第386回:おめでとう侍ジャパン&がんばれNAVIチームゴウ!!
ルマンとWBCにみるコージの勝手にカントク論
2009.03.27
小沢コージの勢いまかせ!
第386回:おめでとう侍ジャパン&がんばれNAVIチームゴウ!!ルマンとWBCにみるコージの勝手にカントク論
原手法はある意味宗教的?
いや−、ついに勝っちゃいましたねぇ、WBC見事2連覇! おめでとうございます!! 久々に野球をマジメに、手に汗握って一打席一打席、一球一球観させていただきました。ありがとう! 楽しかった〜。
改めて観ると野球ってホントに面白いのね。サッカーももちろん楽しいけど、野球のほうがプロセスが細かくて、同じ無得点でもストーリーがわかりやすい。逆に冗長に過ぎちゃうこともあるんだけどさ。
で、WBCと同じように今回の上限1000円高速料金で、“クルマってホントに面白いのね!”ってなるといいんだけどなぁ。でもまあ、今回は野球を観るというより、“日本人”を応援したのか? ようするにナショナリズムパワー。つくづく自分の中に眠るアイデンティの問題を考えさせられますわ。
ってなわけで前置きが長くなったけど、今回は“チーム監督”のお話。まずWBCからいうと、今回勝てたのは単純に選手の力だと思う。もの凄かった。原監督は原監督でたいへんご苦労されたとは思うけど、賛否両論ではないだろうか。勝てたからよかった! 勝ったら官軍! という見方もあるんだろうけど、私見では今回イチローはやはり序盤、途中で外すべきだったと思う。最後に劇的に打てたのまさしく結果オーライ。というか、準決勝、決勝と調子が上向いていただけで、これで“イチローの大会だった”と結論づけたら、未来に繋がらない気がする。
もちろん、過去現在未来通じて最高とも言える日本人プロ野球選手だけに、外すのが難しいのもわかる。だが、監督とはそういうものではない。プライドをある程度残しつつ、刺激を与えるという役割もあるはずだ。
たとえば負けても敗者復活があり得るラウンド1やラウンド2で、勝ち試合の6回以降に“休ませる”名目で交代させる。もちろん先発の立場はキープ。それだけでも十分彼は刺激を受けたろう。
たしかにイチローがいたほうが士気が高まるという見方もあるんだろうけど、それは結果論であって、最後に打つまで彼は今回ほとんどチャンスで打ててなかった。それはそれでドラマチックはドラマチックだし、流れとしてネタになるのもわかる。だが、これで負けてたら、出られなかった他の選手は、果たしてどう思ったんだろうか。
選手起用を理由に、前回負けて批判された星野監督のことはすっかり忘れちゃったのかなぁ。やはり監督は、今旬の選手を選んで、調子を見極めて使っていくのが王道でしょう。特に短期決戦ではね。その点、今回の原監督は、全体としては素晴らしかったのかもしれないが、要所要所ではかなりイマイチ。
具体的にはサッカーでいう天才ヒディング監督の足元にも及ばない。彼の場合、選手起用法はまさにマジックであり、ミラクルだ。短期決戦における監督は、こうあるべきという見本のような人材だと思う。
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原監督は“選手もろとも心中タイプ”
というか、原監督の選手起用法はある種、宗教的な感じすら受ける。軸に据えた人をとことん信じ、ダメであろうがなかろうが、まさしく“心中”する。それは「チーム愛」「サムライ」など思い入れたっぷりでロマンチックな用語選択もそうだし、態度もそう。ちょっとしたプチ宗教家。
きっとこれは俺の勝手な想像だが、彼の資質と彼自身のこれまでの野球観により形成されており、自分が「長嶋に続く巨人の大黒柱」「ふがいない4番」と呼ばれ続けた経験があるがゆえではないだろうか。
責任を負わされた選手の気持ちが痛いほどわかるのだろう。だからプライドを徹底的に尊重するし、気持ちを温かく、そして強く鼓舞するのだ。たとえその結果、試合に負けたとしても。
だから変な話、俺が仕えるとしたら、原監督みたいな人にぜひ使ってほしい。選手として彼ほど一緒にいて心強いタイプはいないだろう。長期監督のスタイルとしては十分にアリだ。
それが窺えるのはイチロー起用法と共に、ダルビッシュの使い方だ。俺はまさか、最後までダルビッシュでいくとは思わなかった。そのほうが彼の明るい未来、将来に続いたとしても。
ダルビッシュって、マジメすぎるんだと思う。ハートは十分に強く、パワーとテクニックはもちろん世界最高クラス。だけど、きっと性格が生マジメすぎて、いい男すぎて、気負い過ぎるんだよね。まさに競馬で言う“入れ込み”と同じで、勝手に空回りし過ぎちゃう部分があると。開き直るまでに時間がかかるタイプなのだ。そこが松坂大輔と決定的に違う点。
で、今回ダルビッシュの実力とプライドの高さを信頼して、最後まで使い切ったのも、これまた結果オーライ。勝てたから「良かった」とか言えるわけで、他にもいい投手はいっぱいいたと思うし、9回裏にもっと打たれていたらなにを言われてたことか。正直、観ていて無策っぽかったイメージもある。
サッカーの監督でいうとジーコタイプだよね。選手をおとな扱いし、信頼して使い続ける。それはそれでステキなことだし、ファンもある程度は納得できるけど、短期決戦ではかなりバクチ要素が高い。いかがなものでしょうか。
ルマンで“カントク加藤”の資質が明らかに!
ってなわけで本題。ルマン監督、モータースポーツ監督について。
今出てる自動車雑誌『NAVI』2009年5月号でも詳しく書いてるけど、今年、あの2004年ルマン24時間レースで総合優勝を果たした名門「チームゴウ」が、再びルマンに挑戦する。しかも、俺も懇意にさせていただいている『NAVI』の加藤哲也編集長をチーム監督として。それも前回まで出ていた最高カテゴリーのLMP1クラスではなく、その下のLMP2クラスで。
この両カテゴリーを制覇すれば、プライベーターとしては“世界初の偉業”だそうで、これはこれで楽しみだし、今回は俺もライター&編集者として参加させていただくので、今後の『NAVI』のレポートをぜひ楽しみにしていてください。
さて、ここで野球やサッカーと同じく気になるのはモータースポーツ、つまりレースにおける“監督”に求められる資質、役割とはなにかってことだ。今回は写真にも出ている加藤編集長がトライするわけだけど、彼はマトモにビッグチームの監督をするのは生まれて初めて。実に興味深い。今のところ、立派な参謀役がいるので大丈夫だとは思うけどね。
モータースポーツの現場における“監督”とはなんなんだろう。それを今後明らかにしていくつもりだ。それによって、今からルマンまでの数ヶ月で、彼の資質がすべて明らかになっていくだろう。
監督は「判断する人」に他ならない。勝負事は、すなわち判断の連続なのである。しかもその判断の瞬間瞬間には、それがどれほど重要なのかよく分からない場合もある。それでも判断しなければならない。それが監督というものなのだ。
というわけで、今からルマン本戦まで、あと約3ヶ月。ぜひ『NAVI』と『NAVIチームゴウ』と『加藤哲也監督』に注目してください。あとついでに担当ライターの『小沢コージ』にもね(笑)。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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