スマート・フォーツーカブリオmhd(RR/5AT) 【試乗速報】
さらに魅力を増した 2008.12.19 試乗記 スマート・フォーツーカブリオmhd(RR/5AT)……213.0万円
「スマート・フォーツー」にアイドリングストップ機能を搭載した「mhd」モデルが導入された。輸入車初となるスタート/ストップ機能を試す。
ストップしてますか?
(財)省エネルギーセンターによれば、都市部でクルマを運転する場合、停車時間の占める割合は全体の47%にのぼり、また燃料消費の約2割がそのときのアイドリングに使われているという。もしも効果的にアイドリングストップを実践すれば、燃費は約14%改善できるそうだ。
と言われても「エンジンを再始動するとき、余分にガソリンを使うのでは?」という疑問もあるだろう。だが、2リッターのAT車ならアイドリングストップ5秒分でエンジン始動分は帳消しになるというから、それ以上停車するようなら、積極的にエンジンを止めたほうがいいことになる。
そんなアイドリングストップに、私も賛成である。でも、実際に心がけているかといえば答えはノーだ。もちろん、駐車するときはエンジンを切るけれど、ストップアンドゴーが続く都内では停車のたびにエンジンを切ることはない。
その一番の理由がバッテリーへの負担。聞くところによれば、一般の自動車用鉛バッテリーの場合、エンジンを1回始動すると、その後20kmくらい走らないとバッテリーの電力は回復しないらしい。エンジンの始動を繰り返すことでバッテリーが上がり、渋滞を引き起こしたのでは、かえってエネルギーのロスになってしまう。そう考えると、アイドリングストップに躊躇してしまうのだ。
だから、安心して(!?)アイドリングストップをするには、繰り返しのエンジン始動に耐えうるバッテリーや、耐久性の高いスターターが欲しい。さらに欲をいえば、クルマが自動的にアイドリングストップしてくれたら助かるのに……。
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輸入車初のアイドリングストップ車
そんな願いを叶えるクルマとして、日本では「トヨタ・ヴィッツ」や「ダイハツ・ミラ」などにアイドリングストップ搭載モデルがあるのはご存じだろう。
一方、輸入車組は日本未上陸だったが、2008年12月、メルセデス・ベンツ日本がアイドリングストップ機構採用の「スマート・フォーツーmhd」を発売。しかも、バリエーションの追加ではなく、全車、アイドリングストップ仕様に切り替えたのが注目である。
mhdは“マイクロ・ハイブリッド・ドライブ”の略。とはいっても、モーターによる加速アシストや、減速時のエネルギー回収(回生ブレーキ)を備えるわけではなく、アイドリングストップ機能が追加されただけ。ハイブリッドという言葉に慣れ親しんでいる日本人としては違和感を覚えるかもしれない。
それはさておき、カンジンの中身は、アイドリングストップ機構(スマートは「スタート/ストップ機能」と呼んでいる)を実現するため、頻繁なエンジン始動に強い“AGMバッテリー”を採用し、スターターの機能を持つオルタネーター(発電機)を搭載。そして、アイドリングストップ機構を司る制御コンピューターを搭載したのがこれまでとの違い。これらの部品により増えた重量はわずか20kgで、価格上昇も8万円に抑えられている。
スマートは「アイドリングストップ車購入補助金制度」の対象モデルになっているから、申請をすれば最大3万5000円の補助が受けられるので、実質的な価格差は4万5000円となるのだ。
さらに、アイドリングストップ機構により、10・15モード燃費は従来の18.6km/リッターから約24%向上して23.0km/リッターを達成することを考えると、この価格上昇分は決して高くはないだろう。
手間をかけずにエコ
能書きはこれくらいにして、さっそく「スマート・フォーツー」のアイドリングストップを体験してみよう。
運転席に収まりコクピットを見回すと、センターコンソールに見慣れないスイッチを発見。黄緑色に「ECO」と記されたもので、もう一方には「OFF」の文字が刻まれている。アイドリングストップ機構が働くとエアコンが効かなくなるので、夏場などにはこのスイッチでアイドリングストップ機構を解除できるというわけだ。
キーを捻ってエンジンを始動。いつものようにクルマをスタートさせる。メーターの右側にはアイドリングストップ機構が有効であることを示す「ECO」の表示。最初は“準備中”を意味するオレンジ色だったが、しばらく走るとグリーンに変わった。これで準備完了! 頃合いを見てブレーキをかける。すると、クルマが完全に停まる直前(メーカーの説明よれば8km/hを切ったところ)、エンジンがすっと止まった。シフトレバーやパーキングブレーキを操作する必要はない。ワンテンポ遅れてクルマが停止する。当然、キャビンには静寂が訪れる。
発進も簡単だ。ブレーキから足を離すと即座にエンジンが始動する。その際、多少、ブルっという振動が伝わってくるが、スターターに比べればはるかに短時間で、音や振動も低く抑えられている。その後は、アイドリングストップ機構をあまり意識せずに運転したが、それ自体に違和感や煩わしさを覚えることはなかった。車庫入れなどで発進、停止を繰り返すとき以外は、OFFスイッチを押す必要はなさそうである。
割り切りが肝心
比較的シンプルな構造で、価格のアップも抑えて登場したスマート・フォーツーのアイドリングストップ機構。“エンジン停止中でもエアコンが効くように”とか“エネルギー回生でさらに燃費アップを”など、欲をいえばきりがない。そのためにいろいろなパーツを追加すれば、当然のことながら価格に跳ね返るわけで、それで購買意欲が削がれるくらいなら、いまのように割り切ったシステムのほうが断然好ましいと思う。
ところで、スマート・フォーツー全般の印象は、相変わらず楽しく魅力的だ。ふたり乗りの潔いパッケージング、小さくても安っぽくないインテリア、必要十分な動力性能、街なかだけでなく高速も苦にならない安定感……。
一方、2ペダルMTのシフトマナーや乗り心地など、初代スマート・フォーツーに比べると大きく進歩しているとはいえ、個人的にはさらなる洗練を求めたい。このあたりは、最近話題の「トヨタiQ」に引けを取るところだが、だからといってiQが登場したいまでも、スマートが色あせて見えるかというと決してそんなことはない。それは、スマートの価値や魅力が、いままでのクルマの尺度では測れないところにあるからだろう。
というわけで、アイドリングストップ機構により、さらに魅力を増したスマート・フォーツー。コンパクトカーが似合う日本の街に、もっと増えてほしいクルマである。
(文=生方聡/写真=高橋信宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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