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第445回:遂に初潜入「オートエキスポ2012」 知られざる自動車大国、インド!!(後編)

2012.01.19 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第445回:遂に初潜入「オートエキスポ2012」知られざる自動車大国、インド!!(後編)

大勢の観客に囲まれた、「AUTO EXPO 2012」のマルチスズキ・ブース。現地での注目度の高さがうかがえる。
大勢の観客に囲まれた、「AUTO EXPO 2012」のマルチスズキ・ブース。現地での注目度の高さがうかがえる。 拡大
マルチスズキが出展した「エルティガ」。
マルチスズキが出展した「エルティガ」。 拡大
同じくマルチスズキから。「コンセプトXAα」
同じくマルチスズキから。「コンセプトXAα」 拡大

意欲的な日本メーカー

(前編からの続き)
インドのオートショー「AUTO EXPO 2012」で外せないのは、何と言っても日本勢だ。
まずは、現地インドの乗用車マーケットを牛耳ってる、われらがスズキ!  “カリスマ”鈴木修会長の英断で、国営メーカーのマルチ社とタッグを組んで1982年に「マルチスズキ」を設立。翌83年には、当時日本で売られていた「アルト」をちょいと延ばした「マルチ800」出して大成功。その後も見事にインドの乗用車マーケットをリードし、今やそのシェアは45%! で、2011年は100万台以上を生産。まさにキング中のキングなのだ。

インドの街を見渡せば、どっかで見たような(?)スズキのクルマがちらほら。1、2世代前の「アルト」や「ワゴンR」が走り回っていて、妙な親近感を覚える。今回も「JOY OF LIFE」という印象的なキャッチフレーズを掲げ、ショー全体を大々的にバックアップ。メインといえる、7番ゲートに近いブースを専有し、“ボリウッド”(インド版ハリウッド)風のハイクオリティーなコマーシャルを流すなど、存在感は際立っていた。

出展車を見ても、スズキが市場をリードしているのは一目瞭然なのよ。例えば今回のショーで発表されたミニバン「エルティガ」。フィアットが設計した1.3リッターのディーゼルエンジンと新開発の1.4リッターガソリンエンジンを搭載する、マルチスズキとしては初の3列シートミニバンで、最大のポイントはそのボディーサイズとお値段だ。

全長4265×全幅1695×全高1865mmのサイズは、過去のインド製ミニバンにない短いもので、価格は60〜70万ルピー、つまり100万円前後と目されている。インドでは既に乗用ミニバンがいくつか発売されており、「トヨタ・イノーバ」などが人気だが、どれも100万ルピー超えでかなりの高級車といえる。よって、大家族主義のインドでその大衆向けが出たらバカ売れするのは間違いない。スズキは、そこに目を付けたのだ。

「日産エヴァリア」
「日産エヴァリア」 拡大
「トヨタ・エティオス」
「トヨタ・エティオス」 拡大
トヨタブースにて。「エティオス」のワンメイクレース開催計画発表の模様。
トヨタブースにて。「エティオス」のワンメイクレース開催計画発表の模様。 拡大

それと注目のもう1台が、SUV「コンセプトXAα」。文字通りコンセプトカーで詳細は明らかにされていないが、これまた全長4m以下のサイズがポイントだ。所得水準が低いインドでは、ガソリン代が比較的割高になり、燃費の悪い大型車はあまり売れない。それに最近打ち出された小型車優遇税制もあって(全長4m以下のインドでいう「A2クラス」は物品税が10%以上減免される)、このカテゴリーの人気が爆発的に高まっている。「XAα」は、そこを狙ったクルマなのだ。「ちょっと先行くプロダクト戦略」が強みのスズキ、今回もそれが遺憾なく発揮されたようだ。

ほかの日本メーカーも頑張っている。今年は日産が「NV200バネット」をベースとする「エヴァリア」を発表。ポイントは、現地インド工場で作れるVプラットフォームを使ったミニバンである点で、今後はアジアの広い地域で売っていくつもりらしい。価格設定次第では、かなりのセールスが期待できそうだ。

トヨタも、去年発表した初のインド向けコンパクト「エティオス」を使った、ワンメイクレースの開催計画を発表した。
スポーツモデルでもないのに「レース」というのは意外だが、これも練られた戦略的セールスプロモーションなのだ。というのも、いまインドでクルマを買うのは30代が中心で、しかも、世界で2番目にF1ファンが多いモータースポーツ好きの国民だから。レース活動そのものより、「エティオス」のレーシングカーを駆る若いトレンドリーダーを作るのが狙い。日本や欧米では聞いたことのない、新しいマーケティング手法なのだ。

会場の外でもビックリ

ってなわけで、ショー会場の雰囲気も展示車両も欧米や日本とはかなり異なるインドだが、違いがもっと印象的だったのは、その外で見られた道路事情だった。

まずはガンジー空港だ。到着ロビーを出るや全体がモヤーっとしていて、妙に白っぽい。後でわかったことだが、そこら中でたき火を、それもガソリンをまいた布などを燃やしているせいなのだ。

新興国にありがちな渋滞は当然のこととして、それ以上に、クルマと混在して歩く“車道の人”の数がハンパじゃない。
路肩はもちろん、センターライン上も人がワンサカ歩き、交差点では、クルマが止まる前から当たり前のようにフラフラと人が飛び出してきては鼻先をかすめる。

数年前の中国の上海や北京でも、キレイに整備された高速道路の路肩を歩く人を、必ずと言っていいほど見かけた。だが、これほどまでに人とクルマが“入り乱れている”国は他に見たことがない。多くの交差点に信号がないのが一番の原因だが、この感覚は日本人には理解不能だ。

クルマに乗る側の安全意識にも驚かされる。コンパクトカーのリアシートに4〜5人乗るのは当たり前。トラックの荷台に大勢乗っているだけじゃなく、うずたかく積み上げた荷物の上に、さらに人が座ってたりする。

命の安さ、リスクの高さは、間違いなく今まで見た新興国の中で一番。交通事故者数が社会問題化しているのもよく分かる。2000年に8万人だった交通事故の年間死亡者数は、2011年では12万人に達しているとか……その数、日本(4611人)のおよそ26倍!
インドの総人口は約12億人で日本の約10倍だから、その危険率は高いと言わざるを得ない。今回のモーターショーでも、子供を対象としたセーフティードライブのデモなどを見かけたし、交通事故は社会問題化しているようだ。

2人乗りのオートバイは、必ずと言っていいほどライダーがヘルメットをかぶっていて後ろの人はノーヘルなのだが、これは「1台につき、ヘルメットは最低1個」が義務付けられているのに関係がある。つまり、金銭的に余裕がないから、運転者だけ。安全確保のためには、お金の問題が関わることを、インドに来ると実感させられる。

街なかで見かけたコンパクトカー。ボディーのでこぼこが、交通環境の厳しさを物語る!?
街なかで見かけたコンパクトカー。ボディーのでこぼこが、交通環境の厳しさを物語る!? 拡大
こちらは、地元インドのメーカー「ヒーロー」のオートバイ。
こちらは、地元インドのメーカー「ヒーロー」のオートバイ。 拡大

悩んだらインドでリフレッシュ!

インドの路上でもう驚きなのが、動物の多さ、というか動物との距離の近さだ。犬はもちろん、牛、馬、ブタ、イノシシが、都市部から郊外に至るまで、路上に横たわっていて……不思議な共生観(?)を味わえる。「飼う」という概念の違いなのか!? おりで管理しないと、自然にこうなるのだろう。日本では、豊富に出回る食肉の“元の姿”を直接見る機会が少なくなっているが、インドではそうなってないのだ。

インドに行って、何が面白くて、何がショックかって、今まで自分が長らく培ってきた常識や固定観念、特に衛生だの安全だのに対する観念が揺らぐことだ。日本にいると「蛇口から飲み水が出る」のは当たり前で、「食べてオナカを壊さない」のも当たり前。「バイクでヘルメットをかぶる」のも当たり前だが、インドではほとんどそれが実行されてないし、なかなかできない。この事実に、われわれ日本人はショックを受けるのである。

自分自身、40年以上も常識と思っていたことが常識ではなくなった。これは、なかなかフレッシュで、衝撃的な体験だ。
今の日本、お仕事していると行き詰まったり、イヤになることも多いと思う。そんなひとには、ぜひインド行きをオススメしたい。こんな国もあるんだ!? なんて、頭がリフレッシュされること請け合いだ。

実際インドから帰ると、素直に「日本って素晴らしい!」って思えることがたくさんある。トイレのキレイさ一つとっても(笑)。それを実感できただけでも、インドに行った価値は十分あると俺は思っている。

(文と写真=小沢コージ)

「AUTO EXPO 2012」の会場から。屋外で憩う来場者たちの様子。
「AUTO EXPO 2012」の会場から。屋外で憩う来場者たちの様子。 拡大

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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