第6戦モナコGP「バトンにとって格別な勝利」【F1 09 続報】
2009.05.25 自動車ニュース【F1 09 続報】第6戦モナコGP「バトンにとって格別な勝利」
2009年5月24日、モンテカルロ市街地コースで行われたF1世界選手権第6戦モナコGP。ブラウンとジェンソン・バトンを止めるのは誰か、という答えは、この地中海に面した小さな国でも見つけることができなかった。ブラウンとバトンは、常勝の流れのなかにいる。
■変わったものと変わらないもの
狭く曲がりくねったモンテカルロの街で、これほどF1マシンが滑る光景が見られたのも久しぶりである。レギュレーションが大幅に変えられ、ダウンフォースを大きく削られた今年のマシンは、各所で姿勢を乱し、その度にドライバーにより正しい向きに戻されようとする。そのさまは見るものの目を楽しませ、またドライバーの神経をすり減らす。
しかし結局のところ、モナコでドライバーの腕が試されるということには何ら変わりはない。シーズン序盤、不調に喘いだフェラーリやマクラーレンがここで上位に食い込んできたことも、ハードウェアの向上よりも、ドライバーの力量がものをいった結果なのかもしれない。
そして、ドライバーの力量という点からすると、勝者バトンとそのほかのドライバーとの間には、歴然とした差があった。マシンの優位性は引き続き保たれているものの、優勝の裏には、ミスなく、隙なく、ウルトラスムーズなバトンのドライビングがあった。
■ソフトタイヤで苦戦
予選で今年4度目のポールポジションを獲得したバトン。ブラウンのフロントロー独占を阻んだのは、これまで散々苦しんできたフェラーリだった。キミ・ライコネンは、グリッド順が何よりも重要なモナコで、ルーベンス・バリケロの前、2番グリッドからレースを組み立てることになった。
だがライコネンにとって、走行ラインではない偶数番グリッドは不利なポジションだった。決勝スタートではポールシッターのバトン、3番グリッドのバリケロが飛び出し、早々にブラウンは1-2フォーメーションを形成。ライコネンは3位から追う展開となった。
レース序盤、ソフトタイヤを履いたマシンのペースがあがらなくなる。特に真っ先にペースを落としたのが4位を走るレッドブルのセバスチャン・ベッテル。先頭集団が1分17秒台で周回を重ねていたのに対し、ベッテルを先頭に、5位フェリッペ・マッサ、6位ニコ・ロズベルグ、7位ヘイキ・コバライネンらの後方集団は21秒台と尋常ならざるスロー走行。10周目、しびれを切らしたマッサ、ロズベルグがベッテルをパスし、ベッテルは直後にピットへと飛び込んだ。ベッテルはタイヤ交換後、数周してコースをはみ出し自滅した。
ソフトを履いてスタートしたブラウンも例外ではなかった。10周してトップのバトンに5秒の差をつけられた2位バリケロは、12周頃からタイムが落ちはじめ、3位ライコネンとテール・トゥ・ノーズ状態となる。
しかし、いっぽうバトンはといえば、タイヤをいたわった走行により、劇的なドロップオフはみられない。後方でバリケロがライコネンにフタをするかっこうとなったのも、バトンにとって追い風となった。
■バトンの“唯一のミス”
苦戦するソフトタイヤ勢を尻目に上位を狙いたいハードタイヤのフェラーリだったが、短めの第1スティントが災いし、ピットストップ後もブラウンの牙城を切り崩せず。そして自らにもソフトタイヤを履く番がまわってくると、表彰台の中央はもちろん、2番目にも手が届かなくなり、ブラウン3度目の1-2フィニッシュを許す結果となった。
ブラウン&バトン、6戦目にして5勝。まさに向かうところ敵なしとはこのことである。
ただ、ここでの勝利がほかとは違う格別なものであることは、バトン自身がレース後に語っている。「モナコGPで勝つことは子供の頃からの、そしてレーシングドライバーとしての夢だった。実現してみると、とてつもなくすばらしい気分だ」。
ジェンソン・バトンが、いまもっともチャンピオンに近いドライバーであり、また29歳にして10年目のベテランGPドライバーなのだが、勝利を重ねるようになったのはほんの数カ月前からのこと。彼にとって、1929年から続く伝統の一戦での勝利は、まさに格別なものであったに違いない。
そういえば、最後にバトンはこの週末唯一のミスをおかした。チェッカードフラッグをくぐり抜け、感激のウィニングランを終えたバトンのブラウン・メルセデスは、ピットレーンに停まってしまった。モナコの表彰式は、ロイヤルファミリーが見守る特設表彰ボックスで行われ、3台のマシンはその前に停められることになっている。
マシンを降り、ピットからポディウムへと走るバトン。そのステップは、1時間40分のレースを戦った後とは思えないほど軽く、力強いものだった。常勝の流れのなかに身を投じているドライバーの姿だった。
(文=bg)
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