フォルクスワーゲン・ゴルフTSIトレンドライン(FF/7AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ゴルフTSIトレンドライン(FF/7AT) 2008.09.30 試乗記 ……248.0万円総合評価……★★★★
1.4リッターTSIエンジンに最新の7段DSGを組み合わせ低燃費をアピールする「TSIトレンドライン」。他グレードと乗り比べることで見えたベースモデルの走りと乗り心地の評価は。
時代を引っ張る小排気量
東京にいるとドイツ車がやれ500psだ600psだと時代錯誤なパワーバトルに明け暮れているように見えるが、それはドル箱市場の日本やアメリカ、中東に限った話。主戦場の地元ヨーロッパでは真面目に取り組んでいる。
何に対して真面目かといえば、CO2排出量、すなわち燃費に対してである。そのため、すでに大型トラック/バスの世界では定着して久しいが、乗用車でもディーゼルの拡充はむろんのこと、ガソリンに関してもエンジンをダウンサイジングする代わりにターボやスーパーチャージャーで過給し、パワーとの両立を図るのがトレンドになっている。「T」が得意なアウディしかり、「KOMPRESSOR」で知られるメルセデスしかりだ。
なかでも象徴的なのが最近のフォルクルワーゲン各車。主力の「ゴルフ」はV6を積み別格的存在の「R32」とスポーツモデルの「GTI」を除いてノーマル系全車が1.4リッターという、かつてない慎ましさに「時代」を感じざるを得ない。ターボ装着を基本にスーパーチャージャー追加を含む計3種のチューンを用意し、幅広い需要に応えようというのもいかにも量販車らしい。
この夏、筆者は偶々「GTI」と「GT TSI」、そしてこの「TSIトレンドライン」を立て続けに試乗し、直接乗り比べる機会を得た。微妙だが、しかしそれぞれが合目的的で楽しく、結果的に完全な棲み分けができているのには感心させられた。顧みて、日本車がなぜつまらないかの答えがそのへんにあると思う。好みの違いを別とすればほどよいパワーと良好な燃費、乗り心地とから、「乗用車」としてのベストゴルフは、マイルドさ際だつTSIトレンドラインと言える。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行「ゴルフ」は、2004年6月デビューの「ゴルフV」。「TSIトレンドライン」は、1.6リッター直4エンジン搭載のエントリーモデル「E」の後継モデルとして、2008年6月17日に登場した。
搭載される1.4リッター直4ターボエンジンは、スーパーチャージャーを備える「TSIコンフォートライン」と異なり、ターボのみのシングルチャージャー。トランスミッションは、世界初の横置き7段DSGが採用される。
トレンドラインの1.4リッターターボは、水冷式インタークーラーや小径ターボチャージャーの採用により、少ない排気で効率よくパワーを発生。10・15モード燃費は、「E」の12.8km/リッターから20%アップし、15.4km/リッターとなっている。
(グレード概要)
ラインナップは、3.2リッターV6の「R32」、2リッターT-FSIの「GTI」、1.4リッターのツインチャージャーは出力違いで「GT TSI」、「TSIコンフォートライン」、1.4リッターシングルチャージャーの「TSIトレンドライン」で全5グレード。
エントリーモデルのトレンドラインは、装備品は簡素化され、エアコンがセミオートになるほか、オートライトシステム、クルーズコントロールは設定されない。ただ、ESP、ABS、エアバッグ(前席/サイド/カーテン)などの安全装備は標準で備わる。
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【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
いまとなっては標準のホイールキャップがダサかわいい。聞けばトレンドラインはNA時代の1.6リッター「E」に相当するのだとか。
それから想像されるとおり装備は比較的簡素である。エアコンはマニュアルでも一向に構わないのだが、ややオール・オア・ナッシング的な効きがグレードの違いを正直に示している。同じDSGでもGTIと違ってパドルシフトがなく、せっかくの7段ギアボックスだがドライバー自らの積極的な意志でよりリズミカルに操ることは考えられていないようだ。シングルチャージャーのトレンドラインはブースト計も省かれている。
(前席)……★★★★
間近に迫ったパリサロンで次期型「ゴルフVI」が正式デビューするはずだが、無闇な大型化は誰も望んでいないだろう。現行のゴルフVはそれほどスペース効率が高く、実用車の鑑だからである。IVからVへのモデルチェンジで大きく改善されたのが室内幅。大柄なドイツ人にも不満がないように作られたシートはこの車の場合ファブリックだが、それ自体サイズが充分で快適なうえにドアとの間に余裕があり、開放感もミドルクラス並みだ。
チルト/テレスコピックステアリングとシートリフターの助けで調整代は大きい。ただ、小柄な女性が運転することも考えると、ウインドスクリーンの下隅が上に反り返ったダッシュボードでいくぶん蹴られているのが惜しい。
(後席)……★★★★
ライバルに対する優位は旧型比52mmにもなるレッグルームの拡大。普段FRの「BMW1シリーズ」に乗る身としてはまるでサッカー場のように見えるが、同じFFハッチバックの中でも1、2を争う広さであることは間違いない。
センターアームレストも大型でゆったりした気分が味わえる。やや気になるのは、ロードノイズが過大なこと。装着されていたコンチネンタル・エココンタクト3のパターンノイズが主因なのか、それとも上位グレードに比べて遮音がプアなのかは定かではないが、エンジンから遠いリアシートで特に耳についたのは事実である。
(荷室)……★★★★
歴代の「ゴルフ」/「ジェッタ」がトランクスペースを重視してきた伝統に恥じず、そのままでも347リッターを呑み込む収容力そのものに文句はない。後席のアームレストを倒せばトランクスルーになるし、もちろん60:40の分割可倒式だ。ゴルフVが先鞭を付けたオーナメント兼用のトランクオープナーも良いアイデア。
ただし、使い勝手の面でやはり気になるのは、リアシートを畳んだときに真っ平らにならないことと、テールゲートのストラットが強すぎ、片手では締まりづらくなったこと。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
TSIトレンドラインの1.4リッターターボは、122ps。GTI(200ps)やGT TSI(170ps)に比べるとパワーの差は歴然。しかし実用上は充分だし、床まで踏めばターボならではのトルクを利して2リッター級NAを凌ぐシャープな加速を得られる。
エンジン音は2基の過給器がサイレンサーとなってかGT TSIが最も静かで、トレンドラインはどちらかというと旧来のVWユニットに似てガサついた音質。もっとも、負荷が掛かるとシフトアップの瞬間、兄貴分同様にリリーフバルブの効いたエグゾーストノートが「バフッ」と響き渡り、気持ちがいい。
シリーズ唯一の7段DSGは1速を低め、トップギアを高めることで出足の鋭さと巡航燃費を両立。このため1速から2速へのチェンジは気付かないほど素早くスムーズだ。D/100km/hはGTIの2200rpmやGT TSIの2250rpmを下まわる2050rpmだが、上記理由でラジオは聞きづらい。燃費は兄貴分たちより確実にいい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
「人当たりのいい如才なさ」トレンドラインを人に喩えればそう言えそうだ。
低速では一瞬、ダンパーに多少難があった頃のゴルフIIIあたりを想わせるソフトさで、煽りが残るか残らないかの際どさだが、一旦スピードに乗れば嘘のように解消、しっかり感が増して見違えるようだ。ピストンスピードに応じたダンピングのセッティングがドンピシャなのである。
ステアリングもまったく同様。乗り始めこそ、女の子でも気楽に扱えそうな軽さがいささか頼りなく、場合によってはダルともスロー(ロック・トゥ・ロック3回転)とも受け取られがちだが、慣れるとむしろこれがストレスフリーな理想のステアリングとさえ思えてくるから不思議だ。キビキビ感やターンインの鋭さでは兄貴分たちに譲るものの、手放しでも真っ直ぐ進むような直進性は抜群で、気の置けなさなら一番なのである。
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:道田宣和
テスト日:2008年9月3日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:8478km
タイヤ:(前)195/65R15(後)同じ(いずれも、Continental EcoContact3)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(6)
テスト距離:273km
使用燃料:19.99リッター
参考燃費:13.7km/リッター

道田 宣和
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