日産スカイラインクロスオーバー370GT Type P/370GT FOUR Type P【試乗速報】
インフィニティよりいい感じ 2009.08.06 試乗記 日産スカイラインクロスオーバー370GT Type P(FR/7AT)/370GT FOUR Type P(4WD/7AT)……489万3000円/531万3000円
日産のビッグネーム「スカイライン」を冠する“背高モデル”が誕生した。クーペとSUVのいいトコ取りを謳うその新型、どんな走りを見せるのか?
日本ノミナサン、コンニチハ。
「スカイラインクロスオーバー」は、クーペとSUVの融合から生まれた、と言うのがメーカーの主張である。SUVの「S」はもともとスポーツを意味する。セダンの「スカイライン」を5ドアハッチバック化し、多少オフロード性も考慮して背を高く、ホイールベースの長さを50mmほど切り詰め運動性能的にも軽やかにした“高性能SUV”として納得できる。
そんな説明はともかく、実体はアメリカ市場向けの「インフィニティEX35」の国内版である。アメリカ本土には、「FX」というさらに大きく魅力的なSUVも存在するが、FXほどのサイズを必要としない堅実なファミリーに向けられたのがEXであり、これが日本の市場にも合うのではないか、という目論見のもとにスカイラインクロスオーバーは登場した。
実車を目のあたりにすると、ルーフレール込みで全高1.6mの体躯から大きなクルマという印象を受ける。
しかし、ひとまわりしてみると、幅1.8mと長さ4.63mの寸法の割には、むしろコンパクトだとも感じる。特にこのクルマのチャームポイントである斜め後方からの造形には、短いオーバーハングも手伝って、ハッチバック特有の軽快さが感じられる。逆に長いノーズはややクラシックな趣きで、見た目のバランスは重い。
速くて快適、“ニッポン仕様”
1年ほど前、目敏く並行輸入されたEX35に試乗するチャンスを得たが、サイズを感じさせない機敏な動きが好印象として残っている。
アメリカ市場向けの3.5リッターV6から、日本仕様では排気量を増して3.7リッターとなり、ハイオクガスで330psのパワーと36.8kgmのトルクを発生する。さらに5段ATは7段ATとなり、スムーズでパワフルな動力性能を約束する。実際、公道試乗では無闇にフルスロットルは与えられず、すべては低回転の静かなレンジで進行するのだが、軽く踏んでもめっぽう速い(!)のは、たしかだ。
「EX35」のワイドレシオな5段ATも、段差のあるシフトショックそのものが豪快で乱暴な(?)アメリカ人好みといった感じで、そのGを緩和してくれたトルコンスリップのフィーリングもまた懐かしい。が、スカイラインクロスオーバーの7段ATではローギア以外はフルロックアップされるから、そんな感覚は皆無なのだ。
すべてはエコを指向してのことだろう。現代の流儀では、電制スロットルがエンジン回転を合わせてくれるから、音の変化でエンジンブレーキやシフトアップを実感する。よって繋がりはスムーズながら、タイムラグ的な部分ではダイレクト感覚を緩める。しかしスロットルのオン/オフなど、微妙な操作からはトルコンのズルズル滑っているダルな感覚は伺われない。
洗練という言葉とともに、クルマに“乗せられてしまっている”感覚に諦めの気持ちも浮かんでくるが、これはこれで快適にして快感ではある。
EX35からクロスオーバーになって、飛躍的に改善されたのは乗り心地だ。
重量級らしく、路面に対して平行移動する感覚、いわゆるフラット感は良好。ボディの姿勢変化は少ない。大きくうねった路面でも煽られないし、細かな荒れも55タイヤのハイトが吸収してくれる。またオールシーズンタイヤゆえに踏面の当たりもソフトで、ザラザラした路面でも接地感は悪くない。
ドライな高ミュー路面でのグリップ感は、絶対的に期待を上まわるものではないものの、接地荷重が大きいから、唐突にグリップを失うことはなさそうだ。4WDなら、なお生かせる長所だろう。
その4WDシステムは、「日産GT-R」などにも使われている、後輪のスリップ分を前輪に電子制御で分配する方式で、いわゆるセンターデフ付きのフルタイム4WDではない。だから低ミュー路などでパワーを与えると、一瞬だが後輪のスリップを許してから前輪にトルクがかかる。価格なりに期待される洗練されたマナーなども考慮すると、そろそろ次の段階へすすむことを希望したい。
見かけによらない身のこなし
操縦安定性は素直で手堅くまとめられている。見た目の重心高はそれなりに高めながら、実際にはセダンとそれほど変わらないようで、ロールも荷重移動も普通に発生する。
しかし、その身のこなしは操舵に対して予測可能なものであり、その荷重変化に応じて、タイヤがグリップ力を増してゆく様子を知る手掛かりとなる。このパワーステアリングの操舵感は日産車の中でも最良のもののひとつといえる。またオーバーハングを切り詰めた効果は、この手の大柄なクルマに似合わず、タイトなコーナーの連続でも、ボディ慣性を持て余すことは少ない。
このヨー方向の動きの身軽さや、動力性能の活発さに比べ、ブレーキ性能は惜しいところ。車重に対してももう少し余裕があってもいい。
EX35での懸案事項だったリアシートの居住性は改善されている。懸案事項というとやや大袈裟かもしれないが、前席を一杯に下げると後席は足の膝がシートバックに触れるほどだった座面は、先端のデザインが丸味をもったものから直線的なものに変更されて、スペースが増した。アメリカ仕様はまったく前席優先で、後席はジャケット置き場か犬の住みかのようになってしまうこともあったが、日本仕様はそこまで前席のスペースが要求されないからか、スライド量自体少ない。リアシートを折り畳んだり、引き出したりする作業を、トランクからスイッチ一つで行えるのも便利な機能だ。
ボクシーなワゴンボディが主体だったSUV市場も、「ボルボXC60」や「BMW X6」などの登場で、スタイリッシュなモデルが注目を浴びる今日このごろ。スカイラインクロスオーバーも時流に乗る1台か。このクルマの目標販売台数は月間200台が予定されている。
(文=笹目二朗/写真=荒川正幸)

笹目 二朗
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