トヨタ・ランドクルーザープラドTZ-G(4WD/5AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ランドクルーザープラドTZ-G(4WD/5AT) 2009.11.06 試乗記 ……567万9250円総合評価……★★★
7年ぶりに一新されたトヨタの本格オフローダー「ランドクルーザープラド」。はたして、どんなクルマに仕上がったのか? 一般道を主体に、その実力を試した。
オンロードをもっと重視せよ
このクルマはアメリカ市場を意識しており、高速道路の管理団体などでよく使われている。それだけに、まず壊れないことなど、耐久性や実用性を重視した作りになっており、乗って面白いとか愉快な面はあまり持ちあわせていない。
しかしこの分野も「BMW X5」とか「ポルシェ・カイエン」など高性能SUVが参入し、一気に高速化が進んでしまった結果、地味なだけの実用性能では魅力を確保しにくくなってきている。本来オフロードの走破性が優劣を決めた部分でも、今ではどれもがレベルアップしている。
実際の使い途は、比率としてはオンロードが圧倒的に多い。見た限り平坦な舗装路でブルブルと微振動が絶えない乗り心地は、日常性を著しく阻害している。多くを期待せず安ければいいという選択肢もあろうが、このサイズはすでに“高価なクラス”に含まれている。詳細は後述するが、オプション込みで600万円に迫ろうというクルマにしては、少々お粗末と思われる。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
トヨタの「ランドクルーザープラド」は、「ランドクルーザー」の弟分に位置づけられる本格派のオフローダー。2009年9月、約7年ぶりのフルモデルチェンジを果たし、4代目「150系」へと進化した。
新型は、歴代モデルが重視してきたオフロード走破性や堅牢性を向上させながら、オンロードでの快適性をさらに高めたとされる。
ラダーフレーム構造や、前ダブルウィッシュボーンサスペンション、後トレーリングリンク式リジッドサスペンションなどは、旧型をベースに改良。エンジンも、4リッターV6「1GR-FE」、2.7リッター直4「2TR-FE」と旧型と同型式ながら出力などが向上した。
「マルチテレインセレクト」「タイヤ切れ角表示機能」「マルチテレインモニター」「クロールコントロール」といった、オフロード性能を引き出す運転サポート機能は新型のセリングポイント。
オンロードを快適にする機能としては、走行状況にあわせてアクティブにスタビライザーをコントロールする「KDSS(キネティック・ダイナミック・サスペンション・システム)」機能(上級モデルのTZ-GとTZに搭載)が挙げられる。
(グレード概要)
ラインナップは、4リッターV6エンジンを積む「TZ-G」「TZ」「TX」と2.7リッター直4の「TX」「TX Lパッケージ」「TX(5人乗り)」の6タイプ。TX(5人乗り)以外は3列シートの7人乗り。3ドアのショートモデルは用意されず、すべて5ドアボディを採用する。 試乗車は、最上級の「TZ-G」である。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
計器類や各種調整機構の類は、普通の乗用車にあるものをほとんど完備する。そのうえに4WD関連のスイッチなども加わり、盛り沢山。ナビ画面も中央の高い位置にあり、見やすい。ただし多いがゆえにやや雑然としている。木目や半光沢の光り物も適度に配され一見豪華にみえるが、デザイン手法そのものは古風で地味だ。これまで慣れ親しんだ環境を好み、新奇なものを避け、徹底して実用性や使い勝手を重視するような、保守的なユーザーに向く。
(前席)……★★★
シートのサイズ、形状、ホールド性などはまずまずながら、クッションは全体に緩やか。フィット感という点では、表面がしっくり馴染む感じは薄い。革は滑りやすいが、実用的な耐久性はありそうだ。前方の眺めは、高い視点、立ち気味のピラーなどにより上々。フェンダーの両端が盛り上がった形状も車幅を確認しやすい。ステップの備えこそあるものの、フロアが高いため、一気に乗り込むには難儀する。
(2列目シート)……★★★
折り畳めるシートの例に漏れず、形状が平板でクッションも薄い。設置角度としてはもう少し座面後傾斜角が欲しい。クッションの硬軟配分にも配慮が見られない。空間的な余裕は十分でルーフも高い。シートは取り付けに際してやや剛性不足で、路面の不整がそれほどでなくとも、乗員がいない場合にはブルブル震えて上質感をそこねる。この点は全席について言える。
(3列目シート)……★★
普段は畳まれてしまい荷物スペースとなる部分ではあるが、電動機構のおかげで設置は簡単。リアウィンドウやルーフ後端が迫っており、決してゆったりした気分は得られないものの、囲まれ感からくる落ち着きはある。
シートだけのせいではないが、乗り心地は上下動が絶えない。ただ、定員乗車でのドライブでも最後列に疎外感はなく、リムジンの後席ほどではないにしても、長く前方に広がる空間を睥睨(へいげい)する気持ちのゆとりは得られる。
(荷室)……★★★
独立した荷室空間だけでも結構広い。もちろん3列目シートを倒せばさらに広い空間となる。フロアはフラットだが高めなので、重量物は一旦バンパーに載せてから……というところ。意見評価が分かれるのは、荷室のドアが横開きな点だろう。雨の日の屋根代わりにはならないし、開閉時には結構広い後方空間が必要。左右どちらからでも開閉できる機構でないと、場所によっては使えないこともありそう。
|
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
4リッターV6と2.7リッター直4の布陣は、これまでの慣習として理解できるし、ユーザーの要求をほぼ満たすだろう。しかし月に1000台程度の需要であれば、簡素な仕様のV8を載せた方が喜ばれるのではないだろうか。2.2トンの重量に対して燃費の点でも有利と思われる。V6も回せばそこそこ速いが、動きだしの俊敏性などのためにも、低速トルクはもっとあっていい。ATはV6が5段、4気筒は4段ながら、クルマの用途としては、さして問題とならない。
|
(乗り心地+ハンドリング)……★★
乗り心地ははっきり言って前時代的。一見路面状況のよい道でもブルブルと振動が絶えない。これだけの重量や、大型SUVとしてのステータスを考えると、大いに不満だ。オフロードにおける実用性や耐久性を考慮したとされているが、使用される場面は、そのほとんどがオンロードであるから、もっと大事に考えるべきだろう。操縦安定性についても、足まわりが華奢な印象が強く、動力性能に対してヨロヨロしている感覚は否めない。電子デバイスを早めに効かせて速度を上げさせないという対処の仕方も、時代に合わないと思われる。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2009年10月15日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2009年型
テスト車の走行距離:3433km
タイヤ:(前)265/60R18(後)同じ(いずれも、ミシュランLATITUDE TOUR HD)
オプション装備:ボディカラー(ホワイトパールクリスタルシャイン)=3万1500円/NAVI AI-AVS&リア電子制御エアサスペンション+ワイドビューフロント&サイドモニター+HDDナビゲーションシステム&プラド・スーパーライブサウンドシステム=81万6900円/リアフォグランプ+寒冷地仕様=2万3100円/クールボックス=5万7750円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(6):山岳路(3)
テスト距離:290.3km
使用燃料:40.75リッター
参考燃費:7.12km/リッター

笹目 二朗
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。



































