クライスラー・グランドボイジャー(FF/6AT)【海外試乗記】
まぎれもないボイジャー 2007.12.27 試乗記 クライスラー・グランドボイジャー(FF/6AT)新生クライスラーの新型ミニバン「グランドボイジャー」。最新システムや独自のシートアレンジなど多数の新装備を搭載したニューモデルにスペインで試乗した。
「グランドボイジャー」のみに
ミニバンのパイオニア、「クライスラー・ボイジャー」がフルモデルチェンジした。横置きエンジン前輪駆動、両側スライドドアの3列シート7人乗りというパッケージングは同じ。しかし現行型で2種類あるボディは、標準型(?)たる「ボイジャー」が落ち、長い「グランドボイジャー」に一本化された。
すでに発売されている北米仕様は「タウン&カントリー」を名乗り、ダッジ・ブランドから「キャラバン」としても販売されているのに対して、日本を含めた海外市場では従来どおり「グランドボイジャー」と呼ばれる。来2008年第2四半期といわれる日本導入前にスペインで乗ってきた。
ボディサイズは現行型とほぼ同じだが、見た目の存在感ははるかに上だ。グリルを大きくしてクロームメッキを多用したことも効いているが、それ以上にボディサイドの違いが大きい。ルーフ幅を152mm広げるとともにウエストラインを上げ、サイドシルは逆に下げて外に出したおかげで、重厚な雰囲気を獲得しているのだ。
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国産に負けないシートアレンジ
運転席はシートに対してインパネやベルトラインが上がり、ウインドスクリーンの傾きが強まって、セダンやワゴンに近い環境。質感は「クライスラー300C」より上で、クライスラー・グループではトップレベルだ。
メーター横のインパネシフトになったATセレクターは扱いやすいとはいえないけれど、右ハンドルの日本仕様はおなじみのコラムシフトになるというから心配する必要はない。
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前席の座り心地は固めだが、たっぷりしたサイズはアメリカ車ならでは。形状もよく、長時間乗り続けても疲れない。ベルト内蔵の2列目は、身長170cmの自分なら足が組めるほどの広さ。着座感も前席にまったく劣らない。3列目はスペースもシートサイズも一段落ちるけれど、座面や背もたれにしっかり角度がついているので、補助席的な印象は薄い。
シートアレンジは、現行型の途中で2、3列目をすべて床下に格納できる画期的な「Stow'n Go」を導入したばかりなのに、新型ではさらに「Swivel'n Go」も登場した。その正体は、かつての日本製ミニバンでポピュラーだった2列目回転対座シートなのだが、シートベルト内蔵だから逆向きでも安全性が確保される点が違う。
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向かい合う3列目には6:4分割の電動格納機構を用意。変幻自在のセンターコンソールボックスを含めて、いろんな場所にわが国のミニバンの影響がうかがえる新型だけれど、もちろんアメリカ車ならではという部分もある。そのひとつがイルミネーション。オーバーヘッドコンソールがメーターと同じグリーンの淡い光を放ち、ナイトドライブを演出してくれるのだ。
パワーと静粛性も向上
エンジンは現行型と同じ3.8リッターV6で、プラス19ps/2.8kgmの性能向上を手に入れている。しかもATが4段から一気にマニュアルモードつき6段に進化した一方で、車重はほぼ同じだから、発進ではスッと出るようになり、その後の加速もレスポンシブになった。もともとすぐれていた静粛性もさらに向上したようで、1750rpmの100km/hクルージングは安楽そのものだ。エンジンはいまだにOHVなのに6000rpmまで回るが、そこまで使う必要はない。
直進安定性はすばらしい。リアがついにリーフリジッドからトーションビームになったサスペンションは、低速ではややゴツゴツした乗り心地を届けるけれど、50km/hも出せばアメリカ車らしいマイルドなフィーリングに変わっていく。山道ではリニアなステアリング、ロングホイールベースやワイドトレッドを生かした安定したコーナリングも体感できた。でも心地いいのはハイウェイクルーズ。その点で新型もまた、まぎれもないグランドボイジャーだった。
(文=森口将之/写真=クライスラー日本)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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