日本で人気の最新ミニバン、北米ではナゼ売れない?【後編】
2008.06.16 自動車ニュース日本で人気の最新ミニバン、北米ではナゼ売れない?【後編】
アメリカから、日米ミニバン市場の違いをリポート。前編に続いては、両市場の“いままで”を振り返り、“これから”を予測する。
■本場北米のミニバン事情
(前編からのつづき)
ミニバンの元祖は、1980年代なかごろの「ダッジ・キャラバン」だと言われている。当時、事業再建中だったクライスラー社の社長は、アイアコッカ氏。キャラバンは同氏が1960年代にフォード社で商品企画の陣頭指揮をとったマスタングを彷彿とさせるヒット作となった。その後もダッジ・キャラバンはアメリカンミニバンの代表選手だった。
1990年代の日本では、「シボレー・アストロ」がブームになった。思えばあれは、日本の自動車雑誌と輸入車業者が巧妙に仕組んだ“アメリカンドリーム”だった。確かに当時、ラスベガスSEMAショーなどアフターマーケットの一部では、エアロパーツを装着したりボディペイントをするアストロが見られた。
だが、LAでもNYでもアストロはただの商用バン。日本で大量発生したような風貌のアストロをアメリカの街中で見かけることはまずなかった。
ブームの舞台裏がどうであれ、アストロに新たなる光明を見出した日本メーカーは、「日産エルグランド」や「トヨタ・アルファード」を生み出した。タイヤメーカーは、ミニバン専用タイヤまで開発。日本専用の大型ミニバン市場は進化を続けている。
最近の北米市場では、日本メーカーが国内のノウハウを随所に散りばめた「トヨタ・シエナ」や「ホンダ・オデッセイ」(日本向けよりかなり大きな北米専用車)の人気が定着している。韓国メーカーのキアも、レンタカーなどで着実に販売を伸ばしている。
対するGMは、ミニバンとSUVのクロスオーバーを銘打つ「シボレー・アップランダー」とその兄弟車を登場させたが、低人気であえなく消滅。その後、「GMCアルケディア」などのV6ミッドサイズSUVへと方向転換した。
アメリカでのミニバン市場は、しぼむことはなくとも、もはや成長過程にはないと言えよう。
■和製ミニバンのこれからは?
では、われらが日本国内のミニバン市場は、今後どう展開するのか?
注目は、次期「日産エルグランド」だ。日産関係者の間では「日米大型ミニバンの一本化」が囁かれている。“トールハイトでエグイ顔”で売ってきたエルグランドの次期型は、(トヨタのエルグランド対策車=ヴェルファイアとのガチンコ勝負を嫌って?)ロー&ワイドになるかもしれないのだ。
次期エリシオンも「クルーザー」と称する現行コンセプトを貫くのか、それとも威風堂々アルファード路線へ方向転換するのか、微妙なところだ。
ミドルサイズミニバンは、文字通り大型/小型ミニバンの中間をどう生き抜くのかが課題だ。トヨタには、アルファード/ヴェルファイアとノア/ヴォクシーのどちらにも満足しない人のために、「エスティマ」がある。マツダの次期MPVは、余裕のエスティマに、Zoom-Zoom路線で真っ向勝負を挑むのか? あるいは大型ミニバンに変貌し、次期エルグランドが模索している日米共通モデルになるのか?
そして、最もホットな、ノア/ヴォクシー、ステップワゴン、セレナらがひしめく200〜250万円クラス。今後は「マツダ・ビアンテ」、「スバル・エクシーガ」も参入する。ガソリン高が進む中、大型ミニバンとともに「日本専用&日本文化特化型」として、さらに熟成されていきそうだ。
これらが今後北米に導入されるかどうかは未知数だが、いずれにせよ、楽しみなことである。
(文=桃田健史(IPN))
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