第378回:もしやガイシャ界に“軽価格”を持ち込んでしまった?
実質80万円安!? の「スズキ・スプラッシュ」試乗
2008.11.27
小沢コージの勢いまかせ!
第378回:もしやガイシャ界に“軽価格”を持ち込んでしまった?実質80万円安!? の「スズキ・スプラッシュ」試乗
豪華さはないが……
つくづく日本車ってお買い得だなぁと実感するクルマに出会ってしまいました。そう、スズキ・スプラッシュ! ご存じ、急遽日本に入ってくることになった4輪スズキ初の逆輸入車で、ハンガリーの子会社、マジャールスズキで作られる5ドアコンパクトカーなんだけど、これがよくできてるのできてないのって、素晴らしいのよ。
ハッキリ言って日本人ウケする豪華さはない。外観にメッキパーツが使われてるわけでもなく、タイヤホイールも15インチとフツー。1590mmのちょっと高い車高は、日本じゃ立体駐車場対策から敬遠する人もいるかもしれない。
が、途中までヨーロッパ専売として考えられ、向こうじゃグリルやランプ類をちょっと変えて「オペル・アギーラ」としても売られるだけに、そのヨーロピアンテイスト溢れるシンプルデザイン&骨太な走りは欧州車そのもの。チーフデザイナーは日本人だそうだけど、とてもそうとは思えない。
まずエクステリア。ノッペリとしたフィアットっぽいフロントも悪くないけど、白眉はリアだよね。ベースとなったスイフトに比べ長さを40mm切り詰め、全長は3700mmちょいと短く、そのぶんリアがバッサリナイフで切り取られたかのように切り立ってる。これが大胆なブーメラン型のテールランプと合わさってなんともスポーティ。
インテリアもシンプル至極。メーターは丸形のスピード計のみで、センターパネルもさらっとしてる。上からエアコン吹き出し口、オーディオ、エアコンスイッチ、インパネシフトと余計なものが一切ない。ナビはディーラーオプションとなり、さしあたって付いていないが、ヨーロッパじゃ吸盤で後付けする小型タイプが常識だし、日本でも出まわり始めてるから全く問題はない。
安全装備もてんこ盛り
まあインテリアの樹脂類は特に質感が高いわけでもないし、シート表皮にしろシンプルで、悪い言い方をすると“軽自動車に毛が生えた”くらいの印象だけど、デザインが普通にいい上にしっかりしたクッションを使ってあるから気持ちがいい。
スペースは、短い全長ゆえ足もとの広さはそれほどでもないが、車高が高いおかげでリアシートも含めて、背筋が上にピンと伸びたポジションがとれる。
乗り心地にしても、全体的にタイヤからくるざらつき感は残ってて、いわゆる高級セダンのような遮断された感じはない。だが、硬めでしなやかな足まわりは、大小ショックを十分に吸収してくれて乗り心地はいい。
ステアリングフィールは背の低いスイフトと比べると若干シャープさが足りないような気もするが、十分にソリッド。街中から高速までキビキビ楽しく走れる。
1.2リッターエンジンも同様に、特別滑らかだったりパワフルだったりはしないが、トルク重視で扱いやすい。10・15モード燃費は18.6km/リッターとライバルに比べて数値的には特別良くないが、CVTも付いてるし実用燃費はかなり期待ができそう。
それから見逃しちゃいけないのが安全装備だよね。リアシートに3つのヘッドレストと3点式シートベルトを標準で備え、おまけに運転席、助手席はもちろんサイドエアバッグやカーテンエアバッグと6つのエアバッグまでも標準。このクラスの国産車では、まずお目にかかれない充実装備だ。
あればいいのに左ハンドル
これで車両本体価格123万9000円はまさしくバーゲンだと思う。一見、「トヨタ・ヴィッツ」や「ホンダ・フィット」のほうが安いと思うかもしれないが、比べる基準が違う。
デザインの質、パッケージング、走りのテイスト、装備に出自まで考えると「プジョー207」や「ルノー・トゥインゴ」なんかが正当なライバル。そう考えると、それらより日本価格で80万円は安いのだ!
しかも最近でこそ新型トゥインゴが出たけど、プジョー207もデカくなっちゃったし、現在日本で乗れる使いやすいサイズのヨーロッパ車はどんどん減ってる。
聞けばこのスプラッシュ、スズキは最初、女性に売りたかったらしいのだが、意外なほどクルマ好きの男性が買っているとのこと。その事情もよくわかる。
ちなみに俺は試乗会でスプラッシュの開発陣に会ったとき、「左ハンドル車があればいいのに」とか言っちゃったけど、本当にそう思ってる。なぜならこのスプラッシュ、スズキが導入した初の逆輸入コンパクトというより、まさしく価格破壊のヨーロピアンコンパクト、ある意味80万円安の“スズキ・トゥインゴ”なのだから!
というか、欧州では1万2700ユーロで売られる1.2リッターのスプラッシュ。今の為替レートでも150万円ちょい。企画された時は1ユーロ=160円ぐらいだったはずだから、なんと200万円オーバー。ある意味、ダンピングととられてもおかしくないくらいの激安ぶりなのだ。
マジ、価格的には日本の軽自動車顔負けの安さだと思う。
ま、個人的には「マツダ・デミオ」のキビキビさとスタイルも捨てがたいが、スプラッシュの本場っぽさには負けるでしょ。
日本じゃスズキの軽自動車イメージが災いして、それほど売れるとは思えないけど、考えようによっては今一番のお買い得コンパクト。ホント、好きモンだったら買わないテはないと思うけどね。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。
