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第368回:初試乗「トヨタiQプロト」!
もしやコイツでヴィッツ作ったらサイコーかも?

2008.09.18 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第368回:初試乗「トヨタiQプロト」!もしやコイツでヴィッツ作ったらサイコーかも?

トヨタには珍しいプロダクトアウトなクルマ

なんかいけませんね、ネット原稿って。ついつい直近の雑誌仕事に忙殺されて、いつの間にやら『勢いまかせ』には多大なる空白が……(遠い目)。

ってなわけで再び仕切り直し! まずは最近の大ネタからいきましょう。そ、今期サイコーの話題作、「トヨタiQ」よ。
webCG読者なら知ってると思うけど、このクルマ、全長3mの極小ボディの中に人が4人、正確には大人3人+子供1人が乗れるっていう超画期的高効率パッケージがウリ。そしてiQの実車に、ついに乗れることになったのだ。

とはいえそれはプロトタイプで、しかもトヨタ様の某テストコース内。トヨタがこの時期にわざわざプロトをジャーナリスト(一部一般人にも乗せてるらしい)に公開するなんてまさに初代「プリウス」並みの仰々しさで、まるで大家族に久々に生まれた初孫のような扱いだったんだな。それもそのはずiQは、世界の大トヨタが久々おっかなビックリ出す“プロダクトアウト”なクルマ。ある意味、プリウスの心情的兄弟分なのであーる。

たしかに燃費は一番いいグレードで10・15モードで23kmは楽勝かつ実質18km前後はいくらしいし、CO2排出量もヨーロッパ基準で1kmあたり99gとプリウスを凌ぐみたいだけど、問題はそういうことではない。
ようするにこのクルマはマーケティング、つまり綿密な市場調査した結果「これなら売れる!」と踏んで作った商品ではなく、そもそも先行開発部隊が、ユニークなフロントデフ反転配置エンジンレイアウト、超薄型床下ガソリンタンク、超小型エアコンレイアウトなどを発案し、「それをいかに使うべきか?」という発想の元に作られたらしいのだ。

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聞けば聞くほどものすごい

つまり「売れるから作った」わけではなく、「作りたいから作った」商品。この違いは世界一の自動車メーカー、トヨタとはいえ大きいらしく、だから慎重にみなさんにお披露目してるってわけなのよ。なんだか初々しいよね。

それに実際、コイツが去年のフランクフルトショーで発表された時、正直、俺にはどこが魅力なんだか直感的に分からなかった。それは一見“トヨタ版スマート・フォーツー”と揶揄されそうなiQだけど、それを避けることもあってスマート的なオモチャデザインにはしなかったし、パッと見すると単なるオシャレな2シーターにしか見えないので、偉大さがよくわからないのだ。

しかし、まるでプロレスラーのような迫力を持つチーフエンジニアの中嶋裕樹さんに、聞けば聞くほどそのすごさが伝わってくる。それは前述、エンジンまわりのデフ位置反転はわざわざペダル位置をフロントタイヤ内に収めるためだったとか、シートを薄くするためにすごく苦労したこととか、後席の安全性を確保するために世界初のリアウィンドウカーテンエアバッグを採用したこと、などなど。

なんていうかなぁ。その「3m内に4人」の要件をクリアするために、重箱の隅を突きまくって作られているのだ。一般的にセコさの比喩として使われがちな“重箱の隅”だけど、中嶋さんの話を聞いていると涙ぐましい努力にも思えてくる。
ま、あの世界のウォークマンの開発現場も当然サイズにはこだわったらしいからね。ある意味、“重箱の隅”発想は日本のお家芸と言ってもいいのかもしれない。

コーヒーカップのように回る

でまあ、肝心のインプレをざっくり言っちゃうと、一番驚いたのはその取り回しの良さとハンドリングのよさ。「なにを当たり前な……」って言われちゃいそうな取り回しだけど、なにがポイントかって全長2985mmって超コンパクトなサイズ以上にハンドルの切れ角にある。最小回転半径3.9mはまさしく「スマート・フォーツー」以下で、見た限りフロントタイヤはほぼ45度ぐらいまで切れる! で、これが乗ってるとほとんど遊園地のコーヒーカップ気分。なんつうかね。目の前が景色が真横に流れるように曲がるのよ。これは結構衝撃的だったなぁ。

あとね。コースが滑らかだったこともあってかなり乗り心地が良く、さらに前後方向の揺れ、つまりピッチングが少ないことにも驚いたけど、それ以上に感心したのがナチュラルなステアリングフィール。FRセダンもかくや! ってヴィヴィッドさで、それはステアリングラックをこれまたスペースを稼ぐためにフロントタイヤの上に持ってきたがゆえの副産物らしいのだ。そうすることによって、フロントサスペンションのジオメトリーを理想的に設定することができたという。

ってなわけでまさにFFコンパクトの“地味め”な革命! ってな感じのiQだけど、俺の率直な感想は「コイツのプラットフォームでヴィッツ作ったらサイコーなんじゃないの?」ってもの。
だってさ。たしかに可愛いiQだけど、やはりそのサイズから見てバカにされたり、ナメられたりしそうなんだもん。もちろん凄くいいクルマだと思うし、狭い日本には有益で、実際駐車場の狭さに困ってる俺なんかも欲しいくらい。

しかし、王道たるクルマにはやはり絶対的な“体躯”ってのが必要なのだ。スマートだって所詮は“色物的存在”だったりするじゃない。だからこのFFエンジンレイアウト、サスペンション、薄型燃料タンクで、ヴィッツ使ったらもしや今のサイズで7人乗りも楽勝なんじゃないの? と思ってしまった小沢なのでありました。ごめんなさいね、中嶋さん(笑)。

(文=小沢コージ/写真=トヨタ自動車)

小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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