(写真=北畠主税<ARGOS>)
アルピナB3ビターボ・リムジン(FR/6AT)【短評(前編)】
M3より男らしい(前編) 2008.05.03 試乗記 アルピナB3ビターボ・リムジン(FR/6AT)……995万円
BMW3シリーズ(E90)をベースにした最新のアルピナ「B3ビターボ・リムジン」。高評価をうける335iを素材にアルピナはいかに調理したか?『CG』塚原久が試した。
『CG』2008年2月号から転載。
パワーとトルクを大幅アップ
E90型3シリーズがデビューしてから2年以上が経ち、トップモデルのM3がやっと発売されるなど、モデルとして完成した感がある。あとはそのM3に搭載されるという噂の改良型SMGを待つばかりだが、シリーズの中で最もパワフルな335iをベースとした、アルピナの新しいB3が日本に上陸した。B3ビターボ・リムジンという名が示すとおり、4ドアセダンボディを持つ最新のアルピナの登場である。
現行BMW3シリーズのフラッグシップとして335iが導入された時、ターボの悪弊を完璧なまでに取り除いたエンジンのマナーに驚きつつも、このリニアなトルクカーブと優れたレスポンスはそのままにもう少しブースト圧を上げ、トップエンドの伸びを加えたらどんなに素晴らしいスポーツセダンになるだろうと思わずにいられなかったが、アルピナがそれを現実のものにしてくれた。
直列6気筒3リッターエンジン+ツインターボというエンジンの基本的な構成はそのまま引き継いでおり、2979ccの排気量(ボア・ストローク:84.0×89.6mm)、ダブルVANOS付きの直噴シリンダーヘッド、3気筒にひとつの三菱重工製の小径タービンによって過給するというところまで同じながら、マーレーが開発したアルピナ専用のピストンを採用することによって圧縮比を10.2から9.4まで落とし、それと引き替えにブースト圧を335iの最大0.6barから1.1barへと大幅に上げ、結果的に370ps(272kW)/5500rpm、51.0mkg(500Nm)/3800〜5000rpmへと、パワー、トルクともに大幅なアップを果たしたのだ。
参考のために335iのスペックを挙げておくと306ps(225kW)/5500rpm、40.8mkg(400Nm)/1300〜5000rpmだから、パワーで64ps(21%)、トルクにして実に100Nm(25%)ものスープアップを果たしている計算になる。
|
パワーアップとのトレードオフはなし
という数値を先に耳に入れてしまうと、やっぱりボトムエンドではそれなりにラグのある、ハイチューン・ターボらしい扱いにくさを覚悟するかもしれないが、B3ビターボにそんな荒削りなところはまったくなかった。総代理店のニコル・オートモビルからCGオフィスへ向かう途中、首都高速に乗るまでも乗ってからも交通の流れは例によって遅かったのだが、この3リッターターボユニットは誇張抜きで、発進した瞬間からブーストがかかっているディーゼル・ターボを髣髴とさせるマナーを発揮し、速度域を問わず痛痒を覚えることはない。
ギアボックスはステアリングホイールの裏にティップスイッチを隠したアルピナ独自の“スウィッチトロニック”を採用しているものの、ATそのものは普通の3シリーズと同じZF製のトルクコンバーター式6段ATだから、厳密にいえば静止から動き出す瞬間にはトルコンの滑りが存在するはずなのだが、それがまったく気にならないほど発進時のトルク感は豊潤で、しかもクルージング中はスロットルペダルの1〜2mm程度の操作に対してもちゃんとレスポンスしてくれるのだから恐れ入る。こう説明すると街中でぎくしゃくしがちな神経質な代物を想像されてしまうかもしれないが、その優れたレスポンスのエンジンと今となっては比較的ストール比の大きい(ストール回転数2600rpm)トルクコンバーターのマッチングは素晴らしく、スペックを知らずに335iと乗り比べたら、B3の方がむしろ低回転域を重視したセッティングになっていると信じ込んでしまうほどだ。
|
だから40〜60km/hで流れが変わる首都高でもB3ビターボのドライバーには、ちゃんと運転する楽しみが残されている。ひと昔前までターボエンジンのチューニングカーといえばピークパワーのためにボトムエンドを犠牲にするのが当たり前だったが、最新のB3ビターボはそういった前時代的な産物ではなく、 335iの優れたトルク特性とスロットルレスポンスを削ぐことなく、全域にわたってトルクを上乗せするという洗練されたコンセプトで作られたクルマなのだ。
もちろん右足を深く踏み込んだ時のパワー感は存分にある。タコメーターの表示は7000rpmから上がレッドゾーンに設定されており、マニュアルモードを選択しても自動的なシフトアップが6900で起きるのは335iと同じで、6500rpmから先の吹け上がりは格別シャープとはいえないが、 3500〜6000rpmの間で盛り上がるトルク感が335iとはひと味異なることを実感できる。(後編につづく)
(文=塚原久/写真=北畠主税<ARGOS>、アルピナ/『CG』2008年2月号)

塚原 久
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。






























