メルセデス・ベンツE300クーペ スポーツ(FR/9AT)
本家本元クーペ 2017.07.15 試乗記 今や4ドア車やSUVにもクーペを展開するメルセデス・ベンツだが、“メルセデスのクーペ”といえば昔からこれ、やはり「Eクラス クーペ」にとどめを刺す。中間的なグレード「E300クーペ スポーツ」に試乗し、本家本元の実力を探った。大型化してフル4シーターに
近頃はそれこそ毎月のようにメルセデスのニューモデルが、しかもハッチバックもSUVもほぼすべて巨大なグリルスターが輝く“クーペ顔”と流れるようなルーフラインを身に着けて登場するせいで何だか見慣れてしまったような気になっているが、これが本当のメルセデスクーペである。高級実用車の象徴のように見なされてきたメルセデスだが、昔から常にクーペをラインナップしてきたのはご存じの通り。粋でエレガントで、そしてもちろん高性能なクーペこそ、高級車メーカーには欠かせないものだからである。クーペももともと馬車発祥のボディースタイルだが、カンパニーカー制度が普及しているヨーロッパでは、クーペは会社から貸与されている車ではなく(「ポルシェ911」を選べる会社もあるらしいが普通はセダン)、パーソナルな車に乗っているとの主張になるという側面もある。
昨年夏に「Eクラス」としては5代目のセダンが国内導入され、年末にはステーションワゴンが新世代に切り替わったとくればその次はクーペである。この5月末に国内発売されたのがメルセデス・ベンツの主力ミディアムクラスたるEクラスのクーペ、2リッター4気筒直噴ターボを積む「E200」と同「スポーツ」、および「E300クーペ スポーツ」に3リッターV6ツインターボを積む「E400 4MATICクーペ スポーツ」の4車種が現在の日本仕様ラインナップである。
新型Eクラス クーペはEクラスのセダンがベースだ。当たり前だろうと思われるかもしれないが、実は先代は「Cクラス」ベースだったので全長は4745mm、ホイールベースは2760mm、それに対して新型の全長は4855mm、ホイールベースは2875mm、現行「Eクラス セダン」の4930mmと2940mmには及ばないが、それぞれ10cm以上伸びている。後席のレッグルームは従来型より74mm増えたとうたっているが、それも当然というわけだ。
本当に使えるリアシート
堂々としたサイズを伸びやかに生かしたいかにも優雅なクーペスタイルの側面には、細い三日月のようなサイドウィンドウグラフィックが切り欠かれており、パーソナルな雰囲気を漂わせる。最近は低く速そうなデザインに魅力を感じない若者も多いというが、昭和世代のオヤジには訴えかけるものがある。リアシートは2名分だが、いわゆる「+2」のシートではなくセダンに劣らぬスペースを持つ。フロントだけでなくリアウィンドウガラスも全部下がり切るが、ピラーレスとはいえそもそも天地に薄いのでリアシートの住人にとってはいささかルーミーさには欠けるが、いったん乗り込んでしまえばきわめて居心地の良い後席だ。身長178cmの私には天井の余裕はほとんどないが、シート形状も考えられており、ゆったりとした自然な姿勢で座っていることができる。長時間乗ってもまったく苦痛ではないリアシートだ。
ちなみに、ほとんど同じホイールベース(2870mm)を持つ「レクサスLC500」の場合、後席は大人がまともに座れるものではない。レッグルームも頭上のスペースも足りず、というより大人(たぶん身長165cm以上の方)は天井(ガラス)に頭がつかえてしまうから、顔を上げることができない。そんな割り切りがあるからこそのスタイルである。
インストゥルメントパネルはセダン同様、横長のスクリーンが2枚続きになったフルデジタル式、ギラリと光るエアアウトレットがジェットエンジンのタービンをモチーフにしたという専用品に変わっているのが特徴だ。左足側のセンタートンネルの張り出しがセダンよりも若干気になるが、それ以外はもう「Sクラス」並みと言ってもいいクオリティーだ。
文句ない速さと優雅さ
日本仕様のエンジンラインナップは2リッター直4直噴ターボと3リッターV6直噴ツインターボだが、2リッター版は出力が異なる2種類が用意されている。E200クーペとE200クーペ スポーツはセダン同様184ps(135kW)/5500rpmと300Nm(30.6kgm)/1200-4000rpmを発生するユニットで、245ps(180kW)/5500rpmと370Nm(37.7kgm)/1300-4000rpmを生み出す高性能仕様はE300クーペ スポーツ用。さらにV6ツインターボ(333ps、480Nm)はE400 4MATICスポーツに搭載される。変速機は全車9Gトロニックである。
E300クーペ スポーツの0-100km/h加速は6.4秒というから(欧州仕様)、文句のない速さと実用域の扱いやすさを併せ持つ。車重は1760kgだが、常に必要なだけの瞬発力が、きわめて滑らかに手に入る。ほんの少しだけ回転フィーリングがざらつくトップエンドまで回さない限り、このエンジンが4気筒であることを意識することはないだろう。それにしてもセダンで人気のブルーテック・ディーゼルターボ仕様をラインナップしないのはいささか残念、考え方が古いという気がしないでもない。
不整路でビックリ
滑らかで洗練されたパワートレインと艶(なま)めかしささえ感じるインテリアのおかげで、まったりとした安楽さに包まれていた体がいっぺんに揺り起こされたのは道路の段差や舗装が剥がれたような箇所を越えた時である。予想外のガツンと強烈な突き上げに見舞われた。まるで底づきしたようなショックである。「スポーツ」になるともれなくAMGスタイリングパッケージ(フロントスポイラー+サイド&リアスカート)や19インチAMGホイールなどが装着され、見た目はAMG仕様となるのだが、サスペンションそのものもハードな仕様になっているのかと疑った。標準装備のランフラットタイヤ(ミシュラン・プライマシー3 ZP MOE)が乗り心地に不利なことは事実だけれど、平滑な路面では気にならず、はっきりとした凸凹を越える大入力の際だけ衝撃を感じるのはタイヤのせいではない。
E200とE300にはメルセデスが「アジリティコントロール」と呼ぶサスペンションが備わっている。オイル流路を変えることで減衰力を2段階に切り替えるメカニカルな可変ダンパーだが、CクラスやEクラス セダンではこれほどのショックを感じたことはないから何とも不思議である。
こうなるとしなやかで融通無碍(むげ)なエアボディーコントロールサスペンション装備のE400に心が動くが、あちらは自動的に4MATICとなり本体価格1037万円、同じく835万円のE300とはかなりの価格差がある。上品でエレガントなEクーペを薦めるのにためらいはないけれど、この乗り心地の件だけは他の車を試すまで保留とさせていただきたい。
(文=高平高輝/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
テスト車のデータ
メルセデス・ベンツE300クーペ スポーツ
全長×全幅×全高=4855×1860×1430mm
ホイールベース:2875mm
車重:1790kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:245ps(180kW)/5500rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/1300-4000rpm
タイヤ:(前)245/40R19 98Y XL/(後)275/35R19 100Y XL(ミシュラン・プライマシー3 ZP MOE)※ランフラットタイヤ
燃費:13.8km/リッター(JC08モード)
価格:835万円/テスト車=908万4800円
オプション装備:メタリックペイント<ダイヤモンドホワイト>(19万3000円)/エクスクルーシブパッケージ<パノラミックスライディングルーフ 挟み込み防止機能付き+ブルメスター・サラウンドサウンドシステム+エアバランスパッケージ 空気清浄機能およびパフュームアトマイザー付き+シートベンチレーター 前席+マルチコントロールシートバック 前席+ドライビングダイナミックシート リラクゼーション機能>(45万円)/フロアマットプレミアム(9万1800円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1003km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:317.4km
使用燃料:33.3リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.5km/リッター(満タン法)/11.1km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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