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【スペック】TSI:全長×全幅×全高=4255×1810×1420mm/ホイールベース=2575mm/車重=1340kg/駆動方式=FF/1.4リッター直4DOHC16バルブターボ+スーパーチャージャー(160ps/5800rpm、24.5kgm/1500-4500rpm)/価格=392.0万円(テスト車=同じ)

フォルクスワーゲン・シロッコTSI(FF/7AT)【試乗記】

目立つ・使える・楽しめる 2009.08.05 試乗記 森口 将之 フォルクスワーゲン・シロッコTSI(FF/7AT)
……392.0万円
フォルクスワーゲンのラインナップに新しく加わったスポーティクーペ「シロッコ」に試乗。ベースとなる「ゴルフ」との違いは、見た目以上に大きかった。
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個性も実用性も

フォルクスワーゲンには興味があるけれど、「ゴルフ」には乗りたくない。世の中にはそんなユーザーがいるはずだ。なにしろゴルフは日本でいちばんよく見かけるガイシャである。フォルクスワーゲンならではのイイモノ感を享受するには理想的だが、個性を主張するには不向きだ。

ゴルフをベースにして生まれた「シロッコ」は、そこが大きく違う。なにしろ目立つ。ゴルフより45mm長く、20mm幅広く、65mm低いボディは、それ以上にワイド&ローに見える。とくにキャビンからテールゲートにかけての大胆な絞り込みが鮮烈だ。

クーペということで実用性の低さを気にする人もいるだろう。しかし長さ1.8mのロングルーフのおかげで、身長170cmぐらいのおとな4人がガマンせずに乗れる。ラゲッジスペースはリアシートを立てた状態でも「ポロ」を上回る312リッターを確保し、シートを倒せば1006リッターにまで広がる。ゴルフの代わりになり得るユーティリティの持ち主だ。しかも走りでは確実に上をいくのである。

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1.4で不足なし

日本仕様のシロッコは、1.4リッターにターボとスーパーチャージャーを装着して160ps/24.5kgmを発生するTSIと、2リッターターボで200ps/28.6kgmの2.0TSIの2タイプがある。トランスミッションはどちらもDSGで、1.4は7段、2.0は6段となる。今回は1.4に試乗した。

1340kgという車重やギア比は、同じエンジンを積む「ゴルフTSIハイライン」と変わらない。タイヤが225/45R17から235/45R17とやや太く大径になっているだけなので、加速に違いはない。やや唐突につながる乾式クラッチが原因と思われる、発進停止でのDSGのギクシャクが気になる以外は、軽快に回転を上げ、爽快に加速していく。

少し前に試乗会で乗ったときは、こちらを2.0だと思ったぐらいだから、力に不足はない。たしかに2.0はさらに強力で、排気音は明確になり、湿式多板クラッチを用いたDSGは変速をスムーズにやってのけるが、急加速では前輪をスピンさせるなど暴力的な面も持つ。1.4のほうがシロッコのキャラにはふさわしい。

それ以上に好感を持ったのはハンドリングだった。ゴルフで気になった欠点が、すっかり解消されていたからだ。

スポーツカーと呼べる走り

現行ゴルフは快適性を重視したためか、コーナーに入るたびにグラッとくるロールが気になる。ところがシロッコでは、ワイド&ローの車体と固められた足回りがそれを消し、路面にピタッと張りついたように曲がっていく。操舵に対するノーズの動きも断然クイックになった。

ここにゴルフで定評のあるロードホールディングの高さが加わるのだから、その走りはスポーツカーと呼んでもいいレベルにある。トータルバランスが自慢のゴルフから、走行性能の高さを抽出したモデルといえるもしれない。

そのぶん乗り心地はゴルフより硬い。山道でハンドリングを堪能しているときはこれでいいと思えるが、下界に降りるとやはりハードだ。スプリングやダンパーだけでなく、ブッシュも硬めなのか、ロードノイズも気になる。
先にも書いたように、シロッコは4人乗りのハッチバックとしても使えるパッケージングを持つ。だからこそ走りは上級グレードの2.0TSIにまかせて、1.4はエコでカッコいいパーソナルモビリティに徹してもよかったのではないか。そしてもうひとつ、価格についても再考を望みたい。

気になるのはお値段

1.4のTSIが392万円、2.0TSIでは447万円という価格は、同等の性能を持つゴルフより100万円近く高い。ヨーロッパではゴルフと変わらぬプライスなのに、である。たしかにこの数字には、ゴルフではオプションになるカーナビが含まれているが、せめて1.4だけはそれを外し、敷居を低くしてもよかったのではないだろうか。装備を省けば軽くなって、よりエコになるわけだし。

シロッコはこのクラスとしては希少なスポーツクーペだ。自動車の根源的な魅力であるカッコよさや走りの気持ちよさを持ち合わせている。しかもクーペとしては実用性能や環境性能も高い。敷居の低いスポーツカーという点では、「マツダ・ロードスター」の上をいく。

でも輸入元はそのシロッコにプレミアムという形容詞を与え、ゴルフより格上のクルマと位置づけて送り出した。もし手頃なプライスで売り出されていたら、クルマ離れを食い止める立役者の1台として、もっと注目されたかもしれない。輸入車ナンバー1ブランドだからこそ、そんな挑戦をしてほしかった。

(文=森口将之/写真=高橋信宏)

森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。

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