日産スカイラインクロスオーバー370GT FOUR TypeP(4WD/7AT)【ブリーフテスト】
日産スカイラインクロスオーバー370GT FOUR TypeP(4WD/7AT) 2009.10.06 試乗記 ……531万3000円総合評価……★★★★
ファミリーの中で、最もラクシャリーな位置づけにある「スカイラインクロスオーバー」。エレガントに味付けられたという走りと、充実装備の使い勝手を確かめた。
“スカイライン”の名に負けない
北米をはじめ海外向けとしては、「インフィニティEX」の名で2008年秋からすでに販売されているこのクルマ。日本には「スカイラインクロスオーバー」の名で上陸することとなった。海外向けより時間がかかったのは、7段ATの導入を待つなどの事情があったようである。
それにしても思うのは、なんだかんだ言っても、やはりそのブランドのイメージは強力だということだ。セダン、クーペ以外のボディでスカイラインを名乗られると、どうにも違和感が拭えないという部分は、最初は正直なところ結構強かった。
そんなわけで、ステアリングを握る前には『何で敢えてこの名前なんだろう?』という疑問符が浮かばないわけではなかったのだが、実際にはこのスカイラインクロスオーバー、その名前に負けない、いやそれどころか、これこそスカイラインと呼ぶに相応しいクルマに仕上がっていたと言っていい。普段の快適で、そして動力性能の面でも余裕を感じさせる走りっぷりの一方、その奥には確かなスポーツ性も秘めていて、走りの歓びを満喫させてくれる。これは本来、スカイラインが志向してきた方向性のはずだ。
このカテゴリーの中では屈指の艶っぽさを誇るエクステリアにしても、ゴージャス感のあるインテリアにしても同じことが言える。カテゴリー自体が持つ今っぽさも含めてだが、かつてスカイラインが持っていたスペシャルティ的要素が、シリーズ中もっとも色濃く感じられるからである。
価格はセダンよりだいぶ上がっているが、装備はもう他に必要なものが無いくらい充実しているし、同カテゴリーのヨーロッパ車と比べれば、まだまだ安い。ミディアムクラスの輸入SUVを検討している人は、あるいはセダンじゃ落ち着き過ぎだけどクーペはちょっと……というスカイライン党の方も、目を向けてみる価値はありそうだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「スカイライン」をベースとし、「クーペとSUVのクロスオーバー」をコンセプトとして誕生したのが「スカイラインクロスオーバー」。北米や欧州などの海外向けに「インフィニティEX」として販売されていたモデルで、日本での発売は2009年7月から。
すべてのグレードで、バルブ作動角・リフト量連続可変システム「VVEL」採用の3.7リッターV6エンジンに7段ATが組み合わされる。駆動方式はスカイラインセダン同様に、FRのほか、電子制御トルクスプリット四輪駆動システムである「アテーサE-TS」を採用する4WDも用意される。
(グレード概要)
ベーシックグレードのほか、上級装備を追加した「TypeP」が用意され、テスト車は後者。スカイラインシリーズのなかで最もラクシャリーな位置づけとされるため、パワーシートやHDD式のカーウイングスナビゲーションシステムをはじめ、ベーシックグレードにも標準で多くの装備が与えられる。ボディには少々の擦り傷を回復するという、スクラッチシールドが施される。
「TypeP」ではさらに、本革シート、駐車支援装置のアラウンドビューモニターなどを標準装備。運転席ヘッドレスト後部に備わる格納式のコートハンガーも、車格を表現するアイテムの一つだ。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
柔らかな線と面で構成されたインストゥルメントパネルは、試乗車のブラウン内装+本木目フィニッシャーの組み合わせだと、ゴージャスな印象が一層引き立つ。当然ほぼ全面ソフトパッドで覆われているが、しかし素材の質感は今ひとつ。セダンなどと同じくブルーの照明が入ったメーターパネルも、やや子供っぽい。シートを含むレザー部分はステッチ処理されているなど、全体の雰囲気は良いのだから、ディテールにまでもっとこだわってほしいところだ。
装備は充実している。特に安全装備は、エアバッグも前席左右&サイド、カーテンまですべて標準装備だし、このTypePには最新版のアラウンドビューモニターも設定。さらに試乗車は、セーフティシールドパッケージ装着車ということで、車線逸脱防止システムや自動停止まで行うインテリジェントクルーズコントロールも装備されていた。正直なところ、前者はやや反応が敏感過ぎると感じられたし、後者も速度制御の荒さに、もう少し熟成させたいと思ったが、インテリジェントブレーキアシスト等々まで同時に含まれると考えると、価格に対する内容はとても充実している。是非とも検討してほしいオプションである。
(前席)……★★★★
着座位置自体高いだけでなく、インストゥルメントパネルやドアトリムとの相対的な位置関係も上にあるようで、乗り込んですぐにはもう少し座面を下げたいと思いもしたが、乗っているうちに慣れてきた。空間的には余裕だが、デザインとしては適度な囲まれ感を演出しているドアトリム含めた周辺デザイン、身体をすっぽり包み込むシートのおかげだ。セダンには無いリラックス感があり、クロスオーバーとしてはスポーティ。バランスは上々と言える。
TypePはシートだけでなくステアリング調整も電動式とされ、これはポジションメモリーと連動している。これもあると便利さを実感できる装備だ。
よって大きな不満はないのだが、一点だけ。フットレストはセダンのようにしっかりしたものが欲しい。
(後席)……★★★★★
クッションのしっかりしたリアシートは上々の座り心地。セダンと同じで前後長は足元を含めてそれほど大きくはないが、着座位置が高く、頭上にもさらに余裕があるおかげで狭苦しく思うことはない。フロントシートの座面下に爪先がしっかり収まるのも、実際以上に広く感じさせるポイントだ。
後席の居住性の話からは離れるが、TypePの運転席ヘッドレスト背面には格納式のコートハンガーが備わる。普段ハンガーを積んでおくよりスマートで、コレが結構使えそう。こういう細かな配慮が嬉しい。
(荷室)……★★★★★
リアゲートを開けると、バンパーレベルとほぼツライチの高さとなる、フラットな荷室が現れる。重い荷物の積み降ろしもこれならスマートにこなせるはずだ。面白いのはリモコン可倒式リアシート。6:4分割式の後席シートバックを荷室側からスイッチひとつで前倒しでき、荷室もしくは運転席からの操作で倒したシートバックを引き起こすこともできるのだ。アレンジはできるできないだけでなく、しようと思う思わないも大切。これなら面倒はない。
標準装備のトノカバーはグリップ部分がしっかりした金属製となっている。細かなところだが、こうしたディテールへのこだわりは気分を盛り上げる。単にトノカバーを引くだけの動作が、これだけで心地良い。このクルマを選んで良かったという時間になるはずだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
車重は同じエンジンを積むFRのセダンより200kgほど重いものの、3.7リッターという大排気量のトルクフルなエンジンと7段ATのおかげで走りにかったるさはない。しかも引っ張れば7000rpmオーバーまで勢い良く回り切る爽快さも備わっているから走らせるのが愉しくなる。この際のサウンドも悪くない。遮音が行き届いているのだろう。「フェアレディZ」あたりでは気になるガーガーという音が抑えられ、気持ちの良い音だけ耳に届く。
またセダンでは、初期よりだいぶ改善されたとは言えスロットルの初期応答が敏感過ぎる感があるのに対して、こちらは発進から反応が穏やかなのも好印象だ。車重のせいもあるだろうが、やはりセッティング自体違っているはず。元々トルクがあるのだから走りにはこれで何の不満もないし、なによりクルマが一段上質になった感すらある。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
まず好印象なのは乗り心地。スカイラインシリーズの中ではもっともストローク感があって、入力をしなやかにいなす、気持ち良い乗り心地を実現している。見晴しの良さと相まって快適度は高い。
背が高いだけにフットワークも穏やかな味付け。直進安定性を重視したのかステアリングの中立付近の反応はダルに躾けられている。しかし高速道路のレーンチェンジなどでの微舵角の反応の鈍さはかえって、切って、足りないと思ってさらに切って、そうしたら切り過ぎだったので戻して、みたいな運転になりがち。穏やかでも正確にレスポンスはしてほしい。
ワインディングロードでも基本的には安定志向で、そこそこのペースで飛ばすくらいだと、さすがスカイラインがベースらしい爽快な身のこなしを楽しませてくれる。しかし度が過ぎるとアンダーステアは結構大きめだし、深いロールの揺り返しで姿勢を乱す感もある。もう少し懐深いといいとは思うが、乗り心地まで含めたトータルでのバランスは悪くないと言える。気持ちとしては★3.5個分である。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2009年8月28日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2009年型
テスト車の走行距離:4299km
タイヤ:(前)225/55R18(後)同じ(いずれも、ダンロップ SP SPORT 7000)
オプション装備:セーフティシールドパッケージ=16万8000円/サンルーフ+ルーフレール=14万7000円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:297.3km
使用燃料:48.43リッター
参考燃費:6.14km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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