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第120回:マニフェスト達成!! 「フィアット500教習所」のその後

2009.12.05 マッキナ あらモーダ! 大矢 アキオ
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第120回:マニフェスト達成!! 「フィアット500教習所」のその後

教習車すべてが「フィアット500」

ボクが住むシエナの街でいち早く「フィアット500」を導入した自動車教習所があることは、2008年5月の本欄で紹介した。その“フィアット500教習所”がその後どうなったのか、ちょっと訪ねてみることにした。

世界遺産にも登録されている煉瓦造りの街並み。そのド真ん中にある「バルツァナ自動車教習所」のドアを開ける。すると、インストラクター兼共同経営者のヴァルテルさんが出迎えてくれた。どこか梨本勝を思わせる、イイおじさんである。

この国の他の教習所同様、ヴァルテルさんの教習所も、学科の開講時間は週にわずか4、5時間だ。そのうち半分は、教習生が大学や高校が終わったあとに来やすいよう、夜の6時に始まる。したがって、午前中の部である9〜10時の学科講習が終わったあとの事務所は、どこかのんびりした時間が流れている。

「今、ウチは教習車4台すべてがフィアット500だよ」とヴァルテルさんは誇らしげに答えた。1年前、最初の1台を導入したとき、「これから4台の教習車すべてをフィアット500にする」と言っていたが、マニフェストを守ったわけである。

なお、バルツァナ教習所の500は、すべて1.3リッターマルチジェット・ディーゼル仕様である。日本未導入だが、イタリア自動車工業会が毎月発表するディーゼル車登録ランキングでは、トップテンの常連だ。
この教習所の場合、ガソリン仕様を教習車に使っていたのは、ディーゼル仕様がなかった初代「ランチア・イプシロン」まで。その後は燃費のよいディーゼル車をずっと使っている。

バルツァナ自動車教習所前。ずらりと並んだ「フィアット500」。
バルツァナ自動車教習所前。ずらりと並んだ「フィアット500」。 拡大
インストラクターのヴァルテルさん(右)。
インストラクターのヴァルテルさん(右)。 拡大
大矢アキオが記録していたバルツァナ教習所車両の変遷。
初代「ランチア・イプシロン」(1999年1月)。
大矢アキオが記録していたバルツァナ教習所車両の変遷。初代「ランチア・イプシロン」(1999年1月)。 拡大

実は5台目

ところがヴァルテルさん、「正確にいうと、ウチで購入した500は5台なんだよ」と付け加えた。
と申しますと?
「4台のうち1台の500は、1年で7万km走ったところで、新しい500に買い替えたんだよ」と。

たとえフィアットであろうと(?)、いまどきのモデルは7万kmくらいではヘタらない。そんなことでダメになったら、年間走行距離3万kmなど当たり前の欧州では、商品として成り立たない。
しかし、ここは教習所だ。クラッチをはじめ各部が過酷な状況にさらされるという意味では、最たる環境である。ちなみにその昔、ボクが免許をとった日本の教習所で、教習車のことは「教材」と呼んでいた。この業界でクルマはクルマではない。

退役していった500で、特にヴァルテルさんたちを戸惑わせたのは、ディーゼルの粉塵除去フィルター(DPF)が“敏感”すぎたことと証言する。温度異常を示す警告灯が再三にわたって点灯し、そのたびディーラー工場入りしたというのだ。ディーゼル仕様はオイル消費も多めなうえ、DPFシステムに準拠した推奨オイルが高価なのも頭が痛かったらしい。

「ミニ」(2006年5月)。
「ミニ」(2006年5月)。 拡大
「オペル・コルサ」(2006年6月)。
「オペル・コルサ」(2006年6月)。 拡大

いけいけ、ガヤルド教習車まで!

今では、市内でヴァルテルさんの教習所は、“500がある教習所”として充分定着したようだ。ボクの帰り際、ちょうど500で教習を終えた男子教習生が頬を紅潮させて戻ってきて、事務担当のシルヴィアさんに次回の実技講習の予約を入れていた。

時代の流行に合わせて「ランチア・イプシロン」や「ミニ」を教習車に導入し、アイキャッチがわりにしてきたヴァルテルさん。念のため、次なる導入車は? と聞いてみたら、
「今は500以外考えられないね」
と答えてくれた。

バルツァナ教習所における500は、意外に長期政権(?)になるかもしれない。
そんなことを思っていたら、市内の別の教習所が最近、「セアト・イビーザ」を導入したというではないか。昨2008年に登場し、先代と比べて格段にアグレッシヴなデザインに生まれ変わったやつだ。その教習所が導入したのは赤いボディなので、さらに目を引く。

この勢いで、過去に東京周辺で「ホンダNSX」を頂点とするプレミアム教習車競争が過熱したのにならい、「ガヤルド教習車」「458イタリア教習車」までエスカレートしてくれることを、一野次馬として密かに期待している筆者である。

(文=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA/写真 大矢アキオ、SEAT)

教習所の看板娘・シルヴィアさん。
教習所の看板娘・シルヴィアさん。 拡大
「セアト・イビーザ」(2008年)。
「セアト・イビーザ」(2008年)。 拡大
次の時間の教習生を待つ500。
次の時間の教習生を待つ500。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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