第113回:これが異国版「飛び出すな坊や」だ!
2009.10.17 マッキナ あらモーダ!第113回:これが異国版「飛び出すな坊や」だ!
交通安全看板
「飛び出し小僧」もしくは「飛び出すな坊や」とは、子供に対して車道への飛び出しをやめさせ、かつ運転者に対して注意喚起するための、立て看板を指す。一時期より少なくなったが、皆さんがお住まいの地域にも、通学路に立てられていたりするだろう。
ボクは子供の頃、親が運転するクルマの助手席で、この看板を発見するのが長距離旅行の退屈しのぎだった。
今回は、その「飛び出すな坊や」にまつわるお話である。
皆さんご存知のとおり、ヨーロッパの多くの国では9月が新学期である。それにあわせて、スイスやオーストリアの道端には「交通安全」を促す看板が毎年出現する。スイスでは毎年「学校始まります」という看板が、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4カ国語バージョンで作られ、それぞれ該当地域に掲示される。
たしかにスイスもオーストリアも、国道を走る車のスピードはかなり速い。地形など周辺環境によって若干異なるが、制限速度はスイス80km/h、オーストリアは100km/hである。
にもかかわらずそうした道は、数百年まったく景色が変わっていないような小さな村、つまり「学校あり」のゾーンに突如差しかかる。したがってドライバーには、日本以上に注意が必要なのである。
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海外版を見てわかる「アニメ&歩道橋の国」
さて、本題の「飛び出すな坊や」である。以下はボクが撮影した、オーストリア版「飛び出すな坊や」だ。
写真1は「Bitte, Nicht so schnell(お願いだから速く走らないでね)」というメッセージが入った、名づけてスピードリミッター型である。
最近流行のエアリーな髪形がニクい。また、内田春菊女史筆による東京電力「でんこちゃん」の血縁関係であるとボクは読んでいる。
写真2は「ここで子供が休暇中」というものだ。夏休み中に掲示されるものと思われる。腕の角度ゆえか、シーソーで遊んでいるというよりも、囲碁・将棋の対局をしているようにボクなどは見える。だがドライバーに「子供あり」を示すには、まわりくどい標語よりも明快であることはたしかだ。
続く写真3は「Achtung Kinder(子供注意)」である。子供の表情が、昔の英語教材のようにリアルなところが筆者は大好きだ。そのくせ、2人の体の立ち位置描写がいい加減なのがお愛嬌で、さらに好感が増す。
加えて、寄贈した地元銀行名入りである。日本の国道17号線周辺に貼られた、「飛び出すな坊や」に、寄付者ご芳名が書かれているのと同じで、これまた国境を越えた親近感がある。
いずれも子供の飛び出し注意を警告した看板は、文字+子供の絵と平面的で、日本の「飛び出すな坊や」に比べると躍動感・立体感に乏しい。マンガとアニメの国・日本には、やはり敵わないのかもしれない。
しかしよく観察していると、日本の「飛び出すな坊や」との根本的な違いが判明してくる。それは子供本人に対して「飛び出すな」と注意する看板をほぼ見かけないことである。呼びかけの対象はあくまでもクルマを運転しているドライバーだ。歩行者優先が貫かれている。人よりも自動車を優先させようと、過去に歩道橋を乱造した国との違いを感じざるを得ない。
あの標識を疑え
ちなみに子供と標識といえば、気がつくのは、多くの国々で「学校、幼稚園、保育所等あり」は、大なり小なり同じということだ。
写真5は、すでに紹介したのと同じオーストリアのものだ。厳密には補助標識と合わせて「スクールバス停留所があるので注意」の表示である。日本と違って黄色地でなかったり、こちらの警戒標識のフォームにしたがって形状が三角だったりする。男児は磯野カツオのような学童帽を被っていない。でもそれらを除けば、大なり小なり「子供いますマーク」は同じなのである。
しかしボクは子供の頃から、この標識を見るたび「嘘だ」と思ってきた。なぜなら幼稚園児はともかく、図に描かれているような小学生時代においては、男の子と女の子が手をつないだり、2人きりで通学するなどということは、とてもじゃないけど恥ずかしくてできないからである。
「あれは兄と妹だ」という反論もあろう。だが小学生の頃は、たとえ兄弟であっても男女別に友達と行動することがほとんどである。あの図案を考えた人物は、「異性と手をつなぎたい」という願望があった人に違いない。
そう確信するのは、小学校のフォークダンス練習で、好きな女子に手ではなく、(さも汚いものを扱うように)小指でつながれていたという、苦い小児体験のある筆者である。
(文と写真=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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