ランドローバー・ディスカバリー4 HSE(4WD/6AT)【海外試乗記】
もはやレンジローバー 2009.10.14 試乗記 ランドローバー・ディスカバリー4 HSE(4WD/6AT)……793.0万円
新エンジンの搭載に加え、クオリティを大幅に高めた新型「ディスカバリー」。3代目から4代目へ、その進化の見どころは?
オンロード性能を向上
そもそも「ランドローバー・ディスカバリー」といえば、「レンジローバー」が高級乗用車化・高価格車化を進めていくのに伴って、オフローダーとしては高機能性を保ちながらも、よりカジュアルでリーズナブルというポジショニングで生み出されたモデルである。しかしながら「ヴォーグ」の名がプラスされたレンジローバーが、ここに来てますますプレミアム化を進める中で、ディスカバリーの立ち位置も、また確実に違ったものになってきている。2010年モデルと呼ばれる新型を、スコットランドで試して抱いたのは、走りっぷりも内外装の高級感も、そして価格もではあるが、もはや現行レンジローバーのデビュー当時と同じような位置にあるという確信である。
今回の変更の目玉はパワートレインの刷新だ。新採用のV型8気筒5リッター直噴ユニットは、ジャガーが使っているのと同じもの。元々設計の段階からオフロードでの使用を考慮した設計がなされているという。最高出力は375ps、最大トルクは52.0kgmととても強力。しかし燃費はグッと引き下げられていると謳う。
当然シャシー性能も、それにあわせて底上げされている。特に2010年モデルはオンロード性能の向上を狙ったということで、アンチロールバーやダンパーを固めているほか、ステアリング系、サスペンションジオメトリーも変更。もちろん、それでもオフロード性能を犠牲にしているはずがなく、電子制御のセンター/リアデフやABS、DSCなどをモードに合わせて統合制御して、路面に合った最良の走破性を導き出す自慢のテレインレスポンスは、セッティングがより煮詰められているという。
外観が環境に適応?
では、それを味わってみよう……と思ってクルマに近づいていったら、あるいは最初、その姿を見つけるのは難しいかもしれない。なぜなら新しいディスカバリーは、バンパーやフェンダーなどの黒い樹脂パーツがボディ同色となり、前後のランプ類にLEDが使われるなどして、見た目がグッと高級感を増しているからだ。インテリアも同様。ほぼすべてのパーツが刷新されて、見た目も手触りも、俄然クオリティを高めている。こうして中身も外観も大きく変化したことから、この新型は「ディスカバリー4」を名乗る。それぐらい違うんだと強くアピールするのは、先代には“クオリティ感”への不満が少なからずあり、また昨今の社会情勢下では、ワイルドさを強調したいでたちは環境への攻撃性が高いように受け取る人も居るのだという。いずれも主市場であるアメリカでの話ではあるが。
まず試したオンロードの走りは、狙い通りの仕上がりと感じられた。新エンジンは全域で力強く、どこからでも踏み込めばすぐにトルクが立ち上がる頼もしい感覚を味わえる。しかも回せば、トップエンドまで快音を響かせながら昇りつめる気持ち良さまで兼ね備えているから嬉しくなる。
「4」にふさわしい進化
フットワークにはそれ以上に感心させられた。ステアリングの応答性が確実に高まっており、ロール感も大きく減少している。速い操舵に対してグラッと傾くようなことがなくなり、ワインディングロードすら愉しく走れるようになった。
こうなると心配なのはオフロード性能だが、当然そこは「ランドローバー」である。進化したテレインレスポンスのおかげで、どんな荒れ地も泥濘地も岩場も川の中ですらも、ほとんどクルマに任せっきりで走破できてしまう。ドライバーのすることは新採用の前輪舵角モニターを注視して常に正しい方向にステアリングを向けておくことと、やはり新採用のサラウンドカメラシステムで360度の路面や周辺物の状況をチェックすることくらいと言っても過言ではない。よほど間違ったことをしない限りは、快適な車内にいながらに、大冒険を満喫することができるのだ。
今時のSUVの中では異色と言っていいほどの穏やかな乗り味は健在ながら、オン/オフの両面で走破性を高め、パワーと燃費もともに向上させたディスカバリー4。個人的には前の方が……と思わないでもない内外装も、これまでの佇まいがチープに見えていた人にとっては歓迎だろう。もっとも同時に価格も相応に上がってしまっているわけだが、少なくともその価格なりの期待を裏切ることが無いことは断言できるし、そこにはレンジローバーヴォーグとは異なる、ディスカバリーならではの味わいが濃密にあることも保証しよう。要するに、ディスカバリーは「4」という車名にふさわしい進化を遂げたというわけである。
(文=島下泰久/写真=ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
NEW
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
NEW
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。 -
第343回:おやじ、涅槃で待つ
2026.8.31カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。ちまたでの評判がよく、売れ行き好調の新型「日産キックス」に試乗した。その出来はカーマニアをも満足させる評判どおりのもので、新車購入のきっかけにもなった。え? 購入したのはキックスではない? -
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】
2026.8.31試乗記フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。












