ルノー・カングー 1.6(FF/4AT)【試乗速報】
太っても魅力的! 2009.09.09 試乗記 ルノー・カングー 1.6(FF/4AT)……233万7800円
欧州デビューから2年を経て、新型「ルノー・カングー」が上陸した。日本でも人気のフランス製トールワゴンは、どんなクルマに生まれ変わったのか? その素顔をリポートする。
絶対にお買い得
「ルノー・カングー」が、新型に切り替わった。価格はATで229万8000円、MTなら219万8000円と、旧型とほとんど変わらずに、内容は一層の進歩を遂げているから、実質的な値下げとも受け取れる。今の時代、この新型カングーほどお買い得感のあるクルマもなかろう。
カングーは、元はといえば商用車。鉄板むきだしの内装など、見た目には比較的質素な造りながら、そこはフランス車ならではの魅力に満ち溢れている。いっぱい積めて、たくさん乗れて、元気に走り、乗り心地もいい、そして安いとなれば、特に“横文字職業”の識者などが注目しないわけはない。
実際、カングーはルノー・ジャポンにとってドル箱的な存在で、年間販売量の約半数を占めることからも、その人気のほどがうかがえる。最近めっきり少なくなったMT仕様を備えることも、ヨーロッパ車本来の元気な走りを味わえる要素だ。そのMTは全体の2割に相当するという。
カングーはそんな商品特性を踏まえて、さらなる進化を遂げた。
個性的な外観はイメージを大きく変えないまま、ひとまわり以上も大きくなった。全長こそ4215mmとさほど伸びてはいないものの、全幅は1830mmと大幅に拡大され、今までの5ナンバーサイズから堂々たる3ナンバーサイズになった。これは功罪相半ばするが、“大で小を兼ねたい”人には福音だろう。
当然ホイールベースもトレッドも広くなったが、ステアリング切れ角が増やされて、回転半径は逆に5.1mと小さくなった。Uターンの際の、意外性が嬉しい。
トラックから乗用車へ
なかでも、乗り心地や快適性が改善されたことは、大きなポイントだ。これまでの乗り心地たるや、やはりどこかトラック的で、特に後席のそれははっきりと硬めだった。新型はフラットな姿勢を保ったまま。凹凸から受けるショックはソフトで、大きなホイールストロークで効果的に吸収してゆく。
特別大きな突き上げを受ける際のボトミング特性で言うならば、ルノー車は世界一のレベルにあり、いっぽう軽荷重時でも悪化しないのがいいところだ。このあたり、まさにフランス車の本領発揮といえる。
シートも良くなった。平板に見える座面も、座ってみれば、ちゃんと後傾斜角が与えられており、上体の重さは適度に背面に分担される。サイドサポートの盛り上がりはやや少なめながら、効果的に横Gに対応する。折り畳めるリアシートもサイズアップされ、ホイールベースを延長したおかげで空間も広くなり、はるかに乗用車的になった。
ルノーの美点である、ヘッドレストの下開き型調整機構が無いのは残念だが……とにかく快適性は大幅に向上している。
そのうえで、ロールはよく抑えられ、操縦安定性は楽しめるレベル。スプリングやスタビライザーを固めることなく、ロールセンター高を確保するなどジオメトリーで対処するのはルノーの伝統だ。乗り心地が犠牲にされることはないし、コーナーでも速度を落とさないで済む。高めに座る視界のよさも味方して、その気になれば、スポーツカー顔負けの旋回能力を見せる。
欠点補うマニュアルモデル
新しい電動モーターアシストのパワーステアリングも、メガーヌで採用されて以来年々フィーリングを向上させており、ここにきてややアシスト量を抑えたせいで“厭味”はほとんど無くなった。もしもさらなる路面感覚や反力感を求めるならば、現在はゼロに近いスクラブ半径を考慮し、あと5mm位オフセットの小さなホイールを探すといいだろう。
動力性能そのものは、1.6リッターというエンジン排気量なりのもの。車重は旧型より260kg増しの1460kgもあるし、ATは4段だから、登り坂がキツい。ただ、これもMTで乗るならば問題はなかろう。
3リッターを超える日本車のミニバンなどに慣れた人は、2000rpm以下でトロトロ転がす感覚が身についてしまい、エンジン本来の使い方である高回転まで回して使う楽しみを忘れているかもしれない。ヨーロッパ車本来の魅力は、エンジンを回して使うことにある。そして、安心してブン回せるのもフランス製エンジンの特徴なのだ。
「回すと燃費が悪くなるのでは……?」と心配する人もまた、大排気量車に毒されている。カングーで回しても燃費がことさら悪化しないのは、排気量が絶対的に小さいことが奏功しているのだ。
「カングーと一緒なら毎日が新鮮」――そんなキャッチコピーを掲げる、新型カングー。日本車の同類と変わらない低価格は、輸入車のエントリーカーとしても最適。マンネリ化した日常から脱却したい人だけでなく、旧型カングーのオーナーも、一度は実車を見てみることをお勧めしたい。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)

笹目 二朗
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