トヨタ・ヴェルファイア 3.5Z“Gエディション”(FF/6AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ヴェルファイア 3.5Z“Gエディション”(FF/6AT) 2008.07.03 試乗記 ……533万750円総合評価……★★★★
発売1ヶ月で、目標販売台数、半年ぶんの受注を獲得したというトヨタ「ヴェルファイア」。人気の秘密はどこにあるのか? 最上級モデルでその使い勝手と乗り心地を試す。
期待に応えた結果
トヨタのラージサイズミニバン「アルファード」がフルモデルチェンジしたのを機に、双子の弟として登場したのが「ヴェルファイア」である。新型アルファードが先代のイメージを受け継ぐのに対し、ヴェルファイアは力強いフロントマスクが特徴で、ライバル「日産エルグランド」への対抗意識がビシビシ伝わってくる。
景気停滞にガソリン高と、誰の目から見ても逆風にさらされている新車販売。そんななか、発売から1カ月のあいだに、月販目標台数の6000台をはるかに上回る約3万6000台の受注を得たというのは驚くばかり。その内訳がアルファードの1万6000台に対して、ヴェルファイアが25%多い2万台というのは、より幅広い層を取り込むために弟分を投入したトヨタの目論見どおりだ。
そんな国民的注目モデルである(?)トヨタのフラッグシップミニバンから、今回はヴェルファイアを試したわけだが、ミニバンの頂点を狙うクルマだけに、パッケージングや装備が魅力的なのはもちろんのこと、走りっぷりや乗り心地も実にレベルが高い。たまたま同じ時期に、最新の「クライスラー・グランドボイジャー」に乗るチャンスがあった。元祖ミニバンと較べても、このヴェルファイアは、ユーザーの期待に十分応えるでき映えと断言できる。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「アルファード」は2002年5月、トヨタの最上級ミニバンとしてデビュー。6年後の2008年5月にフルモデルチェンジし、2代目になった。
新型は、初代のセリングポイントであった“威風堂々路線”を踏襲、基本性能を正常進化。さらに兄弟車として、車体前後のデザインが異なる個性派モデル「ヴェルファイア」をラインナップした。
スリーサイズは、全長と全幅が微増。全高を45mm下げつつ床位置も55mm低めることで、低重心を手にする一方、室内高は10mmアップさせた。座席は先代同様、「2+2+3」の7人乗りか「2+3+3」の8人乗り。オットマン機能は7人乗り仕様の2列目だけでなく、助手席にも装備される。
パワーユニットは、2.4リッター直4「2AZ-FE」(170ps/6000rpm、22.8kgm/4000rpm)と3.5リッターV6「2GR-FE」(280ps/6200rpm、35.1kgm/4700rpm)の2本立て。直4、V6ともに、先代モデルよりパワーアップを果たした。
なお、2003年7月に登場したハイブリッドバージョンは、新型ではカタログ落ち。エコロジーなミニバンの役割は、「エスティマハイブリッド」に一任されることになった。
(グレード概要)
「ヴェルファイア」は、2代目「アルファード」に追加された兄弟モデル。2段積みのヘッドランプなど、アルファードとは異なる個性が与えられ、若向け販売チャネル「ネッツ店」で扱われる。
グレードは大きく分けて、ベーシックな「X」、装備を上乗せした「V」、さらにエアロパーツで飾った「Z」の3種類があり、それぞれ7人/8人乗りが用意される。
3.5リッター(7人乗り)の「V」では、快適温熱シートやツインムーンルーフなどが備わる“L EDITION”が選べ、「Z」には、今回のテスト車でもある“G EDITION”がラインナップ。2列目のエグゼクティブパワーシート、助手席パワーオットマン、デュアルパワースライドドアなどが備わる最上級グレードである。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
フロントウィンドウまでが遠く、広々とした空間がうれしいコクピット。ダッシュボード形状は比較的すっきりとしていて、使われるブラスチックや木目調パネル、メタリックのデコレーションなどいずれも質感が高く、巧みに上質さを演出している。シート同様、ソフトなファブリックが施されたドアトリムは温かみを感じる仕上がりだ。
メーターは大型の速度計と回転計を配した見やすいデザイン。メーターを囲む太いリングが目立ちすぎる感もあるが、まあ許せるレベルだ。
メーカーオプションの「ワイドビューフロント&サイドモニター」はクルマの直前や左右、左側面など、目視しにくい部分の確認に重宝する。
(前席)……★★★★
運転席に座ると、セダンのルーフを見下ろすほどアイポイントが高く、見晴らしは抜群。直線的なボディラインのせいか、外から見るほど、大きなクルマを扱っている感じがしないのは助かるところだ。
たっぷりとしたサイズのファブリックシートは、身体にフィットする形状で、座り心地や身体の沈み加減も適切。ポジション調節はスライド、リフト、リクラインが電動で、一方、ステアリングコラムは手動ながら、チルト、テレスコピック調節が可能だ。
助手席は、リフト調節が省かれる一方、電動のオットマンが備わり、長距離移動の際には疲労軽減に貢献する。
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(2列目シート)……★★★★
ヴェルファイアには3通りのセカンドシートが用意される。7人乗り用の「エグゼクティブパワーシート」と「リラックスキャプテンシート」、そして、8人乗り用の「6:4分割チップアップシート」だ。このうち、エグゼクティブパワーシートは、3.5Z“Gエディション”、または、3.5V“Lエディション”に専用の装備で、ビジネスクラスを思わせるサイズと機能が魅力的だ。
セパレート型のシートは横方向の余裕が十分なことに加え、前後のスライドが可能。一番前のポジションでもさほど窮屈な思いはしない。リアのホイールハウスに当たるまで後ろに下げれば足もとには有り余るスペースが生じる。ここで威力を発揮するのが電動オットマンと電動リクライニングの機構で、フロントシート背後に設けられたフットレストとあわせて、楽な姿勢がとれるので、とにかく快適。走行時の乗り心地も快適である。
(3列目シート)……★★★
立派なセカンドシートに比べると見劣りするものの、それでも大人が余裕をもって座れるだけのスペースが確保されている。スライド、リクラインが備わり、シートバックの高さも十分。アイポイントが高いため、視覚的に窮屈な感じもない。
乗り心地に関しても、辛い突き上げなどはなく、他のシートに比べて多少上下動が目立つのが気になるくらい。いざというときには3名で座ることが可能で、そのためのヘッドレストも用意されているが、中央席はあくまで補助席と割り切ったほうがいい。
(荷室)……★★★
さすがにサードシートを後ろまで下げると、奥行きは20cm弱と狭いが、サードシートを前に出せば40cmほどまで広がり、6〜7人分の手荷物ならなんとか収まる。その点、ベースとなった「エスティマ」のほうが収納能力は高く、また、エスティマがサードシートを床下に収納するのに対し、ヴェルファイアは横に跳ね上げるタイプなので、ここでもエスティマの優位性は明らかだ。
では、ヴァルファイアのアドバンテージはなにかといえば、サードシートを床下に収納しない代わりにリア付近のボディ骨格をストレート化できたこと。ボディ剛性が高まり、後席の乗り心地や静粛性が向上している点だ。人を優先させればヴェルファイア、荷物を考えるとエスティマ、ということになる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ヴェルファイアには、レギュラーガソリン仕様の2.4リッター直列4気筒とハイオク仕様の3.5リッターV6という2種類のエンジンが用意される。10・15モード燃費は2.4直4が11.6km/リッター、3.5V6が9.5km/リッターだから、後者を選べばますますガソリン代が嵩むのは目に見えている。
しかし、それを承知の上でV6を選べば、高い満足感が得られるのは確か。6段ATとの組み合わせでは、出足に余裕が感じられるとともに、低回転でも十分なトルクを発生する。2000rpmを超えると一段と力強さを増して、そこからは回すほどにスポーティな性格が押し出される。レスポンスの良さやスムーズさ、巡航時の静粛性も抜群で、運転して楽しいエンジンである。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
旧型アルファードに比べて45mm低くなったとはいえ、それでもヴェルファイアの全高は1890mmとかなり高い部類に入る。そんな見た目とは裏腹に、ヴェルファイアの振る舞いは落ち着いていて、ピッチングやロールもさほど気にならないレベルに抑え込まれている。それでいて、乗り心地は程よくソフトで、細かい凹凸のある路面を通過するようなときでも、快適な乗り心地が保たれるのだ。
高速では多少ピッチングが見られるが、それでもフラット感は十分。低い速度域では、中立付近に多少不自然さを覚えたステアリングも、スピードが上がると気にならなくなり、舵のすわりも良好、直進安定性も優れている。目地段差を越えた際のハーシュネスも上手く遮断。これなら、ドライバー、パッセンジャーのどちらからも、文句は出ないだろう。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2008年6月4日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:1678km
タイヤ:(前)235/50R18(後)同じ(いずれも、TOYO TRANPATH R30)
オプション装備:インテリジェントパーキングアシスト+ワイドビューフロント&サイドモニター(8万1900円)/プリクラッシュセーフティシステム+レーダークルーズコントロール+レーンキーピングアシスト(32万8650円)/HDDナビゲーションシステム&トヨタプレミアムサウンドシステム+音声ガイダンス機能付きカラーバックガイドモニター+ETCユニット(69万4050円)/G-BOOK mX Pro専用DCM+盗難防止システムオートアラーム(6万6150円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4):高速道路(5):山岳路(1)
テスト距離:308.4km
使用燃料:40.2リッター
参考燃費:7.7km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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