第114回:【Movie】プ、プ、プ、プジョーだらけの町発見!! 大矢アキオ、捨て身の調査員 フランス東部編
2009.10.24 マッキナ あらモーダ!第114回:【Movie】プ、プ、プ、プジョーだらけの町発見!! 大矢アキオ、捨て身の調査員 フランス東部編
♪ととん、豊田は
日本で企業城下町といって、真っ先に思い出すのは愛知県の豊田市である。市内各所にはトヨタに関連するあらゆる施設が点在している。20年近く前のことだが、豊田市ではお祭りの音頭まで「ととん、豊田はくるまの町だ〜」という歌詞で始まるのを知り、ピックリしたのを記憶している。
もちろん欧州にも、自動車産業の街はいくつもある。その代表的なものがフィアットの都・トリノであろう。しかし今日、フィアットの人気モデルである「パンダ」や「500」はポーランドで造られており、トリノで造られる主力モデルは「グランデプント」くらいである。
そもそもイタリアでフィアットグループ各ブランドの市場シェアは、ようやく3割台前半を回復したところだ。参考までに2009年1−9月のシェアはも33.2%にとどまる。トリノといえども、とくに「フィアットばっかり」という印象はない。
次にシュトゥットガルトを見てみよう。ご存知ダイムラーとポルシェの本拠地だ。でもだからといって、街全体がメルセデスとポルシェに占拠されているわけではない。いずれも高級車だから、みんなが乗っているわけないのである。メルセデスの「Sクラス」や「AMG」に関しては、シュトゥットガルトより東京都中央区や世田谷区のほうが多く見かけるといっても過言ではない。
シュトゥットガルトのタクシーには「Eクラス」が多いが、これは初期投資をきちんとし、長年かけて元をとるドライバーが多いからで、シュトゥットガルトに限った話ではない。そういう傾向はドイツ各地でみられる。
おはようからお休みまで
そうした街とは対照的に、フランス東部フランシュ・コンテ地方のソショーおよびモンベリアールは、豊田市に近いものがある。なにしろ街を走っているのが、プジョーばかりなのだ。
種を明かせば、フランシュ・コンテはプジョー創業の地。今日でも隣接するアルザスと合わせて、フランス国内自動車生産の9割を担っているエリアなのだ。
現在プジョーのソショー工場では、SW、CCを含む「308」と「3008」が、ミュールーズ工場では「308」と「206プラス(206のフェイスリフト版)」、そして「シトロエンC4」が製造されている。また、工場のそばにあるプジョーの博物館は、1988年の開館以来今日までに、160万人が訪れているという。
以下は、モンベリアール郊外の街路でボクが15分間計測した、通過プジョーの台数である。
1位:「206」7台
2位:「205」「106」「308」各3台
5位:「607」「405」「306」「307」各2台
9位:「307CC」 1台
やはり、206は大ヒット作であったことが、これからもわかる。
また、欧州全体ではドイツ製高級車を前に苦戦し、なかなか見かける機会が少ない“プレミアムプジョー”「407クーペ」も、一帯では1日に何回か見かける。
とにかくライオンマークのクルマばかり。「おはようからお休みまで、ライオン」などという、くだらんことを口にしてしまったボクである。
次に、同じグループのシトロエンも目立つ。
1位:「サクソ」3台
2位:「ピカソ」2台
3位:「C3」「C4」「ベルランゴ」「エグザンティア」「AX」「ZX」各1台
|
対するルノーは「クリオ」が6台、「トゥインゴ」1台の、たった7台だった。プジョー25台、シトロエン11台の計36台からすると惨敗である。
参考までに、日本車は「スズキ・エスクード」「三菱パジェロ」各1台だった。フランス車が得意としないカテゴリーというのが、その理由であろう。
実際の様子は動画でご覧いただくとして、モンベリアールやソショーで感じるのは、その「エスニック度」だ。ショッピングセンターにはイスラムの宗教習慣にしたがった食品が並んでいる。カーラジオをひねれば、アラブ語専門ラジオ局が飛び込んできた。
今日ヨーロッパの自動車製造が、多くのナショナリティによって支えられていることを実感させられるエリアでもある。
しかし、残念ながら「プジョー音頭」はついぞ聞こえてこなかった。いっそここはひとつ、作曲して売り込む手もありか?「そそそ、ソショーはプジョーの町だ〜」「ぷぷぷ、プジョーはソショーでつくる〜」。いろんな案がありますぜ。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)
【Movie】ほんとうにプジョーだらけ!
(撮影と編集=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
-
第944回:こんな自動車生活は最後かもしれない ―ある修理工場で考えたこと― 2026.1.15 いつもお世話になっている“街のクルマ屋さん”で、「シトロエン・メアリ」をさかなにクルマ談議に花が咲く。そんな生活を楽しめるのも、今が最後かもしれない。クルマを取り巻く環境の変化に感じた一抹の寂しさを、イタリア在住の大矢アキオが語る。
-
第943回:スバルとマツダ、イタリアでの意外なステータス感 2026.1.8 日本では、数ある自動車メーカーのひとつといった感覚のスバルとマツダだが、実はイタリアでは、根強いファンを抱える“ひとつ上のブランド”となっていた! 現地在住の大矢アキオが、イタリアにおけるスバルとマツダのブランド力を語る。
-
第942回:「デメオ劇場」は続いていた! 前ルノーCEOの功績と近況 2025.12.25 長年にわたり欧州の自動車メーカーで辣腕(らつわん)を振るい、2025年9月に高級ブランドグループのCEOに転身したルカ・デメオ氏。読者諸氏のあいだでも親しまれていたであろう重鎮の近況を、ルノー時代の功績とともに、欧州在住の大矢アキオ氏が解説する。
-
第941回:イタルデザインが米企業の傘下に! トリノ激動の一年を振り返る 2025.12.18 デザイン開発会社のイタルデザインが、米IT企業の傘下に! 歴史ある企業やブランドの売却・買収に、フィアットによるミラフィオーリの改修開始と、2025年も大いに揺れ動いたトリノ。“自動車の街”の今と未来を、イタリア在住の大矢アキオが語る。
-
第940回:宮川秀之氏を悼む ―在イタリア日本人の誇るべき先達― 2025.12.11 イタリアを拠点に実業家として活躍し、かのイタルデザインの設立にも貢献した宮川秀之氏が逝去。日本とイタリアの架け橋となり、美しいイタリアンデザインを日本に広めた故人の功績を、イタリア在住の大矢アキオが懐かしい思い出とともに振り返る。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。
