ランドローバー・レンジローバー・ヴォーグ5.0 V8スーパーチャージド(4WD/6AT)【海外試乗記】
未だ別格の存在 2009.10.29 試乗記 ランドローバー・レンジローバー・ヴォーグ5.0 V8スーパーチャージド(4WD/6AT)……1554万円
ランドローバーのフラッグシップモデル、「レンジローバー・ヴォーグ」に、本国イギリスで試乗。オフ/オンロードを駆け巡り、リポーターの出した結論は……。
過去最大級の改良を受けた
ロンドンからクルマで2時間。イングランド東部のイースナーにはランドローバー・エクスペリエンスの4輪駆動ドライブトレーニングの本拠地がある。ここで試すことができたのは2010年モデルとしてフェイスリフトを受けた「レンジローバー・ヴォーグ」である。レンジローバーとしてのデビューは2002年。以来、BMW製からジャガー製へとエンジンを変更するなど様々な改良を受けてきたが、7年目での今回の変更は、今まででも最大級のものだ。
エンジンは再び刷新された。今度の心臓はジャガー・ランドローバー共同開発のV型8気筒5リッター直噴ユニット。すでに「ジャガーXK/XF」などに搭載されているこのエンジンは、開発の段階から急角度の状態でのオイル循環テストなどオフロードを意識した設計が為されているという。用意されるのは、最高出力375psの自然吸気と510psのスーパーチャージドの2種類。いずれも大幅な出力向上の一方で、低速トルクの充実による6段ATの早期ロックアップなども相まって、燃料消費量は逆に低減したという高効率パワートレインである。
当然、それにあわせてシャシーにも改良が施されている。標準装備のエアサスペンションには減衰力可変式ダンパーのアダプティブダイナミクスシステムがプラスされ、ブレーキも容量を拡大。テレインレスポンスの制御も見直されているという。
インテリアはより上質に
内外装にも手が入れられた。外装はヘッドランプやサイドターンシグナル、テールランプなどにLEDを多用して、最新のモードを意識させる。ローフォルムに見せる意匠も新鮮だ。しかし目を見張るのは、やはりインテリアだろう。スイッチ類にはクローム華飾が付加され、新形状のステアリングホイールなどとあわせて、上質感を向上。さらに久々登場のオプション「オートバイオグラフィー」ではシートだけでなく天井、ピラー、ドアトリムなど、目につく至るところがレザー張りにされるという具合だ。
メーターパネルが12インチTFT液晶パネルに置き換えられたのも目を見張るポイントである。一見アナログ式に見える計器は、実はすべてコンピューター画像。針が指すあたりだけが明るく強調表示されたり、テレインレスポンスをオフロード用の各モードへと切り換えた時には、速度計が右にずれて中央に4×4インフォメーションが大きく映し出されるなど、凝った演出がなされている。
試乗したのはスーパーチャージド。その走りの世界は、これまでと変わらないレンジローバー・ヴォーグならではの深く濃い味わいに満ちていた。
モノコックボディはきわめて堅牢で、しなやかにストロークするサスペンションが、しっとり重厚な乗り味をもたらす。基本的な性格は変わらないものの、ステアリングの操舵応答性は高まっているようで軽快感が増している。これなどはアダプティブダイナミクスシステムの恩恵も、相当大きいことだろう。
極上の癒しと寛ぎが得られる
世界の見え方は不変と書いたが、当然パフォーマンスは確実に上がっている。特に低速域のトルクとレスポンスが向上したおかげで、発進時や加速の際などのアクセルの踏み込み量が明らかに少なくなっている。右足に軽く力を入れただけでエンジン回転の高まりを待つことなく反応する様は文句無しに心地良く、ジェントルな立ち居振る舞いに繋がってもいる。
賞讃すべきは、圧倒的に動力性能を高めながら、それが走りや乗り心地に粗さをもたらしてはいないということだ。これは簡単にできることではないはず。オフロード性能についても然りで、これほどの動力性能をオンロードで受け止められるシャシーを、悪路走破性を犠牲にすることなく仕立てているのは、さすがというほかない。
それにしても快適なクルマである。ゴツゴツとした岩やぬかるんだ泥、あるいは急な上りに落っこちるような下り勾配を、時に車体を大きく傾け、1ないし2輪を浮かせながら走破していく時も、テレインレスポンスのおかげでドライバーはステアリングの向きさえ気遣っておけば不安を感じることなく、余裕でクリアすることができる。しかも、どんなに傾いたって内装はミシリともいわないのだ。また、後席で2時間を過ごした帰り道も、極上の癒しと寛ぎに満ちていた。どこに座っていても、クルマとともにある時間が至極快適なのだ。
この2010年モデルのレンジローバー・ヴォーグは、端的に言って、持ち前の個性や魅力を格段に引き上げることに成功している。7年前に比べると価格も随分上がっているだけに当然そうでないと困るのだが、実際にそれを納得させるというのは、やはり並じゃない。今もってSUVの中では別格の存在。やはりそう結論づける以外は無さそうである。
(文=島下泰久/写真=ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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