第71回:衝撃! ヒゲも剃れるモーターショー!? もはや縁日? 「ボローニャショー2008」
2008.12.13 マッキナ あらモーダ!第71回:衝撃! ヒゲも剃れるモーターショー!?もはや縁日? 「ボローニャショー2008」
「世界初」は、少しだけ
毎年末恒例の「ボローニャモーターショー」が2008年12月5日から14日まで、イタリアで開催されている。
33回目を迎える今年は、主要量販車では、マツダが「マツダ3(日本名アクセラ)」の5ドアハッチバックを世界初公開した。
フェラーリは、F1コンストラクターズ16回制覇を記念した499台の限定車「スクーデリア・スパイダー16M」を、マセラーティは「グラントゥーリズモS」用のスポーツパッケージ「MCスポーツライン」をショー初公開した。
あとは「世界初」が付いてはいても、マイナーチェンジやエコ仕様の追加などだけである。したがって東京を含む世界5大ショーと比べ、ジャーナリズム的観点からすると話題は少ない。
さらに今年は、BMW(MINI、ロールス・ロイス)、三菱、ロータス、そして起亜、サンヨンが出展を見送った。
「zoom zoom」音頭の響く中
しかしだからといってボローニャショーを侮ってはいけない。なぜか? その答えは一般公開日に行くとわかる。
ボローニャはこれでもかというほどの「来場客志向」なのである。たとえばマツダは、会期最初の週末である12月6日土曜日午前、すでにプレスデイで公開したマツダ3の5ドアハッチバックに再度白いベールをかけた。そしてダンスパフォーマンスのあと、カウントダウンとともにベールが外され、場を盛り上げた。一般客も報道関係者向け発表会と同じ興奮を味わえるというわけだ。実際、ギャラリーからは大きな拍手が沸きおこった。
イベントはまだ終わらない。来場者の中から選ばれた若者2人が一定時間内に肩車に成功すると、竹馬を履いた女性ダンサーとダンスできる、という企画が続いた。
やがて、マツダの世界共通「zoom zoom」音頭? が鳴り響き始めた。ステージのダンサーが踊りながらノベルティのストラップを投げ始めると、来場者は歓声を上げながら手を高く上げてキャッチを試みる。
ほかのスタンドでも、こうした観客参加型イベントが次々と行われた。
ついでに言うと、マツダのダンサーの皆さんはパフォーマンス終了後、今度はカウンターでカタログ配りもしていた。自動車産業の合理化はこんなところにまで及んでいる。
大人気、イタリア陸軍の装甲車!?
いっぽう、ここのところ各地のモーターショーで続いた各社の歴史車両展示は、ボローニャでは沈静化していた。以前、本欄でも書いたが、過去のプロダクトに頼らないのは健全なことである。というか、チューニングショーのそれに限りなく近いボローニャのムードに、セピア色ムードのレトロ系は合わないに違いない。
会場外には、ショーの自慢、合計9つのデモコースが作られている。「モータースポーツ・スタジアム」と名づけられたメインコースでは、朝9時から夕方の6時半まで、フェラーリやアバルト、そしてタイヤメーカーなどが約15分交替でデモ走行をしている。
恒例のイタリア陸軍の展示も大盛況だ。若い軍人が山のような車体に客が登るのを手伝ってくれる。
ボクもフィアット・イヴェコ・オルメラーノ製8輪駆動装甲車のキャビンに潜って照準を覗かせてもらうと、通路の向かいでパニーニを頬張るイタリア人が標的として映っていた。
その装甲車は合計40発を搭載できるという。隊員が説明するに、発射時の衝撃はみんなが想像するよりも少なく、「外部のほうが余程うるさい」らしい。
会場内のあちこちに陸軍の広告が貼られているにもかかわらず、帰りがけ「キミ、イタリア軍に入らないか?」と声をかけられなかったのは、ボクの外見があまりに貧弱なせいか。
フェラーリ付き嫁、募集中
パーツ展示が多く集まったブースの近くでは、ヒゲ剃りグッズメーカーのジレットが商品体験&アンケート大会を開催していた。ヒゲの剃れるモーターショーというのは、おそらくボローニャのみであろう。コンパニオンのお姉さんの横でヒゲを剃るだけなのだが、妙に熱気を帯びていたのは、そこに漂う「ふたりでお泊り感覚」からかもしれないとボクは読んだ。
多くのスタンドからビートの効いた音楽が流れる。会場と会場の間の屋台からは、一帯の名物パンであるピアディーネを温める香りが漂う。保険会社のブースでは、「iPhone 8G」や映画チケットの当たる福引が行われている。
不思議な来場客も見かけた。クマさんのかぶりもの風帽子を着用して、平然と歩いているおじさんがいるかと思えば、フェラーリのスタンドの近くでは、スーツを着た紳士が首からボードをさげて無言で立っている。ボードには氏名とともに「求む。フェラーリ付きの嫁」と書かれていた。
脇のフェラーリのスタッフたちは、その紳士を排除しない。大らかなショーである。
いや、もしやフェラーリの新人研修……かわいがり? なんてことはありませんよねえ?
「ボローニャモーターショー」には、もはやボクたちが思い浮かべるモーターショーを遥かに超えた次元に突入している。いや、巨大な縁日である。思えばボローニャショーの会期は、毎年イタリアの祝日「無原罪の聖マリアの日」が含まれている。ますますお祭りだ。
櫓のように来場者も招かれて登るステージ。そこから「おひねり」のごとく空中に撒かれるノベルティを頭上に感じながら、ボクは今やイタリア唯一の国際モーターショーを散策したのだった。
(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)

大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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