んでいるとあまり実感がわかない。だが今回クッション代わりに積んできて車内に放置した縫いぐるみが、翌朝コチコチに固くなっていたのを見て、「これが人間だったら」と思うと、たしかに本当だと思った。
ちなみに「ちょっと日本車を見て心温まる」と書いたが、正直なところは少々違う。「遭遇したときの心境は?」と問われれば、「YOU TUBEで日本の1980-90年代の懐かし映像を観たとき」とボクは答える。
映像中に当時の美少女タレントを発見し、今となっては小っ恥ずかしいメイクや髪型に「オレ、こんな娘のファンやってたのかよ?」と自らを責めてしまう、あの気持ちだ。やはり欧州車に比べ、日本車のスタイルのファッション性が高いためだろう。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)
■【Movie】大矢アキオ 捨て身の路上調査員「オーストリア編」
(撮影と編集=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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