第372回:突撃! パリサロン2008(その2)
やっぱりフランス車には“オシャレ実用新提案”がないと!
2008.10.15
小沢コージの勢いまかせ!
第372回:突撃! パリサロン2008(その2)やっぱりフランス車には“オシャレ実用新提案”がないと!
新型カングーよりカングーらしい!
ってなわけでCO2の呪文で“耳なし芳一化”してる多くのパリサロン出品車。が、そんなのばっかりと思いきや大間違い。フツーに楽しげなクルマもたくさん出てました!
なかでもイチオシは「ルノー・カングー・ビーバップ」!! なんなんだよ“ビーバップ”って? 高校の名前か!?
意味を調べるとジャズの一形態で、いわゆる和音重視の即興曲とのこと。そしてこの名をもらったクルマも、即興曲よろしくかなりぶっ飛んで遊びで作られてるうえ、遊びもある。それでいて非常にタイムリー。
というのも、いずれ日本に入ってくる新型「カングー」の今からわかりきってる一大欠点が、そのサイズ。全長4213×全幅1829mmもある。それを見事に修正してきてるのだ。そもそもカングーの良さは、長さがほぼ4mジャスト×幅1.7m以下の手頃なサイズに込められた“究極の実用性”にあった。カタチもユニークというか個性的だったが、なによりも突き詰められた道具感があり、使い勝手が良かった。しかし、ソイツはサイズアップで台無しになってしまうはずなのだ。
無論、衝突安全の点で多大なるメリットがあるんだろうが、道幅の狭い日本では魅力半減間違いなし。その上、インテリアもゴージャス化して、鉄板のむき出し部分も減ってしまった。そういう点でも新型モデルは、現行型とはイメージが違い過ぎてたのだ。
ところがコイツは、全長を342mmも縮めて3871mmにしただけではなく、ホイールベースを2.2m台へと384mmも短縮。結果、最小回転半径は4.85mを達成している。ハッキリいってコンパクトカー並みの数値だ。もちろん全幅1.8m台は相変わらず大きいけど、この取りまわしのよさは、それをかなり補ってくれるはず。
さらに驚くべきはボディ構造。ビーバップは今まで見たこともない方式の、後部スライディングルーフを採用している。これがリアに絶大なる開放感をもたらすだけではなく、見たことも聞いたこともない、“乗員のリアエントリー”を実現するのだ。
日本の法律を正式にクリアするかどうかはわからんけど、頭上が解放されており、リアエンド上のピラーがないので、左右リアシートの隙間を抜け出て、乗員が乗り降りすることができる。
たしかにフロアは高いまんまで老人にはツライだろうけど、身体の丈夫な若い人なら問題なし。特に子供なんて、楽しく乗り降りしてくれるんじゃないだろうか。
これは便利なだけでなく、実に“カングーらしい”次世代実用機能だと思った。ムードだけで売れそうだよね。
フランス車の“新王道”
それから同じくフランスの雄、シトロエン。コッチにもすごいのが出た。「C3ピカソ」!
ご存じキュートコンパクト「C3」ベースのMPV版で、全長4mちょいの小さなボディに大人5人が十分座れる上、通常状態で500リッター、リアを倒すと1506リッターの超巨大なラゲッジスペースが生まれるというすぐれものだ。
その上なんといっても、スタイルがカワイイ! もちろん高さ重視の背高ノッポデザインなんだけど、それだけじゃなく、四角いヘッドライトといい、ボンネット回りの造形といい、全体が“握りコブシ”っぽい。ゴツゴツ感重視の非常にユニークなデザインなのだ。
前後左右ともに低い位置の黒い樹脂(たぶん)バンパーを強調しており、これがワンパクかつ実用的なSUVっぽさを演出。向こうじゃ「日産キューブみたい」って評判らしいけど、小沢コージ的には懐かしの「ホンダ・エレメント」をフランス流にオシャレかつコンパクトにしたみたいだと思った。
で、オシャレかつ実用的なクルマには目ざといフランス人。クルマバカ風の人はもちろん、家族連れがぞろぞろやってきては、室内でドアやフタを「バタン」「ドタン」盛んにやってました。こりゃ兄貴分の「C4ピカソ」同様、コッチでもバカ売れしそうな予感ですな。
ってなわけでやっぱりパリサロン。フランス車が元気なのはもちろん、なにより“オシャレな実用新提案”が発見できるステキなモーターショーだと思いました。ルノー・カングー・ビーバップにシトロエンC3ピカソ! コイツこそはフランス車の“新王道”。まだまだドイツ車に負けちゃいませんぜ!
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。