第105回:「ラリーニッポン2009」に出場! 「AC ACE」で京都へ スーザン史子のコ・ドライバー体験記
2009.11.30 エディターから一言第105回:「ラリーニッポン2009」に出場! 「AC ACE」で京都へスーザン史子のコ・ドライバー体験記
東京から京都まで、クラシックカーで走破するイベント「ラリーニッポン」。今年初開催されたこのイベントってどんなもの? コ・ドライバーとして出場したスーザン史子がリポートします。
日本の古き良きもの
2009年10月17〜20日の4日間に渡って開催された、クラシックカーイベント「ラリーニッポン2009」に、私、スーザン史子が出場! なんと、急な代打でのご指名で、雅楽師の東儀秀樹さんのコ・ドライバーという大役を賜りました〜。
「ラリーニッポン」って何? と思うのもそのはず、今年初めて開催されたクラシックカーイベントなんです。日本ユネスコ協会連盟が提唱する「未来遺産運動」の公式連携行事として実現しました。
集まったクラシックカーは、1969年以前に製造された歴史的にも価値の高いクルマばかり、約70台。歴史あるクルマを大切にして、後世につないで行く行為は、世界遺産を守ることにも通じるはず。このラリーイベントには、動く世界遺産であるクラシックカーで、日本の世界遺産を巡り、日本の良さや誇りを再認識・再発見しようというメッセージが込められているんです。
また、ハイブリッドカーや電気自動車など、エコカーが注目されるなか、旧いクルマを大切に長く乗ることも、ひとつのエコの形としてアピールしていきたい、そんな思いも込められています。
私がコ・ドラを務める東儀さんのクルマは、1954年式のイギリス車「AC ACE」。世界で3台しかないワークスカーのうちの1台で、歴史的にも価値のあるクルマなんです。東儀さんは、フェラーリやポルシェも乗り継いできた筋金入りのクルマ好き。数年前からクラシックカー競技に夢中で、愛車で本場イタリアの「1000MIGLIA(ミッレミリア)」にも2度出場。1年目で見事、ナショナルトロフィーを獲得した実力派。
昨年のミッレミリアには、私もイタリアまで応援に行って、東儀さんの活躍する姿を実際に見てはいたけど、突然のコ・ドライバー任命にはビックリ! しかも「本気で優勝狙ってるからね!」だって。どうしよ〜、かなりプレッシャーなんだけどぉ〜。
初めてのラリー
「ラリーニッポン」は、東京の国立劇場をスタートし、岐阜の白川郷、奈良の薬師寺や、京都の東寺などの世界遺産を巡ります。途中、PC(パスコントロールポイント)といって、決められた区間を規定の時間内で通過する線踏み競技や、ゴールまでの距離が知らされていない山道を、規定の平均時速で通過しその正確さを競うシークレットPCといった競技が設定されています。とにかくラリーは初めてな私、前日にルールや計器の使い方を頭に入れ、2〜3回練習しただけで本番を迎えたのです。
1日目と2日目はほぼ雨。かなり強く降る区間もあり、カッパ着用&幌装着で、ひたすら走り続けます。ウインドシールドと幌との隙間からは、雨がポタポタと室内に漏れるし、サイドウィンドウもないから、雨は容赦なく車内に水溜りを作る。山の中は気温も10度以下に冷え込み、幌のないクルマにとっては、かなり過酷なレースに。幌があるだけでもありがたい! それでも、心配していた競技のほうは、おおむね順調。これなら上位入賞も夢じゃないかも!
3日目は、青空が広がり、すがすがしい朝に。彦根城でひこにゃんとの写真撮影に浮かれていると、すぐに15mを6秒、20mを6秒という2連続のPCに突入。すると予想外の展開で、未経験のカーブに大慌て。操作ミスであたふたしていると「聞こえない! カウントして!!」という東儀さんの切羽詰まった声。「……サン、ニ、イチ、ゼロ!」と読み上げたものの、コンマ数秒の遅れで数十番違ってくるという厳しいレースだけに、入賞はもう絶望的。あ〜あ、どうしよう、ガックシ。
すっかり意気消沈していると、「2連続のシークレットPCなら、まだ挽回の余地はあるよ!」、そういって秘策を伝授してくれる方が。一度は諦めかけたレース、でも、少しでも挽回して、失敗した分を取り戻したい! そうじゃなきゃ、女が廃るわーー!! ってんで、再びヤル気モードに。深夜遅くまでかかってペース表を作り、次の日に備えたのです。
やる時はやるオンナです
そして迎えた本番。平均時速30kmと35kmを維持するシークレットPC。ストップウォッチ片手にスタート、ペース表とトリップメーターとを交互に見ながら、「もっとアクセル踏んで! いい調子です。あ、前のクルマ遅いです、抜きましょう! おっと、少し速過ぎる、アクセル抜いてください!」そんな風に細かく指示を出していくと、低速でのワインディングは骨が折れる操作にもかかわらず、さすが東儀さんは慣れたもの、瞬時に対応してくれる。
ゴールを探しながら、ブラインドコーナーを越えていくときの緊張感は、今まで体験したことのないドキドキ感。ようやく見つけたゴールを越えると、一気に緊張が解け、大きく深呼吸。「なんとかやりきりましたね!」と私。すると「そうだね。今の、結構よかったんじゃないかな。こうやってキッチリやっていくと、競技として楽しめるよね!」と東儀さんも息を弾ませて満足げ。これで、コ・ドラとしての役目、果たせたかな?
その夜の結果発表では、3位から1位までの受賞者が発表され、すっかり諦めていたところ、「次に、入賞者を発表します。10位、ゼッケンナンバー29番!」とのアナウンスが。立ち上がり、笑顔で応える東儀さんを見た瞬間、思わず涙がこぼれちゃいました。さらに最終日のみのリザルトは、驚きの3位! あー、諦めなくて良かった! 人生、『投げたらアカン!』ですなあ〜。
東儀さんいわく、クラシックカーレースで必要なのは、慣れと技術。全体の流れを読んで、「ここは昼食を後回しにしよう」といった時間配分を自分で調整できるようになるには慣れが必要だし、正確な線踏みをモノにするには、クラッチワークやアクセルワークにも高い技術が必要なのだとか。その2つの武器を携え、自分がどこまでやれるかを知りたいし、より上を目指したいという欲が尽きないから、さらにハマってしまう、とのこと。
私にとっては、誰かと一体感を持って、一つのゴールを目指して力を注ぐという作業がとっても新鮮に感じられました。クラシックカーレースは、しょせん道楽。でも、大の大人が、たかが線踏みひとつに悩んだり、焦ったり、いらだったりしながら真剣に取り組むということの面白さを知ったら、すっかりクセになってしまいました。コンマ数秒の狂いが命取りになるレース、ワクワク・ドキドキの連続でした。
(文=スーザン史子/写真=尾形和美)
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スーザン史子
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