ジープ・チェロキー リミテッド(4WD/4AT)【試乗記】
これからの成長株 2008.06.13 試乗記 ジープ・チェロキー リミテッド(4WD/4AT)……444万1500円
7年ぶりのフルモデルチェンジで、エクステリアデザインが一新された「ジープ・チェロキー」。新開発の電子制御システムが備わる新型の実力やいかに? オフロードとオンロードで試す。
ひと目でジープとわかるけど……
ジープのラインナップといえば、つい数年前までは、「ラングラー」「チェロキー」「グランドチェロキー」の3モデルだけだったが、気がつけば、7シーターの「コマンダー」、4ドア版ラングラーの「ラングラー アンリミテッド」、エントリーモデルの「パトリオット」が追加され、より幅広いファンの期待に応えることに成功。おかげで、このところはかばかしくない輸入車市場のなかで、確実に販売台数を伸ばしている。
そんな好調のジープブランドをますます強力にバックアップしてくれそうなのが、先頃3代目に進化した新型「チェロキー」だ。
やや丸みを帯びたフロントマスクやボディのデザインが裏目に出て、初代ほどの存在感を示せなかった2代目チェロキー。その反動からか、新型チェロキーはスクエアなフォルムに回帰。伝統の7本スロットグリルは精悍さを増し、角張ったフェンダーとあいまって、ジープらしい力強さを手に入れている。
ただ、あまりにも特徴的なデザインなので、ひと目でジープとわかるけれど、チェロキーなのかパトリオットなのか、あるいはコマンダーなのか、遠目から判別しにくいのが玉にキズだ。
先代に比べてボリューム感を増したボディは、資料を見てビックリ! 旧型に比べて全長が20mm短く、4500mmに過ぎないのだ。これは、旧型がリアゲートにスペアタイヤを背負っていたためで、スペアタイヤを床下に収納する新型は、実質的には全長が伸びたことになる。
スペアタイヤから解放されたリアゲートは、スイングゲート(横開き式)からリフトゲート(はね上げ式)に変わっているが、独立して開閉できるリアウィンドウは健在。付け加えておくと、全幅はプラス10mmの1830mm、全高は35mm低い1785mmである。
ジープの面目躍如
新開発のプラットフォームは、「ダッジ・ナイトロ」と共通のもの。サスペンションは前:ダブルウィッシュボーン、後:5リンクリジッドで、ラックピニオンのステアリングを採用する。搭載されるV6の3.7リッターSOHCエンジンもナイトロと同じで、最高出力205ps/5200rpm、最大トルク32.0kgm/4000rpmを誇る。
もちろん、ジープらしさをアピールする部分もある。そう、カンジンの4WDシステムだ。ナイトロが後輪駆動と直結4WDを切り替えるパートタイム4WDであるのに対し、チェロキーは「セレクトラックII」と呼ばれるフルタイム4WDを搭載するのだ。
セレクトラックIIは、前後アクスルの間に電子制御カップリングを設け、これをコントロールすることで、前後に最適なトルクを配分する「4×4オートモード」、直結4WDとローレンジギアで走破性を高める「4×4ローモード」、後輪駆動の「4×2」という3つのモードを実現する。
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モードの切り替えはセンターコンソールのスイッチを操作するだけと、いたって簡単。これに加えて、急斜面を下るときに威力を発揮する「ヒルディセント・コントロール(HDC)」、急斜面での発進時にブレーキ圧を2秒間維持する「ヒルスタートアシスト」を搭載する。タイヤは235/60R18のオンロード用のオールシーズンタイプが装着されている。
さっそくその実力を試すために、オフロードコースに繰り出すことにした。前日までの雨でコースはかなりぬかるんでいるが、4×4ローモードをセレクトして走り出すと、滑りやすい道でもどんどん前に進んでいく。
途中、タイヤが空転するような場面もあったが、前後アクスルにデフロックを持たないチェロキーでは、空転するタイヤにブレーキをかけることでトラクションを確保する「ブレーキ・ロック・ディファレンシャル」が働いて、スタックの憂き目を見ずに済んだ。
急勾配を下るときにはHDCのスイッチオンで、まさに歩むようなスピードを維持するから、ドライバーは安心してステアリング操作に専念することができる。とはいっても、いつもとは勝手が違うオフロード走行は、冷や汗をかく場面もしばしばあり、わずか30分の道のりがとても長く感じられた。
ピシッ! と走るオンロード
汗が引いたところで、今度はオンロードへ。あらためてコクピットを見渡すと、フロントウィンドウまでの距離が近く、またダッシュボードが薄いところなどラングラーによく似ている。ブレーキペダルに対してアクセルペダルが奥まっているのは似ていなくてもいいのだけれど……。
そんなことを考えながら走り出すと、オフロードコースで見せた豊かなストロークとは対照的に、少し硬めに躾けられた足まわりがピシッ! とした動きを示し、そのギャップに驚く。路面の悪さをタイヤが拾いがちなことを除けば、乗り心地は実に文化的で、直進性の高さにも不満はない。これなら、街なかでも快適に過ごすことができそうだ。
3.7リッターエンジンは、4ATとの組み合わせでも十分な加速性能を持つのはいうまでもないが、排気量から期待するほど余裕たっぷりという感じはしない。
スペックからもわかるように4000rpmでピークを迎えるトルク特性が、もう少し低回転寄りなら、さらに扱いやすいはずだ。気になったのは、4×4オートモードを選んだときにフロントアクスル付近から伝わってくる振動で、路面状況が許すかぎりは後輪駆動に切り替えたほうがいいと思う。
ところで、今回の試乗で残念だったのが、新型チェロキーにオプション設定される大型キャンバストップ「スカイスライダー」を試さずに終わったこと。プラス17万8500円で手軽に開放感が味わえるのは見逃せない。機会があればぜひ試してみたいが、できれば都会ではなく、透きとおった風の中で、その魅力を堪能したい。ジープには、やはりそんなシーンがよく似合う。
(文=生方聡/写真=峰昌宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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