「MTよりATのほうが燃費がいい?」
2008.07.12 クルマ生活Q&A トランスミッション「MTよりATのほうが燃費がいい?」
マニュアルトランスミッションのクルマが好きで、今もMT車に乗っています。最近のクルマのカタログを見ると、若干ですがMTよりもATのほうが燃費の数値がよくなっていて驚きました。本当にATのほうが燃費がいいんでしょうか?
お答えします。ATといっても、今ではずいぶんいろいろな種類のものがありますね。無段階変速のCVTは多くの日本車に使われていますし、DSGなどのツインクラッチ式のものも増えてきました。いわゆる普通のオートマチックも5段以上があたりまえになり、高級車には7段、8段という多段式のATが使われています。
以前はATといえば燃費が悪いもの、というイメージがありましたが、技術の進歩でどんどん効率が良くなっています。ロックアップの制御が巧妙になったことで、動力の損失が抑えられたことが大きいでしょう。「レクサスIS F」などは、2段以上はほとんどの領域でロックアップ状態になるモードもあります。
また、CVTはトランスミッション自体の効率は普通のATに劣るのですが、無段階なのでエンジンのいちばん効率のいいところを使うことができるのが強みです。
ツインクラッチ式は構造が複雑なので重くなりやすいのですが、これも制御が進歩したことで燃費向上の成果が上がっています。
これらのどのタイプでも、エンジンとの協調制御ができることがMTに比べて有利な点です。運転者がアクセルを踏みすぎた場合でも、ガソリンの供給を抑えてシフトアップのタイミングを最適に行うようにプログラミングされているのです。
MTの場合は、運転者が無駄にアクセルを踏んだり、シフトアップを遅らせたりする場合がありますが、ATは無駄な動きを感知するとそれを無効にしてエンジンとトランスミッションの効率を最適化しようとします。
MTは構造がシンプルで軽く、効率もいいので、人間が最適なコントロールをしてやればATより燃費がよくなるはずですが、それにはテクニックが必要です。ATの効率が上がって、制御が進歩した結果、カタログ値では燃費がMTを上回ることが増えてきたのです。
この傾向は、これからもっと進んでいくと考えられます。ちょっと寂しい気もしますが、MTでATに燃費で勝つことは、難しくなっていくかもしれませんね。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。