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第373回:突撃! パリサロン2008(その3)
ますます放置されつつある日本を実感!!

2008.10.20 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第373回:突撃! パリサロン2008(その3)ますます放置されつつある日本を実感!!

なんで日本でお披露目しないの?

それからもう1つのパリサロンの注目といえば日本車だ。なぜなら、今や日本車もすっかりワールドワイド商品になってしまい、世界初のお披露目は、欧州だったり中国だったりする。そこで今回も、ホンダの5人乗りハイブリッドカー、2代目「インサイト」のコンセプトや、インド&ヨーロッパでしか発売されない「スズキ・アルト」、「レクサスIS」ベースのオープンモデル、「IS250C」などがワールドプレミアとして出展されたのだ。

とはいえつくづく思ったのは日本市場はますます放置されつつあり、孤立しつつあるという現実だ。
だってさ、全長4375×全幅1695mmで完全5ナンバーサイズのインサイトなんて、日本でお披露目してもいいわけじゃない。アルトもそう。コッチのアルトは日本のアルトとは全く違ってて、インドのマルチスズキって会社で作られる、インド&ヨーロッパ専用車。しかし、全長3500×全幅1600mmのサイズといい、欧州で発売されている「スズキ・スプラッシュ」と共通の1リッター直3といい、これまた日本で売られても全く問題ない。北米でしか売れないような5リッター級のピックアップトラックとはワケが違う。

ここから導き出される答えは、ますますもって日本市場が自動車マーケットとして価値を持たなくなっているということ。それを日本在籍メーカー自身が冷静かつ冷酷に受け止めているのだ。

まずインサイトは値段にもよるが、日本で発表されてもそれほど盛り上がらないだろう。もちろんクルマ雑誌やネットでは重用されるが、そうそう世の中にインパクトを持って受け入れられるとは思えない。
というのもまず第一に市場が新車に飽きてるし、おそらくインサイトは来年出るであろう次期型「トヨタ・プリウス」ほど衝撃的ではないのだ。もちろん、1.3リッターエンジンと電気モーターを搭載するホンダのIMAシステムは頑張ってるし、表面的な燃費データやそのほかではプリウスを凌ぐのかもしれない。が、現状のプリウスとホンダ・シビックハイブリッドの差を見ると、そうそう簡単に追い越せるとは思えない。というか、プリウスが良くできすぎているのだ。

「レクサスIS250C」
「レクサスIS250C」 拡大
インド製の「スズキ・アルト」。
インド製の「スズキ・アルト」。 拡大
「アルト」のインテリア。
「アルト」のインテリア。 拡大

チャレンジングなクルマを評価しない

つまりまずもって2代目インサイトの主戦場はヨーロッパでありアメリカに違いない。だからこその「年間20万台」計画であり、だからこそのパリでのコンセプトモデルの発表なのだ。
そして来年春には欧米とほぼ同時に日本でも発表するようではあるが、インサイトは「ヨーロッパで人気」とか「アメリカでウケてる」という評判とともにムードを盛り上げていくのではないだろうか。

今の日本はフィットのような超効率コンパクトカーやタントのような軽自動車、それにミニバンしか売れないシビアな国である。もはや、こういうチャレンジングな新車を評価する金銭的余裕、精神的余裕がない。実際、初代インサイトは既に消えちゃったし、シビック・ハイブリッドにしろ、あまり売れてないでしょ。
ついでに言うと新型インサイト・コンセプト、なぜかデザインがジミ。きっとエアロダイナミクスを追求した結果だと思うが、“過剰デザイン”がウケる日本では流行らないと思う。

同様に、インド産アルトもたしかにサイズ的には日本にマッチするが、デザインがどうにもキュート過ぎ。それにサイズ自体微妙だよね。1リッターの小さめコンパクトなんて。

IS250Cも、おそらく今の価格戦略からいって、500万円は越えるだろう。これでもBMW3シリーズのカブリオレよりは大幅に安いはずだが、それでも高級オープンは日本じゃあまりウケないでしょ。やはりこういう面白い挑戦的なクルマはヨーロッパ、アメリカを中心に展開していくのだ。いくらサブプライム問題で市場が縮小していたとしても。

「ホンダ・インサイト・コンセプト」
「ホンダ・インサイト・コンセプト」 拡大
「日産NUVE」
「日産NUVE」 拡大
「マツダ清(きよら)」
「マツダ清(きよら)」 拡大

世界で最も神経質な市場

その昔、日本人がクルマにアツかった頃は、面白そうなクルマには何でも反応した。でも今は逆。お得なクルマ、保証されたクルマ、便利なクルマにしか反応しない。“夢”で盛り上がるのは俺たちクルマメディアの人間や一部マニアだけなのだ。つくづく難しくも冷めた市場になってしまった。それでも相変わらず日本は、年間500万台超ものクルマが売れる、世界3位の巨大市場ではあるのだが。

そのほか今回パリで発表された新型「フォードKa」や、個性的ノッチバックスタイルをやめたルノーの新型「メガーヌ」、三菱「ランサースポーツバック」にしろ、一見、日本にすぐにでも持ってきたいモデルだとは思う。

しかしそうしない。というか出来ないのだ。ちょっとでもリスクのあるクルマはとりあえずヨーロッパやアメリカで試し、成功したら日本にいれるという具合。

ホント、気をつけないと日本は効率のいい“発泡酒カー”だらけになってしまう気がする。もはやクルマに味わいは求めないという恐怖の国。ま、俺はせいぜいそれに竹ヤリやデッパで対抗してやるつもりではあるのだが(笑)。

(文と写真=小沢コージ)

「フォードKa」
「フォードKa」 拡大
「BMWコンセプトX1」
「BMWコンセプトX1」 拡大
小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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