メルセデス・ベンツGLK300 4MATIC(4WD/7AT)【ブリーフテスト】
メルセデス・ベンツGLK300 4MATIC(4WD/7AT) 2009.05.12 試乗記 ……722万6250円総合評価……★★★
「BMW X3」や「フォルクスワーゲン・ティグアン」など、活況を呈するコンパクトSUV市場に殴り込みをかけた、メルセデス発のコンパクトSUV「GLK」。リポーターは久々に「ベンツに乗った!」と感じいったのだが……。
極上の快適性 無類の安心感
これまで「BMW X3」がほぼ独占していたコンパクトSUVのマーケットに、ここにきて多くのフォロワーが登場してきつつある。「メルセデス・ベンツGLKクラス」も、そのなかの1台だ。
まず大きなインパクトをあたえるのは、その内外装のデザインだろう。極端なまでの直線基調は、GLクラスというよりGクラスを強く意識しているよう。ちょっとオモチャっぽい感じが個人的にはあまり好きになれないのだが、一時は皆がこぞってGクラスに乗っていたファッション業界では結構ウケがいいという話も聞くから、まあセンスの問題なのかもしれない。
しかし、その乗り味に関しては文句なく太鼓判を押せる。動力性能は車重があるだけにそれなりだが、骨太な骨格に懐深いシャシーの組み合わせがもたらす極上の快適性と無類の安心感は、おかしな言い方かもしれないが、現在のラインナップのなかでも、もっともメルセデスらしさが濃いように思う。久々に「ベンツに乗った!」という感覚を濃厚に味わうことができた。
そんなわけで、このデザインが気に入ったなら、これから輸入車市場で盛り上がってきそうなコンパクトSUVの中の選択肢のひとつとして大いにアリだ、と締めたかったのだが、それには引っ掛かる部分がいくつかある。まずひとつ目は左ハンドルしか用意されていないということ。メルセデスの他の4WDモデルと同様、トランスファーを右側に通す設計上の都合で、右ハンドルを作れないのだ。ちなみに、やはりX3が売れまくっているイギリス市場では文句が噴出しているのだとか。日本でもファンは声をあげるべきかもしれない。
そして価格だ。675万円という数字は兄貴分たるML350に対して、わずか81万円の差しかない。どうせコンパクトと言ってもそこまで極端に違うわけではないし、Mクラスのほうがオフロード性能は本格的だ……などと考えると、積極的に選ぶ理由が薄い気がしてきてしまう。
ステアリングの位置は仕方ないとしても、せめて価格をもう少し頑張ってくれると、自信をもって勧めることができるのだが。ましてや、これからもライバルは続々と登場してくるのだから。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「GLK」クラスは、メルセデスSUVのエントリーモデルとして2008年4月にデビューし、日本には2008年10月に上陸。「Cクラス」同様に「AGILITY CONTROL」シャシーが採用され、路面や走行状況に応じて減衰力を変化させる油圧式セレクティブダンピンクシステムなどで、俊敏性と快適性を両立したという。
駆動方式は「4マチック」と呼ばれる、メルセデスのフルタイム4WDシステムが用いられる。オフロード走行も見据え、大きなロードクリアランス(185mm)やアプローチ/デパーチャーアングル(20度/21.4度)を持つ。
(グレード概要)
日本市場は、3リッターV6エンジン搭載の「GLK300 4MATIC」のみが販売される。ハンドル位置は、左のみ。坂道発進を助けるヒルスタートアシスト、マルチメディアコントローラーのCOMANDシステムなど、上級装備は標準。試乗車はさらに、レザーツインシート、パドルシフト付きステアリングホイールなどのスポーティ装備が含まれる「スポーツインテリアパッケージ」をオプション装備する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
写真で見ると直線基調で切り立ったように見えるインストゥルメントパネルだが、実際にドライバーズシートに座ってみると、さほど圧迫感がないのは、着座位置が高く見下ろすようなかたちになるからか。高級感に乏しい造形には最初は不満を感じたが、厭味な要素もないだけに慣れるにつれて気にならなくなってきた。やはりメルセデス。パッと見はイマイチでも、長く付き合うには良いのかもしれない。
装備は充実している……が、パドルシフト付きのステアリングやアルミニウムトリム、インテリアライトパッケージなどは、すべてオプションのスポーツインテリアパッケージに含まれている。車両価格等々を考えると、これらは全部標準装備でもいい気も。COMANDシステムは標準装備。しかし、それならスイッチ類はもっと減らすべきだろう。
(前席)……★★★
これもスポーツインテリアパッケージに含まれるレザーツインシートは、サポート部分がレザーとなっているが、パンと張ってしなやかさを欠いた触感には、それほどありがたみは感じられない。クッション形状が平板で滑りやすいのもマイナスだ。
しかしスペース的には申し分なく、頭上も足元も広々している。左ハンドルであることも、自然なドライビングポジションという意味ではメリットになっているのかもしれない。周囲の見切りも上々。フードの高さだけはやや気になるが、スクエアなボディだけに車両感覚も掴みやすい。
(後席)……★★★
基本骨格を同じくするCクラスと同様、後席は広いとは言えない。特に足元スペースの前後長は短く、フロントシートを自分のポジションに合わせた状態でリアシートに座ると、フロントシートの背面に膝下をくっつけた状態で座るはめとなった。
一方、頭上には握り拳を縦に2つ重ねられるほどの空間が確保されているし、立ち気味のサイドウィンドウのおかげで横方向にもゆとりがある。いったん身体を収めてしまえば、それほど圧迫感は感じないで済むのかもしれないが、それでもやはりあと数cmでいいからリアシートを後退させたいところだ。
(荷室)……★★★★
さすがに床面の位置は高いが、電動式のテールゲートはバンパーを抉ってギリギリまで大きく開く。荷室も仕事に手抜きが無く、全面カーペット敷き。トノカバーのレール部分が、余計なところに傷がつかないようガイド状になっていたりと、いかにも配慮が行き届いている。フロアボードを開けると折り畳み式のカゴが入っているのは、他の多くのメルセデスのステーションワゴンと同じ。数多くのネット固定用フック、12V電源ソケットも備わる。リアシートの分割可倒機構も標準装備だ。
残念なのは、そのトノカバーにCクラス・ステーションワゴンのように手前を軽く押し下げるだけでスルスルと巻き取られる機構が付かないこと。あれはとても気が利いているのに。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
排気量3リッターのV型6気筒ユニットは全域での滑らかな吹け上がりと、回転上昇にリニアに追従するトルク感が印象的だ。組み合わされる7G-TRONICもマッチングは上々。きめ細かで、さらにショックのない変速ぶりによって、とくに街中や高速道路ではアクセルを深く踏み込む必要はほとんどなく、上質かつ軽やかな走りを楽しめる。
ただし、車重が嵩むこともあって、登り坂などではもどかしい思いをすることもある。箱根の山では、別にそれほど飛ばすつもりはなくても、ペースを保つために全開を強いられることもあった。オプションのパドルシフトは、けっこう有用といえる。
しかしながら燃費を考えると、やはりもう少しダイエットを頑張ってほしかったという感がなくはない。本当はディーゼルエンジンの導入が理想なのだけれど……。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
優れた快適性こそGLKクラスの一番のセールスポイントだ。基本的にCクラスと同様のシャシーは、その重さもプラスに作用しているのか、じつにしっとりとした乗り味を示す。剛性感高いボディと、ソフトな、しかしセレクティブダンピングシステムのおかげで必要な時にはしっかり抑えの効いた足まわりが相まって、どんな入力もやんわりと受け流し、うねった路面でも底付き感は皆無といった具合だ。
このGLKクラスも、最近のメルセデスに共通の「AGILITY CONTROL」シャシーを採用する、つまりは俊敏性を強く意識したセットアップを施しているのだが、それでも多くのプレミアムSUV達のように無闇にシャープに躾けられているわけではない。ステアリング操作に対する応答性は十分に正確で、背の高さによるネガをほとんど感じさせることはないが、決して過敏ではなくリラックスして走らせることができる。4マチックの効果もあるのだろう。このあたりの案配はまさに絶妙。メルセデスの底力を感じさせてくれる。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2009年4月15日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:10407km
タイヤ:(前)235/50R19(後)255/45R19(いずれも、ブリヂストン DUELER H/P SPORT)
オプション装備:スポーツインテリアパッケージ=24万円/パノラミックスライディングルーフ=21万円/ETC車載器=2万6250円
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:267.6km
使用燃料:35.8リッター
参考燃費:7.47km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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