メルセデス・ベンツE350クーペ(FR/7AT)/E550クーペ(FR/7AT)【試乗速報】
カッコが大事 2009.08.18 試乗記 E350クーペ(FR/7AT)/E550クーペ(FR/7AT)……890.0万円/1095.0万円
メルセデスのラインナップに新しく加わった、2ドア4シーター「Eクラスクーペ」に下野康史が試乗。スタイリッシュなボディに秘めた、その実力は?
CLKの後継車
普通の勤め人が買ういちばん大きなメルセデスが、「Eクラス」だろう。普通のクルマ好きが買ういちばん大きなメルセデス、といってもいいかもしれない。「Sクラス」を買う人たちは、クルマ以外のもっと別の何かを買っているような気がする。
Eクラスにクーペが登場した。ミディアム・メルセデスがEクラスを名乗るようになって、今度の新型が3代目だが、Eクラスのクーペは事実上これが初めてである。
名車の誉れ高いW124(1985〜95年)にはあっさりした2ドアモデルがあったが、その後、コンパクト/ミディアム級メルセデスのクーペは、1996年から始まる「Cクラス」ベースの「CLK」が務めていた。今回の初代「Eクラスクーペ」は、2代続いたCLKの後継モデルでもある。
グレードは2つ
最初に乗ったのは、高いほうのE550クーペ。1095万円と、スーパーなお値段である。E550セダンと同じ5.5リッターV8も387psというスーパーなパワーを誇るが、コンパクトなプラットフォーム(車台)を使うクーペの長所はセダンより軽量なことだ。E550クーペの場合、なんと140kgも軽い。つまり、Eクラスのクーペはセダンよりパワーウェイトレシオにすぐれている。E550クーペも最初から“AMGいらず”みたいな動力性能である。
E550クーペには“ダイナミックハンドリングパッケージ”が標準装備される。ノーマルモードだと、荒れた舗装路でタイヤがややバタつくが、スポーツモードにすると、足まわりはギュッと締まり、乗り心地も重厚さを増す。ワインディングロードを飛ばしてみると、メルセデスにしてはESP(アンチスピン制御)が早めに介入するような気がしたが、高級クーペということでわざと心配性の味つけにしているのだろうか。
次に乗ったのは、E350クーペ(860万円)。販売のメインになると思われる3.5リッターV6モデルである。
E550のあとに乗ると、さすがに速さのインパクトは薄いが、272psのこちらだってもちろんパワーは十分以上だ。1670kgの車重はE350セダンより40kg軽い。
ブラック一色だったE550クーペの内装に対して、E350のインテリアは明るかった。というか、センターピラーがないために、クーペはもともと採光にすぐれている。
セダンは7段ATの電気セレクターがステアリングコラムに付いているが、クーペは通常のフロアシフトである。もう子どもを乗せる必要がない熟年カップルなどが乗ることを考えると、一般的なフロアシフトのほうが使いやすいはずだ。
クーペの魅力は
短時間の試乗だったが、ひとつ気になったのは、乗り心地がセダンほどよくないことである。スポーティな味つけを基本としているのだろうが、デコボコを突破しても、サスペンションがそのショックを呑み込んでしまうような“メルセデス・ライド”がクーペには不足している。いわゆる“フラットさ”がないのだ。
補強材を入れているとはいえ、センターピラーレスによるボディ剛性の低下も、ゼロとはいえないだろう。メルセデスの高級クーペなら、もう少し乗り心地に落ち着きがあってほしい。
だから、セダンに対するクーペの魅力は何かと考えると、やはりこのスタイリングかなと個人的には思う。
センターピラーを持たない上屋の、弧を描くルーフラインがきれいだ。1950年代メルセデスのデザインアイコンを受け継ぐリアフェンダーのふくらみも、セダンボディで見るよりくっきり際立って見える。フロントグリル真ん中に特大スリーポインテッドスターを配した2枚スリットのクーペ顔は、4枚スリットのセダンよりすっきりしている。今度のEクラスセダンは全体にちょっとオーバーデザインに見えたから、クーペは溜飲が下がった。しかも、カッコだけでなく、量産車世界最良の0.24というCd値を誇るのだ。ディーラーのショールームを出てきたお客さんに「カッコイイからクーペにしちゃった」と言わせたら、クーペは勝ちである。
(文=下野康史/写真=峰昌宏)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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