第359回:日本永住決定?
新型クラウンが吹っ切れた本当のワケ
2008.05.13
小沢コージの勢いまかせ!
第359回:日本永住決定? 新型クラウンが吹っ切れた本当のワケ
中国市場は別デザインで行く!
いやー、なんだかんだ売れてるみたいですねぇ、新型クラウン。発表一ヶ月で約2万4000台、4月の登録も1万台突破で好調好調! ま、いつもある程度売れることはわかっている定番ブランドとはいえ、この新車不況の中、素晴らしいこってす。
でね。そのポイントなんだけど、やはり最近の風潮に合わせてモダンになったボディデザインだとか、基本骨格を先代“ゼロクラウン”から変えずに乗り心地を熟成させたからだとか、“電子プラットフォーム”という考え方を取り入れて各種ハイテクがスムーズに連動するようになったからとか、いろいろ言われているみたいだけど、不肖・小沢はこう思うのよね。
“クラウンは日本永住を決めたから売れるようになった”と。そう、なんちゅーか、今どきのグローバル社会。鎖国を決めて逆に吹っ切れたのが「クラウン」という日本最高かつ最古のクルマブランドなのよ。結局、“サムライ”なのよねクラウンは。
というのも俺は聞いてしまったのだ。チーフエンジニアの寺師茂樹さんに。
「クラウンは、先代のゼロクラウンで世界を戦うってテーマでいろいろやってきましたが、意外とこれまでのお客様がついてこられた。『こんなに変えて大丈夫?』という意見があったけど、実はストライクゾーンの真ん中だったんです。我々メーカーのほうがコンサバティブな部分があった。よって今回はその方向性を変えずに熟成し、やり過ぎた面を修正していっているんです」
「それともう一つ重要な決定事項がありました。クラウンは日本の他、中国でも発売してるんですけど、次世代(新型クラウン)の中国向けは別デザインでいくことが決まったんです。あちらではアウディA6のストレッチリムジンが売れたりとか、日本とはメンタリティがまったく違う。だからもっと大きくてダイナミックなものにしようと。そう決まると日本のクラウンは、もっと気持ちよく、国内だけを考えたほうがいいんじゃないかってなったわけですよ」
現在、中国の他には月20台もアジア各地に売れればいいという状態のゼロクラウン。そんな状態で中国は別になったわけだから、今後この形のクラウンは国内専用車、つまり事実上の“日本永住”が決まったわけだ!
日本のクルマ文化は“鎖国”
具体的にはヘンにヨーロッパ車を意識したり、ダイナミックさを求めず、国内の根強いファンと共に歩むことを決めたのである。もちろん、今後、突発的に別方向に進化していく可能性も残ってはいるけどね。
で、結局俺は、この英断こそがクラウンの現在の成功に繋がったと考える。実際、今回の13代目クラウン、特に3.5リッターV6搭載のアスリートはかなり良かった。
レクサスGS譲りの315psのV6は、6段ATと相まってあくまでもスムーズかつパワフルに吹け上がる。ステアリングフィールは相変わらず物足りないが、乗り心地はとてもアスリートとは思えないほどフラットでスムーズ。特にリアシートの居住性、静粛性は前にも増して良くなったんじゃないかと思うくらい。
それでいてスタイリングは輸入車ほどのダイナミックさはないものの、今のトヨタ全体のデザイン路線に合わせて程よくモダンになった。かつ全幅1.8m以内をキープし、最小回転半径も5.2mと、国内での使い勝手を十分考慮している。
ハイテクだってハイブリッドモデルを用意したり、最新のVDIMを入れたり、完璧にアップデートしている。
ってなわけで保守&革新、非常にバランスの取れたクルマに仕上がってる最新型なのである。
一方、不肖・小沢は思うのだが、つくづく日本のクルマ文化は“鎖国”に向かってる気もする。もちろんその省燃費技術や、質の高いクルマ作りは世界に通用すると思うが、クラウンしかり、軽自動車しかり、そのサイズ感やスタイル、走りに対する考え方は結局日本独自のまま発展し、終わるのである。
浮世絵のように世界で文化として評価され、興味を持たれるクルマになってほしいと思っていたクラウンだが……。残念、そうならないよぅ。
それが唯一、俺の心残りでしょうかね。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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