クライスラー・グランドボイジャー リミテッド(FF/6AT)【試乗記】
ミニバンの生みの親 2008.06.24 試乗記 クライスラー・グランドボイジャー リミテッド(FF/6AT)……546.0万円
2007年の東京モーターショーで日本初披露された「クライスラー・グランドボイジャー」。7年ぶりにフルモデルチェンジを果たした、アメリカ生まれの3列シート7人乗りミニバンを試す。
「300C」を彷彿とさせるデザイン
いまやミニバンとコンパクトカーばかりがもてはやされる日本市場に、ミニバンの生みの親であるクライスラーが最新モデルを送り込んできた。1983年登場の初代から数えて5代目にあたる「グランドボイジャー」だ。
先代では、標準の「ボイジャー」とロングホイールベース版のグランドボイジャーのふたつが用意されていたが、5代目はロングホイールベース版のみのラインナップ。
スリーサイズが全長5145×全幅2005×全高1755mmのグランドボイジャーは、“ミニ”バンというのがはばかられるほど立派なサイズである。ボディ全体が丸みを帯びていた旧型に対して、新型は「クライスラー300C」を担当したデザイナーが手がけただけに、スクエアなフォルムが印象的。そのせいでサイズアップはわずかであるにかかわらず、実物を目の当たりにすると数字以上に大きくなったように思えるのだろう。
特に、ルーフに向かってすぼんでいたデザインをやめたのが効いているに違いない。おかげで、日本車っぽいというか、個性が薄れたようにも思えるが、装備や機能といった部分にはグランドボイジャーらしさを色濃く残しているのはいうまでもない。
自慢の「Stow'n Go」も進化
最近では日本のミニバンでも常識だが、かつてクライスラーが“ミニバン初”の機能として紹介した両側電動スライドドアや電動リフトゲートは、このグランドボイジャーでも標準装着。サードシートだけでなく、セカンドシートまで床下に収納できる「Stow'n Go」は、この新型ではサードシートの操作が電動化(リミテッドに標準)されている。
さらに、サードシートバックとクッションを後方に90度回転させると、リヤゲートから外が眺められる“スタジアムポジション”が実現するなど、細かい進化も見せているのだ。
ラゲッジスペースも広大だ。3列をすべて使う状況でも、残された収納スペースには60cmほどの奥行きがあり、フロアが深くえぐれていることもあって収納能力は非常に高い、セカンドシートを収めるために用意される床下のスペースも、通常は収納スペースとして使えるから、小物の収納には困らない。
その一方で、セカンドシート、サードシートとも、巨大なボディサイズから期待されるほどには足もとの余裕がない。もちろん、大人が乗れるだけのスペースは確保されているのだが、もう少し座面が高ければ自然な姿勢が取れそうなだけに、詰めの甘さが惜しまれる。
扱いやすいエンジン
エンジンは旧型の3.3リッターV6OHVを3.8リッターに排気量アップ。最高出力193ps/5200rpm、最大トルク31.1kgm/4000rpmを誇る。組み合わされるトランスミッションはオートスティック機構付の6段オートマチック。日本仕様はインパネシフトではなく、フロアシフトが採用されるが、シフトレバーが遠いのがすこし不便である。
しかし、いざ走り始めると、エンジンの扱いやすさに思わず笑みがこぼれる。決して高回転が得意でない一方、常用する低回転域では排気量の大きさを活かした豊かなトルクを発生して、2トン強のボディを不満なく加速させるからだ。
一方、グランドボイジャーの走りっぷりは、低速でこそやや硬さが気になるものの、スピードが上がれば落ち着いた動きを見せ、不快なロールやピッチングもよく抑えられている。静粛性、とくにセカンドシートに陣取ったときの静粛性が高いのもうれしい点だ。
日本のライバルたちが実力を上げるなか、着実に進化を遂げているグランドボイジャー。ラージサイズのミニバンを求める人には、まさに待望の新型といえる。だが、10・15モードで6.8km/リッターという燃費は頭が痛いところ。どれだけの人がその余裕と引き替えにこの燃費を受け入れられるのか、気になるところではある。
(文=生方聡/写真=峰昌宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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