第392回:「フィアット500×Barbie」in 青山フィアットカフェ
コージ式プチ暴論、今こそ「ストップ The カワイイ」!?
2009.07.15
小沢コージの勢いまかせ!
第392回:「フィアット500×Barbie」in 青山フィアットカフェコージ式プチ暴論、今こそ「ストップ The カワイイ」!?
これは言葉の暴力だ!?
ハッキリ言って暴論ですけど、俺は昔から“カワイイ”って言葉がキライだ、というか正確には言葉そのものではなく、最近の異様な使われ方と、ポジショニングを苦手としてきた。
「この服カワイイよね〜」から始まり「その髪型カワイイじゃん」「このピン留めカワイくない?」「ア○ロちゃんカワイイ」「このネイルカワイイ」「あのネコカワイイ〜」とバカの1つ覚えのような大合唱。もちろん適切な使われ方もあるけれど、とりあえずいいと思ったモノには“カワイイ”と付けときゃ間違いないみたいな偏重ぶりが時折、特定のエリアで見られる。これって、いわば言葉の暴力(?)な気がするんだよね。
それは渋谷109みたいな、若い女のルツボは当然ながら、男同士でもファッション業界、ファッション誌の撮影に行くと結構そうなる。そのたびに、うへ〜、ダサくも男臭い自動車ギョーカイでつくづくよかった……と思ってきたけど、最近ではちと事情が変わってきてる。
そう、女性モータージャーナリストの台頭だ。それはある種の時代的変化であり、彼女たちの資質向上も大きいのだが、同時に世の中の体質変化も大きいと私は受け止めている。
それは世間が“批判を受け付けなくなってきている”ということだ。俺は昔から「清濁併せ呑む」と言う言葉が好きだし、まさに生きること、文章を書くこととはそういうことと思っていたが、最近は不況もあって清濁の“清”が強調され、“濁”が消えつつある。ようするに建前中心の社会になりつつある。
自動車ジャーナリズムも同様で、単純に言いたいことがますます言えない世界になりつつある。
そもそも自動車を作るメーカーあってのこの世界。スポンサーが引き締めればあっという間に、自由はなくなる。結果、新車インプレッションは全体のトーン、情報量ともに誰が書いても大差なくなってきている。大差なくなるは言い過ぎとしても、同程度の“毒”ならば美しい人、あるいは人あたりのいい人が書いた方がいいということになってるのだ。よって女性ジャーナリストが重用される。必ずしもそうでない場合もあるが、当たらずとも遠からずだろう。
この世は“カワイイ”に弱すぎる!
それはともかく、女性が増えると怖いのは「カワイイ至上主義」が台頭してくることだ。ここからは特に偏見の塊なので、流して聞いて欲しい(笑)が、具体的にはミニやフィアット500のようなコンパクトカーはもちろん、軽のレトロカーのような類に対する評価が高くなると思われる。クルマのペット化がますます進み、その視点で評価されるようになるのだ。
ただし、これは市場原理でもあり、これだけ多くの女性がクルマに乗る世だけに当然でもあるが、俺がいいたいのは“カワイイ”のパワーは予想以上に強大だということだ。男達よ、侮ってはいけない。
たとえば言葉だけではなく「カワイイ存在」「カワイイ受け答え」はこの時代、スゴくウケる。それはちょっと前まで女性誌でうけてたエビちゃん&モエちゃんに代表されるカワイイモデルやモテ服もそうだし、例の草食系男子だってそう。結局、何事も頭から否定しない、しそうもないジェントル(?)な存在が、そこかしこに介在し、ウケてるのである。
で、ここからがまた一段と進化した俺の偏見(笑)だが、カワイイを象徴する色が桃色、つまり“ピンク”なのだ。とにかく“カワイイ”が大好きな女性達による、ピンク支持率はハンパじゃない! とある有名コンパニオン集団では、誰がピンクを着るか? で争いになると聞いたことがあるし、そもそもピンクが嫌いな女性を俺はほとんど知らない。
ピンクはもはや思考停止の色なのだ。ピンクは問答無用に“カワイイ”し、“カワイイの象徴”たりえるのである。
で、やっと本題。それを久々に再確認させてくれたのが、先日、東京青山のフィアットカフェでお披露目された「フィアット500×Barbie」である。あのマテル社が生んだ世界的玩具のバービー人形とのコラボだが、見るなり「やはり……」&「さすが……」と思った。全体がピンク、それもショッキングピンク! あのデビ夫人までがどうしたことか招待され、クルマの前でニッコリ写真に収まっているのにもビックリ。いくつになっても好きなんだよねぇ、バービー&ピンク……。
日本はどこかに占領される!?
そしてその瞬間、俺はピンクシャンパーニュを飲みながら、言い知れぬ恐怖に襲われたというわけだ。ついに“カワイイ&ピンク”パワーはここまで台頭したのかと。クルマに興味のない若い女子モデルにまで「これなら乗りたい」と言わしめるフィアット500×Barbieパワー。つくづく恐るべし……。
深く考えると心配はキリがない。哲学的に考えると“カワイイ&ピンク”が意味するのは人に愛されたいという願望だそうだ。愛するのではなく、“愛されたい”。おいおい、現代日本人よ。そんなことでこれからの厳しい世の中を本当に乗り切っていけると思っているのだろうか。生き残っていけるのだろうか。だから俺は提案したいくらいだ。メーカーはピンクが出た分、男が大好きなカーキや迷彩色を出して、相殺するのを義務づけるべきだと。このままピンクが広まると、日本はどこかに占領されてしまうかもしれないではないか! おおげさだけど……。
なーんてここまで書いたけど、実はこの流れ、そうそう止めることはできないと分かってるのよね。この女性的価値観の台頭、愛されたい症候群は今後10数年、日本を、世界を席巻することになるだろう。そしていつか気づくのだ。「あれはやりすぎだった……」と。
だからこれは心ある男子、そして女子のみなさんに対する私のメッセージであり、野村カントク的ボヤキなのだ。カワイイだけでは世の中済まされない、ピンクがすべて、万能ではないと。そして時折、振り返って考え、少しでいいからワイルドさも大切だ! と思い返してほしいという。
コージ式暴論、ご静聴ありがとうございましたっ!(笑)
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。 -
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」の登場で思い出す歴代モデルが駆け抜けた姿と時代
2025.9.4デイリーコラム24年ぶりにホンダの2ドアクーペ「プレリュード」が復活。ベテランカーマニアには懐かしく、Z世代には新鮮なその名前は、元祖デートカーの代名詞でもあった。昭和と平成の自動車史に大いなる足跡を残したプレリュードの歴史を振り返る。 -
NEW
ホンダ・プレリュード プロトタイプ(FF)【試乗記】
2025.9.4試乗記24年の時を経てついに登場した新型「ホンダ・プレリュード」。「シビック タイプR」のシャシーをショートホイールベース化し、そこに自慢の2リッターハイブリッドシステム「e:HEV」を組み合わせた2ドアクーペの走りを、クローズドコースから報告する。 -
NEW
第926回:フィアット初の電動三輪多目的車 その客を大切にせよ
2025.9.4マッキナ あらモーダ!ステランティスが新しい電動三輪車「フィアット・トリス」を発表。イタリアでデザインされ、モロッコで生産される新しいモビリティーが狙う、マーケットと顧客とは? イタリア在住の大矢アキオが、地中海の向こう側にある成長市場の重要性を語る。 -
NEW
ロータス・エメヤR(後編)
2025.9.4あの多田哲哉の自動車放談長年にわたりトヨタで車両開発に取り組んできた多田哲哉さんをして「あまりにも衝撃的な一台」といわしめる「ロータス・エメヤR」。その存在意義について、ベテランエンジニアが熱く語る。 -
第83回:ステランティスの3兄弟を総括する(その1) ―「ジュニア」に託されたアルファ・ロメオ再興の夢―
2025.9.3カーデザイン曼荼羅ステランティスが起死回生を期して発表した、コンパクトSUV 3兄弟。なかでもクルマ好きの注目を集めているのが「アルファ・ロメオ・ジュニア」だ。そのデザインは、名門アルファの再興という重責に応えられるものなのか? 有識者と考えてみた。