フォルクスワーゲン・シロッコ2.0TSI(FF/6AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・シロッコ2.0TSI(FF/6AT) 2009.07.21 試乗記 ……447.0万円総合評価……★★★
約20年ぶりに、日本の道に復活した新型「フォルクスワーゲン・シロッコ」。基幹モデル「ゴルフ」をベースとする、スタイリッシュなクーペの実力を、その上級グレードで試した。
期待に応えすぎ!
新型の「ゴルフ6」と同様、どう猛な顔つきのシロッコだが、本国でのデビュー順のとおり、そのベースとなるのは、一世代前の「イオス」だ。シロッコは、このクーペカブリオレとゴルフ6で使うパーツを上手に組み合わせて、モジュラー形式で作られたフォルクスワーゲンのクーペなのである。
ただし、ゴルフ6自体がゴルフ5をベースとしながらも、その素性の確かさとVWの熟成技術によって超進化を果たしたことからもわかるように、シロッコは単に“あり合わせの材料で安く済ませたヤツ”じゃない。ゴルフよりもずっと重心バランスが低く、ワイドなトレッドが与えられたシロッコの走りは、キョーレツに楽しい! これはVWのスポーツカーなのだ。
このご時世にクーペなんぞ出しても買えないよ、という意見もあるだろう。メーカーだって、「シロッコは好きな人だけ買ってくれれば……」と、実は及び腰。それほど数を見込んではいない。だからこそ、みなさんにも、そしてメーカーにも敢えていいたい。不景気だから、人はスポーティカーがキライになるわけではない。いつの時代もクーペに憧れる人はいるはずで、その期待に応えられるクルマが少ないだけだ。で、シロッコは、それに応えられる貴重な一台だと言える。
ただし個人的には、試乗車より、下位グレードになる1.4リッターモデル「TSI」を推す。2.0TSIはどちらかというと往年のGT的な味付けで、その豪華装備もまた、シロッコが本来もつ軽さや低さ、乗り味の面白さに貢献しない。より排気量の小さなエンジンがもつ“存在の軽さ”という意味でも、エコロジー気運高まるいま、TSIを選ぶ方がカッコいいと思う。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「シロッコ」はフォルクスワーゲンのFFコンパクトクーペ。1974年に初代がデビュー、1981年に2代目が登場した(1992年に生産中止)。現行モデルは3代目となる。
基本骨格は、5ドアハッチバックの「ゴルフ」と同じ。 ただし、ボディはゴルフよりも65mm低く、20mm広く仕立てられ(全長×全幅×全高=4255×1810×1420mm)、ロー&ワイドなスポーツカースタイルとなっている。
(グレード概要)
日本市場で展開するシロッコは、エンジン別に2種類。エントリーグレードの「TSI」は、「ゴルフTSIハイライン」と同型の、160ps/5800rpm、24.5kgm/1500-4500rpmを発生する1.4リッター直4ツインチャージド(ターボチャージャー+スーパーチャージャー)ユニットを搭載。トランスミッションには乾式の7段DSGが組み合わされる。
上級グレードの「2.0TSI」は、2リッター直4ターボユニット(200ps/5100-6000rpm、28.6kgm/1700-5000rpm)を積むモデルで、トランスミッションは湿式の6段DSG。電動調節機構をもつレザーシートや、ひとまわり大きなホイール(18インチ)なども備え、より高級な仕様となっている。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ゴルフ6やイオスと同じデザインのインパネは、とっかえひっかえフォルクスワーゲンの試乗車に乗ってみると、少々物足りなく感じられる部分ではある。しかし実際のオーナーは常にその一台とだけ向き合うのであるから、あまり関係のないこと、ともいえる。個人的には落ち着いたインテリアの雰囲気に充分満足。が、なにかひとつ挙げるとするなら、タイト感が美点であるクーペではあるものの、全てがブラック一色なので少々息が詰まる。唯一のアクセントとなるシルバートリムのエアコン吹き出し口を見ると、救われた気がする。
(前席)……★★★
シート自体の形状は、スポーティクーペの名に恥じない立派なもの。それを覆うレザーもステッチが入って格好良い。だが実際に座ってみると、2.0TSIのシートは柔らかめでラクシャリー過ぎる気がする。40代半ば以上と思しき、実際のクーペ購入層を考えるとこれでいいのかもしれないが、クーペに若返り要素を求めるドライバーもいるはずで、それならば1.4リッターの「TSI」をお勧めする。同じ形状なのに、なぜか座り心地が違う。ひとことで言って、シャープ。シャンとするのだ。
(後席)……★★★★
さすがフォルクスワーゲンと唸りたくなる居住性。全高が低いわりには、室内高は900mmあるから頭上のクリアランスもあまり気にならない。ゴルフがベースとはいえ、室内幅(1320mm)に余裕があるのも立派だ。足下も前席のシート下にうまくつま先が入れられ、ヒザを立てないで済む。さらにシートは中央にオフセットされており、後席からの前方視界も良好。おかげで、狭いクォーターガラスによる閉塞感が予想以上に低く抑えられている。これは家族に反対されないかと怯えているクーペ購入希望者にとって一筋の光明だ。
ひとつ付け加えるとするならば、どこにもつかまる部分がないこと。グリップを追加してほしい。
(荷室)……★★★
トランク容量は312リッターと小さめ。オーバーハングが短いなかで容量を稼ごうとした結果か、ボディ剛性確保のためか、開口部は小さくなり、その分トランク床面までの距離が遠くなるので、アクセスはあまり良くない。実際カタログで紹介しているトランクの写真もすごく小さいのだが、クーペだからそれでいい。さらにいえば、リアシートは分割可倒式で最大1006リッターにもなるのだから、文句を言ってはいけない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
試乗した2.0TSIの6段DSGは湿式多板構造のデュアルクラッチを使うためか、ギアチェンジにそれほどの衝撃を伴わない。だから足まわりを固めて本気モードで走っても、何となく気分がゆったりしてしまう。上級車種として1.4リッターのTSIとキャラクターをわけているのだろう。
しかし個人的には、(何度もいうが)TSIのほうを好む。7段ギアの小気味よいステップ感やクラッチエンゲージのタイミングがスポーツドライビングをよりハイレベルなものにしてくれる。
エンジンも同様。絶対的な速さは2.0TSI。出足のトルク感もロープレッシャーターボの加速感も2.0TSIに軍配が上がる。エグゼクティブユースならこちらになるかもしれない。ただしエンジンノイズなどが静かなまま絶対的なスピードがグングン上がってゆくので、ちょっとサディスティックな気分になる。対して1.4TSIは「一緒に盛り上がろうぜ」という感じが好ましい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
ハンドリングは現行クーペのなかにあって、一番と言っていい。ただし、18インチタイヤはバネ下重量の増加という点で影響が大きい気がする。ドタバタこそしないのだが、鈍重だ。タイヤコンパウンドの問題だろうか。ただそれもTSIと相対比較した印象で、これにだけ単体で乗れば、“大人のクーペ”として十分納得してもらえるだろう。よって乗り心地もどっしりとしている。ロードノイズは多少入るが、路面からのハーシュネスはうまくダンピングして吸収している。
でも……やっぱりおすすめは1.4のほうだ。路面からの反発はダイレクトに伝わるが、バシッとボディで受け止めきるシャシーで全く不快に感じない。それを2.0TSIは隠してしまっている。「DCC」をスポーツモードにしても、基本的な味付けは一緒。シロッコがわざわざ全高を切りつめて、ボディをワイドにした理由はデザインだけではない。低い重心がもたらす旋回Gやダイレクトなコーナリングフィールのためなのだ。そしてそれは、飛ばさなくてもしっかりと感じ取れるものだ。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:山田弘樹
テスト日:2009年6月16日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2009年式
テスト車の走行距離:4030km
タイヤ:(前)235/40R18(後)同じ
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:281.2km
使用燃料:33.97リッター
参考燃費:8.28km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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