レクサスHS250h“バージョンS”(FF/CVT)【ブリーフテスト】
レクサスHS250h“バージョンS”(FF/CVT) 2009.09.24 試乗記 ……463万7200円総合評価……★★★★
発売1ヵ月で約1万台の受注が伝えられるなど、販売好調な「レクサスHS250h」。レクサスの、そしてハイブリッドならではの走りとはどういうものなのか?
燃費だけではない魅力
レクサス初のハイブリッド専用車としてデビューした「HS250h」のパワートレインは、2.4リッターエンジンと電気モーターの組み合わせである。5リッターエンジンの「LS600h」、3.5リッターの「GS/RX450h」と比べると、ハイブリッド化による数字の上乗せはずいぶん控えめだが、それこそがHS250hの狙いを端的に示していると言えるだろう。パワーと燃費のバランスが、より燃費の方に振れたということだ。
しかもこのHSはレクサス初のFFセダンでもある。プラットフォームはプリウスと共通。そうなると気がかりは、その走りがレクサスの名に相応しい仕上がりになっているかということだが、結論から言えば心配は杞憂であった。
同クラスにISも存在していることもあり、またそうした諸々の条件も作用しているのだろう。スポーティさよりエコが優先され、居住性やパッケージングが重視されたこのHS250hは、かえって素直に行き届いたもてなし、上質で口当たりの良い走りっぷりといった、好ましいレクサスらしさが表現できている感がある。
ハイブリッドだけに燃費も、10・15モードでヴィッツすら上回る23.0km/リッターを達成するなどきわめて優秀だが、HSの魅力はそれだけではない。ハイブリッドにしかできないその走りの上質感こそ、実はなによりの果実だと言えるのではないだろうか。
正直に言えば、このスタイリングはちょっとね……とは思う。しかしそれすらもCd値0.27という優秀な空力性能と、高効率なパッケージングを考えれば、まあ納得するほかない。そもそも今はカッコ良いということ、スタイリッシュだということの概念が急速にシフトしている時代だ。HS250hの絶好調なセールス、それらすべてを勘案すれば、何の不思議も無いというのが偽らざる実感である。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2009年7月にデビューした、レクサス初のハイブリッド専用車が「レクサスHS250h」。「IS」と同じくDセグメントセダンであるが、こちらはFFのレイアウトを採用する。パワートレインは、2.4リッター4気筒ガソリンエンジン(150ps/6000rpm、19.1kgm/4400rpm)に、143ps、27.5kgmを発生するモーターを組み合わせたもの。自慢の燃費は、10・15モードで23.0km/リッター。395.0万円からという価格もセールスポイントとなる。
(グレード概要)
パワートレインは1種のみだが、装備の違いにより、ベース車から「バージョンL」まで4つのグレードが用意される。テスト車はスポーティグレードの「バージョンS」。専用にチューニングされたパフォーマンスサスペンションを装備し、標準の1インチアップとなる18インチタイヤを装着。さらに、前後スポイラーや専用フロントグリルなど、エクステリアでも個性が主張される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ナビゲーションシステムなどの操作を手元のコントローラーで行なうことができるリモートタッチの採用で液晶モニターを手の届く位置に置く必要がなくなり、インストゥルメントパネルのレイアウトは格段に自由度が高まっている。メーターフードやセンタークラスター両脇にあしらわれたステッチ入りのレザーパッドも効果的で、インテリアは新鮮な雰囲気だ。
ダッシュボード下半分からセンタートンネルあたりに高級感のないハード樹脂が使われていることや、そこに設えられた12V/120W電源やUSB/AUX端子の蓋の見栄えなど、抜く部分は露骨なほど抜かれていたりもする。それでも、レクサスのインテリアがようやく独自の個性そして魅力を持ち始めたのはたしかだろう。
ナビゲーション画面から切り替えて表示するエコ情報の中には、従来の毎分燃費やハイブリッドシステムモニターのほかに、自分の運転のエコ度を測定してくれる「ハーモニアスドライビングナビゲーター」も用意されている。しかしこの画面、肝心なエコドライブのための情報が不足気味で、あまり使えない。メーターナセル内のマルチインフォメーションディスプレイとあわせて、表示内容についてはもう少し吟味してほしい。地図を見ながら各種エコ情報も見たいとなれば、目指すべきは、やはりプリウスのような方向だろうか。
(前席)……★★★★
キャブフォワードフォルムによってAピラーを前出ししている上に着座位置も高いおかげで、眼前の開放感は上々。頭上や側方にも十分な余裕がある。居心地はなかなかのものだ。そのピラーの形状のせいで左前方がやや見づらく感じられるが、それでも多くのミニバンよりはずいぶんましというものだ。
居住性には大いに貢献している高めの全高だが、走りの面ではそれによるネガを感じさせないよう十分配慮されている。たとえばシートはしっかりしたサイドサポートを持つだけでなく、座面も左右端のクッションが微妙に硬めとされて、ロール時の身体の動きをやんわり規制していたりする。試乗車はレザーシートを装着していたが、標準のファブリックの方は、さらにしなやかである。
8ウェイパワーシートは運転席だけでなく助手席にも装備されている。同乗者の快適性を考えても、こうした心遣いは嬉しい。
(後席)……★★★★★
広大な室内空間の恩恵をフルに感じられるのが後席だ。ルーフが高いおかげで頭上には大きな余裕があるし、センタートンネルの無いフラットな足下フロアは前後方向にも広々としている。しかも前席はシートバックを大きくえぐったような形状となっているため、膝まわりにも余裕で足を組めるほどの空間が確保されているという具合だ。
前席に比べて一段高めとされた着座位置、広いガラスエリアなどのおかげで視界は開けているし、後席用のエアコン吹き出し口もある。乗せてもらう空間としてはほぼ文句無しと言っていい。
ただし、後席サイドエアバッグとプリテンショナー、フォースリミッター付きの後席ELR3点シートベルトは「バージョンL」以外はオプション。たった3万450円也の装備である。プレミアムカーなら標準装備にすべきだったのでは?
(荷室)……★★★★
従来のレクサスハイブリッドの弱点が、バッテリーに浸食されたトランクスペースの狭さだった。しかしHSは基本がFFレイアウトということもあり、ここにも十分な空間を確保することができている。
ホイールハウス部分が盛り上がった形状は使いやすいとは言えないし、トランクスルーも無い。ネットフックなども充実させてほしいところではある。しかし天井部分までしっかりカーペット張りとされるなど、レクサスらしい作り込みの良さは感じられるし、開口部も十分大きい。なにより9.5インチサイズのゴルフバッグ4個を収納可能となれば、日常使用で不満が出ることはほとんど無いのではないだろうか。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
高膨張比のアトキンソンサイクルを採用しているとはいえ、排気量は2.4リッターあり、電気モーターを含めたシステム出力は190psにも達するだけに、動力性能は十分なレベルにある。車名のとおり力強さを前面に打ち出したキャラクターではないが、少なくともハイブリッドだからといって、ガマンは不要。普段はECOモードのままでも痛痒を覚えることはないし、PWRモードにすれば積極的に「速い」という言葉を使えるくらいのダッシュを見せつける。
しかも単純に動力性能に不満が無いだけでなく、電気モーター特有の図太い低速トルクのおかげで出足から走りはスムーズだし、その後の加速はシームレスなのだ。この走りの上質感はHSの大きな武器である。当たり前だが燃費だって悪くない。しかしその燃費が無かったとしても、プレミアムカーとしての魅力を感じられるパワートレインだと言っていいだろう。
惜しむらくは走行中のインバーターの音。電車が走り出す時のようなあの音はもう少し抑えたい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
レクサス初のFF車であり、しかもバッテリーという重荷を背負うハイブリッドだけに、事前にはそれほど期待していたわけではないフットワーク。しかし実際にはこのHS、レクサスの名に恥じない乗り味をしっかり味わわせてくれる。
まず好印象なのはステアリングフィールの良さ。反応自体も正確で、狙ったラインにすんなり乗せることができる。旋回中の前後バランスも悪くないし、上屋の動きも落ち着いていて背の高さを特に意識させられることもない。
このHS、プラットフォームはプリウスと共通とされるが、実際にはリアサスペンションはダブルウィッシュボーン式とされているし、ボディ剛性も徹底的に高められているという。その走りの質の高さは、限られた条件の中でベストを追求したこれらの施策が奏効したものだろう。
ただしHSの中でも唯一、テスト車の「バージョンS」だけは★ひとつ減点としたい。バルブ径を変えて単に硬くしただけのダンパーは本来のしなやかさをスポイルしており、ちょっとでも舗装が荒れているとすぐにヒョコヒョコとした安っぽい動きを見せる。こうしたスポーティバージョン的なものも営業面からは求められるのかもしれないが、ちょっともったいない気がした。
さらにもう一点。それこそプリウスと変わらないブレーキの効きとタッチも、まだまだ改善の余地ありとしたい。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2009年8月28日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2009年型
テスト車の走行距離:4318km
タイヤ:(前)225/45R18(後)同じ(いずれも、ダンロップ SP SPORT01)
オプション装備:専用本革シート(ヒーター付き)=22万5750円/プリクラッシュセーフティシステム+レーダークルーズコントロール=14万7000円/後席SRSサイドエアバッグ+後席ELR3点式シートベルト=3万450円/ワイドビューフロントモニター+クリアランスソナー=8万4000円/リモートタッチ英語表記=0円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(4):山岳路(2)
テスト距離:311.8km
使用燃料:26.83リッター
参考燃費:11.6km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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