日産ノートX DIG-S(FF/CVT)【試乗記】
かなり“燃費スペシャル” 2012.10.15 試乗記 日産ノートX DIG-S(FF/CVT)……177万2400円
フルモデルチェンジで2代目に進化した、日産のコンパクトカー「ノート」。その走りを、新開発エンジンを搭載する上級グレード「X DIG-S」で試した。
新エンジンはいいことずくめ
新型「日産ノート」がデビューしたのは、2012年8月28日。翌9月、登録車の新車販売ランキングで、このクルマはいきなり第3位に輝いた。「プリウス」「アクア」そしてノートの順。1、2位は言わずと知れたハイブリッド車。4位もハイブリッドがメインの「フィット」である。
てごわいハイブリッド軍団に食い込めたのは、まちがいなく新型ノートの燃費性能のおかげだろう。25.2km/リッター(JC08モード)は、ノンハイブリッド(登録車)のベスト・イン・クラスである。
ノートは旧型の1.5リッタークラスからダウンサイジングして1.2リッターになった。パワーユニットは「マーチ」と同じ3気筒+エクストロニックCVTで、このエンジンをベースに直噴ミラーサイクル化して、さらにスーパーチャージャーを付加したのが、新開発のHR12DDR型ユニットだ。
ノーマルのHR12DEより燃費がいいだけでなく、パワーもプラス19psの98ps。願ったりかなったりのエコパワーユニットである。このエンジンを積んだモデルは、ハイブリッドと同じ“免税”をゲットする。
長いスパンで見たとき、6:4で安いほうの自然吸気モデルのほうが売れる、と日産は見ているが、発売からこれまでは実に7割がスーパーチャージャー付きだという。遠い昔のバブルのころ、“デザインコンシャス”という言葉が流行(はや)ったが、いまやクルマはすっかり燃費コンシャスの時代だ。燃費をよくすること、燃費を気にすることがデフォルトになった。
持ち時間2時間半の試乗会に用意されていたのは、当然、スーパーチャージャー付きである。
速さのための過給にあらず
日産のスーパーチャージャーというと、89年に出た「マーチ スーパーターボ」なんていう突貫小僧をつい思い出してしまう。そんなしょうがないオジサンに新型ノートはちょっぴり肩透かしを食らわせた。もっとパワフルかと思ったのだ。
日産によれば、0-100km/h加速は11秒台前半。うたい文句どおり、1.5リッター並のデータは出ているのだろうし、実際、3人乗車+カメラ機材でも、加速は必要十分なのだが、ガツンとくるパンチはない。この日、自然吸気モデルは用意されていなかったが、同じエンジンを積む現行マーチと比べても、車重が100kg以上軽いあちらのほうがキビキビしていた印象がある。
だが、試乗後、エンジニアに話を聞いて、納得した。電磁クラッチ付きで、エンジン回転のいかんに関わらずオンオフ可能なこの機械式過給機は、あくまでまず低燃費を目的にした“エコスーパーチャージャー”なのである。フロアセレクターのそばにあるボタンを押すと、計器盤にブルーの明かりがともってエコモードになる。照明はエコ運転の度合いによって3段階に濃淡を変える。
エコモードの機能のひとつは“発進アシスト”で、簡単に言うと、アクセルの応答性を少し鈍くして、結果として経済運転をさせる。特に違和感はないので、試乗中はもっぱらこのモードで走ったし、燃費で買ったユーザーならそうするはずだが、エコモードで穏やかに走っている限り、ほとんどスーパーチャージャーは回っていないのだそうだ。
エンジンは静かで、アイドリングストップの再始動もうまい。3気筒にありがちなプルプルした振動がまったくないのはマーチと同じだ。ちなみにスーパーチャージャーは「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のツインチャージャーと同じイートン製だ。
クラスの割にプレミアム
排気量は1.2リッターでも、ノートはマーチよりひとクラス上のクルマである。ベース車台は同じだが、ホイールベースはマーチより15cm長く、全長はプラス32cmで4mを超す。全幅は5ナンバー一杯だ。
その分、室内も荷室もたっぷりとられ、1台充足型の資質はより高い。乗り味もよりプレミアムだが、ロングホイールベースを考えると、乗り心地にはもう少ししっとりした落ち着きがあってもいいかなと感じた。
今回、満タン法の燃費はとれなかったが、スタートのときリセットした車載燃費計は68kmを走って15.8km/リッターを示していた。試乗会場まで乗ってきたターボ車「スズキ・ワゴンRスティングレー T」とくしくも同じだった。
直噴1.2リッターの過給エンジンといえば、「フォルクスワーゲン・ポロ」の4気筒ターボがある。あちらは最高出力105ps。カタログ燃費は21.2km/リッター(JC08モード)。燃費はノートに及ばないが、パワーは体感上も勝る。というか、ポロは十分以上に速い。その点、ノートはかなり燃費スペシャルなコンパクトハッチである。
ボディーサイドにはBMWっぽい鋭いエッジの深いプレスラインが入る。彫りの深いリアセクションには「フェアレディZ」と同じイメージのテールランプが埋まる。1.2リッターコンパクトとしてはそうとうデザインコンシャスなクルマである。逆に言うと、濃厚なデザインは「たかだか1.2リッター」とは思わせない。
上級モデルには、シートに合皮を使った「メダリスト」もある。昔、「ローレル」にあったグレード名をなつかしいと思いながら、いま乗っている大きなクルマからダウンサイジングする、なんていうのが、新型ノートのあらまほしきひとつの典型ユーザーだと思う。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=高橋信宏)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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