トヨタ・ランドクルーザー プラドシリーズ【試乗速報】
人間の能力を超えた 2009.10.07 試乗記 トヨタ・ランドクルーザー プラドTZ-G(4WD/5AT)/TX(4WD/4AT)……586万8250円/422万2950円
ボディ強化や最新の電子制御システムにより、走破性や快適性にさらに磨きがかかった新型「プラド」。オフロード、オンロードで熊倉重春が試乗した。
SUVの王者のワケ
揺るがぬ伝統というか、「こういうクルマでありたい」という信念を、またも貫き通した新型「トヨタ・ランドクルーザー プラド」。激変する時代にあって、頑固といえるほどの自己主張だ。
「ランクル」の愛称で知られる「トヨタ・ランドクルーザー」は、今やSUV界の王者として世界に君臨している。その代表としての現行「200系」は山のような量感が印象に刺さる。だから、それより20cmほど短く、1トン近く軽いランドクルーザー プラドは、なんとなく二軍みたいに思われるかもしれないが、なんのなんの、乗れば乗るほど存在感の濃さが身にしみる。全長4.7m級のサイズは取り回しにおいてギリギリのところ(特に狭い日本では)。本当に役に立つのはプラドなのだ。
ところで、なぜランクル一族がSUVの王者かというと、とにかく信頼性と耐久性が高いから。それを証明するエピソードは世界中どこにでもある。新型プラドを開発したチーフエンジニアの有元真人さんも「地球滅亡の日が来ても、ランクルとプラドだけは最後まで走ってます」と胸を張る。
まさに山登りロボット
そんな目で新型プラドを見ると、モノコック化が進むSUV界の流れの中で依然としてセパレートフレームにこだわるなど、とにかく壊れないことを優先したのがよくわかるが、ともかく、まずは険しいオフロードに挑戦してみよう。そこで結論から報告すると、プラドはどこでも涼しい顔で乗り切ってしまう。極端に言えば「完璧な山登りロボット」だ。
そのポイントは、二重三重に張りめぐらされた電子制御のネットワーク。最も特徴的なのは「クロールコントロール」で、のけぞるような急斜面で、しかもサスペンションが伸びきるほど深い穴があったり岩が突き出していたりしても、パワーが必要な瞬間は自動的にエンジンが吹け、タイヤが空転しかけるとアクセルを絞るだけでなく、一輪ごとに個別に微妙なブレーキをかけ、ブオッ、ブオッと踏破してしまう。
その瞬間ごとのトルクのかけ方も、マルチテレインセレクトという画面から、たとえば泥と砂とか浮き石とか4つある項目からボタンで選び、最適の状態を演出できる。ドライバーはいっさいペダル類に触れることなく、ステアリング操作に集中するだけ。しかも計器盤の中とナビ画面(ボンネットに隠れるフロントの眺めも表示される)で、今どの角度に前輪が切れているかを教えてくれる。これは13万6500円のオプションだが、プラドで荒野をめざすなら必需品だろう。
どんな状況でも室内は静か
そして、登りより怖いのが急斜面の下りだが、このクロールコントロールにはダウンヒルアシスト機能も備わっていて、ほとんどシートベルトで宙吊りになるような姿勢でも、四輪のABSをコンマ何秒という単位でガッ、ガッ、ガッと効かせながら確実に降りてくれる。傾斜角や路面状況に応じて、その速度も1km/hから5km/hまで5段階に切り替えられる。
こんな状態で深い穴を踏んでも制御が途切れないのは、どこまでもタイヤが地面にくっついているからで、それを可能にするのがKDSS(キネティックダイナミックサスペンションシステム)。前後のサスペンションを油圧回路で結び、大きくストロークする時だけスタビライザーを無効にするもので、現行ランクル200から採用されているが、新型プラドではさらに微妙に働くように改良が進んだ。
卓越した踏破性能と同時に感心なのは、これほど想像を絶する状況でも室内が平和そのもので、足まわりやボディのどこからもガタッとかビシッという不快な雑音が聞こえないこと。大きな突起に乗り上げる瞬間のショックもみごとにサスペンションに吸収され、決してドカンなどとは伝わって来ない。
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オンロードではさらに快適
おっと、ずいぶんオフロードの報告が長引いてしまった。そんな快適さは、オンロードではさらに強調される。実際のユーザーの99%はオンロードで暮らすだろうから、これは大切な要素だ。さすがセパレートフレーム付きだけあって、オールシーズン用のゴツいタイヤなのに路面からのノイズはほとんど聞こえないし、エンジンも静か。乗り心地も乗用車として通用する。
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ここで注目すべきはエンジンで、もちろん4リッターは余裕しゃくしゃくだが、実は2.7リッターの方が軽くサクサク素直な印象が濃い。過激なオフロードより日常生活での使いやすさを重視するなら、こちらの方がお薦めかも。できれば2.7リッターにも5段ATを組み合わせてほしい。
先代から3列化されたシート(2列仕様もある)は、実質的には5+2。普段は3列目を折り畳んでワゴン的に使うことになりそうだ。だからこそ3列目を床下に平らに収納できるようになったのが嬉しい。ただし、そのための“戸袋”を設けた結果、荷室の床が10cmほど高くなってしまったが。
このように、ほとんど全科目そろって優等生の新型ランクル プラド、「いつでもどこへでも行ける安心感と快適性」という謳い文句は本当だ。最近どんどん先進化するSUV界でも、ここまで充実した電子制御を持つものは欧米の超高級ブランドにも見当たらない。これに対しては、腕に覚えのあるオフロード愛好家から「人間を疎外しすぎだ」との批判もあるが、そんな文句など言われる筋合いではないだろう。だって、プラドの方が人間より上手いんだから。
(文=熊倉重春/写真=荒川正幸)

熊倉 重春
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