第389回:や、ヤバイ?
もしや新型「マジェスタ」でクラウンの魔力に気づいちゃったのかも!?
2009.06.05
小沢コージの勢いまかせ!
第389回:や、ヤバイ? もしや新型「マジェスタ」でクラウンの魔力に気づいちゃったのかも!?
癒しパワーを初めて痛感
久々ちょっとヤバいかも、と思ってしまいました。俺も完璧オヤジ化したのか、あるいは一歩踏み出し始めてしまったのかなぁ……と。
なぜなら、新型マジェスタに乗ったのをきっかけに、初めて心の底から「いい!」と思ってしまったのだ。トヨタ・クラウンのことを。
今までも散々乗ってきたし、「クラウンらしい世界築いてるなぁ」とか「低速での静けさはピカイチだよなぁ」とか思ってはいました。でもどれも基本的には受け売りというか、お勉強して気づいただけの話で、心の底では「なんでオッサンはこんなの乗るんだ?」とか「これ買う金あったら、俺ならメルセデスかビーエム買うだろうなぁ」と思ってたのね。どこか他人事だったというか……。
しかも新型、というか現行クラウンに関しては、九州の試乗会で長距離乗ったし、マジェスタも発表直後に富士スピードウェイの敷地内で結構乗ったんだけど、基本的にはよく理解できなかった。ピンときてなかった。
ところが先日、一週間ほど新型マジェスタを借りた時のこと。今もハッキリと覚えていますが、とある明け方、疲れ切って事務所から家まで帰る瞬間、たしか雨が降っていたけど、心の底にふと「これ、ホントいいなぁ……」と思わされるものがあったわけですよ。シートに座り、ドアを閉めたとたんにすごくホッとして、守られ感を感じただけでなく、走る度に癒され、疲れが取れるよう。その瞬間「ああ、これがクラウンの味なんだ」とわかったわけです。
さらにその時は南は箱根から、北は潮来や宇都宮の先の矢板まで長距離何度も往復しまくって、走る度に癒しパワーを痛感。こりゃ買う人の気持ちもわかるわ。特にマジェスタ、車両価格700万円は高いけど、その価値あるなぁと思ったわけです。と同時に俺も年とったんだなぁと……(苦笑)。
体が丈夫じゃなくなって気づくこと
具体的には、まず乗り心地とボディ骨格のしっかり感だよね。路面の継ぎ目を越えるたびに、ゴリッと音や振動が入ったのはわかるけど、衝撃は全然つたわってこないし、体に入ってこない。
最近わかってきたけど、乗り心地が悪いクルマに乗ると疲れるのは、衝撃に対して本能的に身体が突っ張るというか、身構えるからだと思う。例えるなら、柔道で投げられる瞬間、身体が自然と受け身の姿勢をとるでしょ。一番衝撃を受けないように姿勢を変え、足や腰に力を入れる。クルマに乗っている時も、それと同じようなことを細かく行っており、それが疲れの原因になるわけだ。
ところが、マジェスタはそれが極端に少ない。レクサスGSと共通のプラットフォームを使っている関係で、根本的に剛性が高いうえに、足まわりのバネレートやシートスポンジを国内の道に最適化してあって、乗り心地が本当にいい。
比べると、ヨーロッパ車はどんなに乗り心地が良くても硬めにできてるし、身体が大きくて重い人用だから微妙に日本人に合わない。なんというか、サッカーのスパイクも、結局は海外物より、日本物の方が合うようなもの。やっぱり足形と、革の柔らかさが違うのよね。
そしてその違いは、若い頃は身体が丈夫だから気づきにくいけど、40を越えると全体の筋力が落ちるし、体力も衰えるから、非常によく分かるのよ。たぶん(笑)。
それからこれほどマジェスタのパワートレインがキモチいいとは思わなかったなぁ。基本的には、レクサスLS460に採用されている4.6リッターのV8ユニットと新型8段ATの組み合わせなんだけど、マジでレクサスよりいいと思った。特に347psっていうピークパワー以上に、そこに至るまでの過程がキモチいい。軽めのペダルを踏んだとたんに、すっと出て、それが出過ぎず、出なさ過ぎず。
さらに良く研ぎ澄まされたカンナで白木を削るような振動というか、音とねっとり感がいい。良くできたBMWエンジンにも感じるんだけど、俺はいいエンジンってのはいいあんま機と楽器の要素も入ってると思っていて、このパワーユニットには、たしかにそれがある。
ただし、BMWのそれとは違って、もっと味が薄くて微妙(笑)。先輩ジャーナリストの金子さんとも合意に達したんだけど、いわば「肉の味ではなく、豆腐の味」。非常に繊細な“和”のテイストなのだ。
薄味がわかる年齢になった
ハンドリングも同様で、それまで俺はクラウンシリーズのステアリングフィールってものがよくわかってなくて、とにかく「ねっとりと軽い」としか思ってなかった。高速道路でちょっと気を許すと左右に行っちゃうぐらい反応が薄くて、「本当に手応えあんのかな?」って感じてたんだけど、今回はそれが、たしかにあるとわかった。その味わいは、いわばヒラメの縁側にも似ていて、「噛めば噛むほど味が出てくる」たぐい。これまた“和”なんですなぁ。
それから新型マジェスタは素材感もいい。具体的には、国産素材を使ったウォールナットのウッドステアリングや、しっとり手のひらに吸い付くような本革シートで、コイツがホントにいい。表面のつややかさではなく、ざらつき感の勝負で、いわば和紙の手触りを楽しむようなテイストなのよ。
このへんも今回は心に響いたなぁ。
ただし、そんな俺が今後、チョット古いクラウンに乗っても感動するかはわからない。新型マジェスタの場合は、おそらくベースが基本レクサスGSってことも大きく、プラットフォームといい、エンジンといい、本当にしっかりしたものだったしね。だからこそ、薄めの味付けでも良かったのかもしれない。
とはいえ、その“薄味”がわかるということ自体が、なんだかんだ年をとったって事なんだろうなぁ。
クルマ以外の食生活でも、最近魚が妙に美味しく感じるし、山菜ですら時折美味いと感じる。まるで感覚器の上に被さっていた硬いものが取れて、中の柔らかい物が出てきたっていうか、神経の出ぐあいが変わってきたというか。
で、この変化を愉しむってことが、きっと年齢を楽しむってことなんでしょう。
でもまだ肉も好きだしね。まだまだ枯れないよ〜、きっと!!(笑)
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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