レクサスHS250h“バージョンL”(FF/CVT)【試乗記】
プリウスとは、はっきり違う 2009.08.10 試乗記 レクサスHS250h“バージョンL”(FF/CVT)……570万8050円
レクサス初のハイブリッド専用車として登場した「HS250h」。価格395.0万円からの高級ハイブリッドセダンは、「プリウス」と比べてどうなのか? 第一印象をお届けする。
組み合わせの妙
レクサスHS250hは、「プリウスに続くトヨタ2車種目のハイブリッド専用車」であると同時に、レクサスとしては「IS」とならぶDセグメントセダンだ。HSとISは価格もごく近い。レクサスのハイブリッド命名法からもわかるように、HS250hの動力性能は「ガソリンエンジン2.5リッター相当」である。ハイブリッド専用車と純エンジン専用車という違いがあるとはいっても、似たようなサイズと動力性能のセダンが同じショールームに2台もならぶことに日本人のわれわれは違和感がなくはない……のだが、考えてみれば北米のレクサスにはひとつ上のクラスでも以前から「GS」と「ES」(かつて日本でウィンダムだったアレ)があるわけで、アメリカ人の目から見れば奇策というほどでもないか。
ご存じのかたも多いかと思うが、ホイールベース2.7mのエンジン横置きFF……というHS250hのプラットフォームは「プリウス」と深い血縁関係にある。ただし、リアサスがダブルウィッシュボーンとなるのは、今のところレクサスHS専用。プリウスが「オーリス」由来ならHSは「ブレイド」由来。また2.4リッターエンジンが核となる動力システムはすでに北米で発売済みのカムリハイブリッドと基本的に同じで、今話題のプリウスと比較すると、エンジンのみならずモーターもバッテリーもエンジンにあわせて強化されている。
プラットフォームはCセグメント派生、しかもDセグとしては短めのホイールベースに全高1.5mオーバーという最近ではちょい珍しい背高パッケージ……で、少なくとも高級セダンとしての乗り味や質感についてはあまり期待していなかった私(失礼!)だが、結論をいうと、その方面でのトヨタの仕事っぷりは見事だった。
高級車になっている
ハイブリッドならではの静かさや、リアに大型ニッケル水素バッテリーを積む前後バランスの良さもあるのだろうが、このサスペンションの滑らかな動きには、専用ダンパーとあえて非エコタイプを選んだタイヤが、そして重心の高さをうまく相殺したハンドリングには、リアのダブルウィッシュボーンが、きちんと効果を発揮している感じ。あと、市街地レベルの速度域だと、1.6トン半ばの重めのウエイトも「重厚感」という意味ではプラスに作用している。
この種の高級Dセグといえば、BMWコンプレックス(?)なのかやけにスポーティ路線に走るケースが多いが、「ISとの差別化もあるし、FFベースだし、だいたいハイブリッドだし……」という割り切りなのか、このHSははっきりと、表面的なスタイルより室内の広さ、そして俊敏さより穏やかな乗り心地を優先している。「LSの弟分としてどちらがそれっぽいか?」と問われれば、断然、ISよりHSである。
また、独特のミニバン風パッケージとあって「安っぽい」というツッコミの可能性も強く意識したのか、センターコンソールの縁やメーターナセルにステッチ入りのレザーを配するなど、工夫の跡はそこかしこに見られる。この方面では横綱の「アウディA4」、あるいは国産では最大のライバルである「スカイライン」なみ……とまではいわないが、インテリア全体に漂う高級感は、すでに古さを感じさせつつあるISを確実に凌駕していて、「メルセデスCクラス」と同等くらいには高級だ。
燃費以外の価値
短い時間での試乗に限られた今回は、皆さんにご報告できるような燃費性能の確認はできなかった。トヨタ社内基準における日本での実用燃費は15〜16km/リッターというから、プリウスの3割落ちくらいと考えればいい。だから「レクサス版プリウス!?」などとあまり期待しすぎると肩透かしを食らうだろう。
HS250hはそういう目で選ぶべきクルマではない。燃費でプリウスより3割劣るかわりに、HSにはプリウスよりはっきりと強力な動力性能と重厚で滑らかな乗り心地がある。プリウスより200万円以上も高い価格は、コストのかかったインテリア、ショーファーカーとしても十分な広さと健康的な着座姿勢の後席空間、そしてもちろん「レクサス」という名前とサービスへの対価と考えるべきである
それにしても、プリウスというのは罪つくりなクルマである。どんなクルマであっても、プリウスという怪物と比較したとたん、このように無味乾燥で冷めた見方になってしまう。しかし、HS250hの燃費は同クラスの2.5リッター級と比較すると平均して5割(!)くらいは優秀だし、しかも燃料はレギュラー指定。昨今のエコカー減税も含めれば、高級Dセグメントのライバルたちに対する経済性の優位は絶大だ。プリウスより先に発売されていれば、あるいは今回のバカみたいな景気後退がなければ、HS250hだって十二分に衝撃作となったはずなのに。
(文=佐野弘宗/写真=菊池貴之)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。


































